Borom Sarret(1963)
THE WAGONER
監督:センベーヌ・ウスマン
出演:LY ABDOULAY,ALBOURAH etc
評価:70点
おはようございます、チェ・ブンブンです。
MUBIにセネガル映画の父センベーヌ・ウスマンのデビュー作『Borom Sarret』がアップされていました。アフリカ映画好きとしては非常に熱い配信である。早速観てみました。
『Borom Sarret』あらすじ
A young cart driver in Dakar is robbed by a succession of dishonest passengers. When his cart is confiscated by the police, he loses not only his means of livelihood but his sole claim to self-respect in an exploited and poverty-ridden community.
訳:ダカールの若い荷車運転手が、不誠実な乗客たちから次々と金を巻き上げられる。その結果、彼は生活手段を失うだけでなく、搾取と貧困に苦しむコミュニティーの中で自尊心を保つ唯一の手段も失ってしまう。
センベーヌ・ウスマンデビュー作
センベーヌ・ウスマンは、元々、小説家を目指していたが、文盲が多かったセネガルでは文字により貧困問題を訴えることは難しいと判断し、フランスから来た「映画」という媒体に興味を示した。それだけにデビュー作から力づよいメッセージ性があり、構図も非常に考え抜かれたものである。話こそは、貧しい馬車運転手が、搾取され、しまいには警察に尊厳をも踏みにじられる内容。
物乞いが懇願する場面に注目する。男が物乞いをする。しかし、画には足しか映っていない。そして、その足は微動だにしない。自分の懇願が何も影響を与えないとわかると、トボトボ去っていく。それを下から見上げる構図で写す。上から物乞いを収め、そして彼の目線から絶望的なショットを繋ぐ手法は他のウスマン映画を観てもトップクラスの切れ味であろう。そして、その構図が馬車運転手と警察の関係に引き継がれていく。手からこぼれ落ちた勲章を警察が踏みつけ、彼の精神を追っていく残酷なシーンは物乞いの痛ましい場面と足し算されて胸が苦しくなるのだ。
また、整備されていない区画を馬車が走る。やがて車通りが多い場所に出ると、男は車に眼差しを向ける。これをもって生活の苦しさと、どうしようもできない車のスペックによる絶望を突きつける場面も良いといえる。
話こそシンプルではあるが、そこに鋭い演出技法が垣間見える作品であった。
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※MUBIより引用