『グッバイ、ドン・グリーズ!』鈍重で、鈍臭くドン詰まりな人生にサヨナラを

グッバイ、ドン・グリーズ!(2022)
Goodbye,DonGlees

監督:いしづかあつこ
出演:花江夏樹、梶裕貴、村瀬歩、花澤香菜、田村淳(ロンドンブーツ1号2号)、指原莉乃etc

評価:65点

おはようございます、チェ・ブンブンです。

自分の周りで好評の声が相次ぐ『グッバイ、ドン・グリーズ!』。てっきり児童小説原作なのかと思いきやオリジナル劇場アニメーションということで俄然興味が湧き観てきた。これが王道の青春冒険ものと思いきや一筋縄ではいかないタイプの作品でした。

『グッバイ、ドン・グリーズ!』あらすじ

テレビアニメ「宇宙(そら)よりも遠い場所」の監督・いしづかあつこ、アニメーション制作・マッドハウス、キャラクターデザイン・吉松孝博が再結集したオリジナル劇場アニメーション。東京から少し離れた田舎町。農家の1人息子ロウマは周囲と上手くなじむことができず、同じように浮いた存在のトトと2人だけのチーム「ドン・グリーズ」を結成する。やがてトトは東京の高校に進学。地元の高校でひとりぼっちになったロウマは、ある事情でアイスランドから日本にやって来た少年ドロップと意気投合し、ドロップもドン・グリーズの一員となる。夏休み、ひょんなことから山火事の犯人に仕立て上げられてしまったロウマたちは、無実の罪であることを証明するため、その証拠となる空の彼方へ消えたドローンを探しに行くことになる。「鬼滅の刃」の花江夏樹がロウマ、「進撃の巨人」の梶裕貴がトト、「ハイキュー!!」の村瀬歩がドロップの声を担当。

映画.comより引用

鈍重で、鈍臭くドン詰まりな人生にサヨナラを

本作は正直言って鈍重だ。鈍重で鈍臭く、退屈に思えるかもしれないし、飲み込みづらい人物関係もあってクセが強い。中学生の頃、仲良く「ドン・グリーズ」と名乗り秘密基地で遊んでいたロウマとトト。しかし、トトは東京の高校に行ってしまう。ロウマは農家の息子ということでクラスメイトからハブられている。そんな彼と仲良くしているのがアイスランドから来た少年ドロップだ。夏休み、トトが久しぶりにやってくる。再会を喜ぶロウマだったが、ぎこちない空気が流れる。

本作は、もうあの頃に戻れなくなってしまった者の友情の再生と創造が描かれる。できるだけ直接的な描写をさけ、言葉や仕草の端々から、彼らの内なる葛藤が見えてくる。ロウマは農家の息子として、この地に囚われている。行き場もなくどん詰まりの人生である。彼からみたらトトやドロップは世界の外側を知る存在だ。羨ましくもあり、でも停滞する人生の中にある輝ける人生に囚われているため、ドングリーズの聖域を守ろうとしている。一方、トトは村の中の優等生として東京へ出た。親に敷かれたレールに沿って医者になろうとした。しかし、都会という大海原で圧倒的上の存在を見てしまい幻滅する。久しぶりにロウマと会うが、昔と変わらない生活を送っていることに嫌悪を募らせる。ダサいと思ってしまうのだ。それをひた隠しにしながら一緒にドローン探しの旅へ出る。謎めいた少年ドロップは、会話が成立しないぐらいマイペースに生きている。しかし、そのマイペースさにはある理由があり、段々と正体が見えてくる。

お互いの葛藤が水と油のように反発し合う中で、山火事が発生し、その潔白を証明するため、風に流され北へ墜落したドローンを探しに行く。その度は開放的で美しい景色とは対照的に、ぎこちない。特にトトは、嫌々旅についてきており、ドロップという異物に対して順応できずフラストレーションを溜めていく。

このように予告編の爽快な青春冒険ものを想定して観ると拍子抜けしてしまう。だが、この長い停滞があるからこそ、終盤に炸裂する壮大な物語に意味を帯びてくる。自分の内なる膿を旅を通じて絞り出し、今まで小さな世界で生きてきたロウマが家を飛び出し、世界の小ささに気づく過程が描かれているのだ。

ドン・グリーズ意味が抑圧から来ていることも考えると、まさに鈍重で、鈍臭くドン詰まりな人生にサヨナラを言う物語だったと言える。

※映画.comより画像引用