TIFF2016鑑賞記録7「痛ましき謎への子守唄」ラヴ・ディアス8時間の世界

痛ましき謎への子守唄(2016)
Hele sa hiwagang hapis(2016)

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監督:ラヴ・ディアス
出演: Piolo Pascual, John Lloyd Cruz etc

評価:測定不能

高校1年生の頃から通っている東京国際映画祭。学生最後のTIFFJP、最大の試練として選んだのはラヴ・ディアス監督の8時間9分映画「痛ましき謎への子守唄」だ!

平均上映時間が3時間を超えることで有名なラヴ・ディアス監督。先日行われたヴェネチア国際映画祭で最新作「立ち去った女(The Woman Who Left)

」で金獅子賞を獲ったというトンデモ鬼才だ。

そんな彼がベルリン国際映画祭で銀熊賞を獲った「痛ましき謎への子守唄」を観たぞ~

「痛ましき謎への子守唄」あらすじ

フィリピンの英雄ホセ・リサールの「ノリ・メ・タンヘレ」「エル・フィリブステリスモ」、さらにフィリピン神話の一つ半人半馬の「ティクバラン」などをモチーフにフィリピン独立革命の渦中にいる人に迫った作品。

時は1897年。ホセ・リサールが1896年12月30日にマニラで処刑された世界。

スペイン軍に対抗するフィリピン革命は、上流階級であるアギナルド派と下流階級であるボニファシオ派で分裂内乱状態にあった。リサールの後継者を産ままいと、スペイン軍人はアギナルド派と結託し、ボニファシオ派を森に追い詰め、タガログ兵でもって虐殺を行っていた。

そんな最中、タガログ兵にさらわれたある人を探しにグレゴリア率いる女軍団とひょこんなことから怪我した男と一緒に逃避行するイサガニの物語が交互に描かれる…

8時間の挑戦

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いくら元映画館スタッフのブンブンでも、8時間寝ずにすむ食料はコンセッションにないので、コンビニでモンスターやチョコレート、ポテチを大量に持ち込んで挑みました。(すみません…)
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相当難解だということなので、メモも用意万全の体制で挑んだところ、思いの外キツくない。

驚いたことに、圧倒的アートアートしたビジュアルでフィリピン独立革命という史実を描いているにも関わらず、ブンブンには本作が「スター・ウォーズ」や「マッド・マックス/怒りのデス・ロード

」、さらには「フィッツカラルド」など自分の好きな作品の断片が次々と迫ってくるヒャッハーな映画だったのだ!

まず、スペイン軍に捕まりスパイになりかけるもののたくましく脱走し、奮闘する女性の姿を観ると「スター・ウォーズ」を思わずにはいられない。そして、フェリオサのようなマッチョすぎるカリスマ女リーダー主導の下、ニュークスのようなヘボイ男を連れて森をノンストップで駆け抜けていくところがまさに「怒りのデス・ロード」そのもの。

さらには、劇中にリュミエール兄弟の「列車の到着」公開当時の映画を楽しむ市民の姿を再現したり、とにかく熱い展開なのだ!
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休憩は4時間付近に1時間ありました。でも、本作の熱はまったく冷めずビンビンでしたよ~

ところで人物関係、社会構造ってどんな感じ?

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↑クリックすると拡大するよ!

本作はフィリピン独立革命をWikipedia程度でも良いので予習した方が良い。あまり馴染みのない名前が洪水のように襲いかかるので、予習するかしないか、またメモを取るか取らないかで物語に対する没入感は大分違ってくる。

ブンブンがざっくり理解した形で説明すると、フィリピンは1565年以降ずっとスペインに支配されていた。ホセ・リサール等カリスマ性のある人物の台頭で1880年代頃から独立革命の動きが強まった。

植民地転覆を危惧したスペイン軍は1896年12月30日に見せしめに、ホセ・リサールを公開処刑する。さらに独立派でも上流階級のアギナルド派と結託をすることで、下流階級のボニファシオ派を鎮圧することを目論む。

ボニファシオ派は秘密結社カティプナンを結成し、秘かに国家転覆を狙って激しい虐殺。目には目を方式で殺戮が繰り返された。本作はボニファシオ派でアギナルド派のタガログ兵から逃げる者たちの目線で描いた作品と言えよう。

Q&A

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8時間のデス・ロードを一睡寝ることなく、またトイレに行くことなく生還したブンブンはQ&Aでラヴ・ディアス監督に撮影秘話を伺いました。

あんなに激しい映像が多かったにも関わらず、撮影日数はたったの22日だったとのこと。しかしながら構想は1999年に第一稿を書き上げてから実に17年もかかったとのこと。本当は2000年代に政府が資金提供してくれ、撮影できる予定だったのだが、頓挫してしまったとのこと。その後はずっと資金繰りと、ロケーション探しに時間を費やしたそうです。

また、一つのテイクが長いときで5~10分するのだが、総てのテイクは1カットしか撮らなかったとのこと。俳優は朝8時に監督から渡される3ページぐらいの脚本を脳裏に焼き付けて演じたとのことです。また、今回の上映ではラヴ・ディアス監督の奥さんとまだ赤ちゃんの息子が2回とも上映に来たのだが、やはり赤ちゃんは耐えきれず泣き始め、途中退出していました。そりゃそうだよラヴ・ディアス監督。人生初映画が「痛ましき謎への子守唄」とはね~と爆笑のQ&Aでした。フィリピンでも公開されたが、ほとんど人が入っていなかっただけに日本公開は難しいだろう。でもブンブンのオールタイムベストに入るすげー作品なので機会があったら是非観てみてください。

その他上映作品とレビュー

既に鑑賞済み作品

「牯嶺街少年殺人事件」レビュー

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TIFFJPで観た映画

「7分間」レビュー

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