【東京フィルメックス/ネタバレ】『天国にちがいない』傑作にちがいない

天国にちがいない(2019)
It Must Be Heaven

監督:エリア・スレイマン
出演:エリア・スレイマン、アリ・スリマン、ロバート・ヒグデン、Sebastien Beaulac etc

評価:95点

おはようございます、チェ・ブンブンです。

第21回東京フィルメックスにエリア・スレイマン最新作『天国にちがいない』がやってきました。エリア・スレイマンといえば『消えゆくものたちの年代記』、『D.I.』、『時の彼方へ』、そして本作と長編映画4本しか作っていないにもかかわらずデビュー当時から独自の映画文法を確立し圧倒的巨匠感を放っている監督である。パレスチナ問題をサイレント映画のようなユーモアで風刺するのが特徴的なエリア・スレイマンが第72回カンヌ国際映画祭でスペシャル・メンションを受賞した。そんな『天国にちがいない』を日本公開2021/1/29のところ一足早く観ました。

尚、本作はなにも知らずに観た方が良い作品なのでネタバレ記事とします。

『天国にちがいない』あらすじ


「D.I.」の名匠エリア・スレイマンが10年ぶりに長編映画のメガホンをとり、2019年・第72回カンヌ国際映画祭で特別賞と国際映画批評家連盟賞を受賞した作品。スレイマン監督は新作映画の企画を売り込むため、故郷であるイスラエルのナザレからパリ、ニューヨークへと旅に出る。パリではおしゃれな人々やルーブル美術館、ビクトール広場、ノートルダム聖堂などの美しい街並みに見ほれ、ニューヨークでは映画学校やアラブ・フォーラムに登壇者として招かれる。友人である俳優ガエル・ガルシア・ベルナルの紹介で映画会社のプロデューサーと知り合うが、新作映画の企画は断られてしまう。行く先々で故郷とは全く違う世界を目の当たりにするスレイマン監督。そんな中、思いがけず故郷との類似点を発見する。
映画.comより引用

傑作にちがいない

荘厳な儀式が行われる。群衆が扉の前に集まり、厳かな言葉を並べて扉を開けてもらおうとするのだが、中にいる人は「開けてやらないよ」と言い始める。なかなか開けてくれないもんだから、裏口から男を殴って扉を開ける。エリア・スレイマン映画はいつだってコントで始まるのだ。映画監督のエリア・スレイマンのナザレでの日常が描かれる。ニョコっとベランダから階下を覗くと、隣人が果物を勝手に取っている。しかめっ面すると、男は言い訳を始める。そして、別の日になると、その男が果物を育て始める。自分の果物を取るために果物を育てるのだ。一歩、家から出ると友人と思しきおじいさんに絡まれて、小話を淡々と聞かされる。林に入れば、女の人が3歩進んで2歩下がる牛歩で、甕のようなものを運んでいる。そんな滑稽な生活を押し並べ、彼はパリに出張する。

彼は映画を売り込みにパリにやってくるのだが、そこでも不思議な国が広がっていた。カフェのテラスで飲んでいるのに、突然警察官がテラスの採寸を始める。ごみ収集のおじさんは、排水溝をゴールに見かけてゴルフをはじめている。チュイルリー公園の池では椅子取り合戦が繰り広げられている、おばあちゃんがゆっくりゆっくりと椅子に座ろうと向かっていると、スポーツ用自転車をアクロバットに操縦し、座ってドヤ顔する者がいる。お尻を椅子に固定させてヤドカリのように歩く者がいたりするのだ。

彼はアメリカにも訪れる。銃社会とはいえ、街ゆく人が皆ゴツい銃を装備している。タクシーの中からはロケットランチャーまで飛び出すのだ。このように、エリア・スレイマンがここ8年ぐらいで感じた実体験をコミカルに映画に紡いでいく。彼はユーモアに全集中しているので、鳥とコントを繰り広げる場面を撮影するために、鳥20羽を調教する力の入れようだ。

サイレント時代、原始的な映画の面白さを全力で描く『天国にちがいない』は傑作にちがいなかった。
※映画.comより画像引用

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