【東京国際映画祭】『二月』空っぽな男の年代記

二月(2020)
February

監督:カメン・カレフ
出演:Ivan Nalbantov

評価:80点

おはようございます、チェ・ブンブンです。

第33回東京国際映画祭でブルガリア映画『二月』を観た。本作は、『ソフィアの夜明け』にて東京国際映画祭グランプリを受賞したカメン・カレフ監督の新作で、カンヌレーベル2020が付いている代物だ。ヴィジュアル的に自分好みな作品だったのですが、私の映画仲間がこぞって「『ソフィアの夜明け』が退屈だったからなぁ」「つまらなそう」と言っており、ひょっとしてハズレくじ引いた?と一抹の不安を抱えていたのですが、杞憂でした。

『二月』あらすじ


『ソフィアの夜明け』(09)でTIFF作品賞を受賞したカレフ監督の新作。辺境の山で暮らす男の少年期から老年に至る人生を静かに見つめ、孤独な生き様が荒涼たる自然と一体化していく様を壮大に描く。「カンヌ2020」選出作品。
※東京国際映画祭サイトより引用

空っぽな男の年代記

少年が犬を連れてオンボロ屋に入り、水を飲む。少年は太陽が大地を金色に染める空間を彷徨う。おじいさんの家に預けられた彼だったが、おじいさんの朝は早い。牛乳を採取し、チーズを作る羊飼いのおじいさんは仕事に忙しく、孫に構っている時間はないのだ。なので、少年は虚無な大地を彷徨うことで暇を潰しているのだ。少年は話し相手が欲しい、お友達が欲しい。そういう想いが、朽ちた家に何か霊的なものを呼び覚ます。しかしながら、おじいさんの「あそこに行くな」という喝によって、創生されかけていたイマジナリーフレンドは霧のように消えてしまう。

彼は青年になり、恋人を置いて徴兵される。彼の人生は空っぽだ。淡々粛々と欲望もなく任務をこなす。それに注目した教官が、出世の道を示すが、彼は羊飼いの人生を選ぼうとして激怒される。荒涼としたカモメの島で、彼はまたしても虚無の轍を作り続ける。

老年となった彼は恋人と離れて暮らしている。そんな恋人も老衰。命僅かだ。彼は決心する。猛吹雪の中、彼女と会うために旅に出る。

本作は、セリフを抑え、虚無をひたすらスクリーンというキャンバスに塗りたくっていく。故に少年時代パートで不安を抱く。このノリで2時間はきついのでは?しかしながら、虚無に見えた男の人生にほのかに漂う切なく壮大な恋物語に胸が熱くなる。彼の人生は空っぽなのではない。我々の騒々しい人生がナンセンスなだけなのだ。修行僧のようにひたすら我が道を彷徨い続ける男の生き様にノックアウトされました。

ただ、果たしてこれは日本公開するのだろうか?岩波ホール以外で上映される未来が見えない作品だ。

※東京国際映画祭サイトより画像引用

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