『ブックセラーズ』ニューヨーク古書ビジネスの《今》

ブックセラーズ(2019)
The Booksellers

監督:D.W. Young

評価:60点

おはようございます、チェ・ブンブンです。

今年3月にアメリカで封切られて話題となっている古書ビジネスの裏側に迫ったドキュメンタリー『The Booksellers』を観ました。今や、kindleで気軽に本が読める時代。それ以前にインターネット上の膨大な情報に飲み込まれて本の文化が消滅しつつあるように見える。まだアメリカでは本の文化は根付いていると思われるが、現状はどうなのだろうか?ちょっとこの映画でニューヨーク古書市場見学してきました。

『ブックセラーズ』概要

A behind-the-scenes look at the New York rare book world.
訳:ニューヨークの稀少本の世界の舞台裏。
IMDbより引用

ニューヨーク古書ビジネスの《今》

ハワード・ホークスの『三つ数えろ』、ウォルフガング・ペーターゼン『ネバーエンディング・ストーリー』とかつての映画でも物語のきっかけとして、コミュニケーションの空間として使われてきた古本ビジネスも今やインターネットの普及によって影を落としている。では、古書業者の人の活気は失われてしまったのだろうか?答えは否だ。

幕張メッセを彷彿とさせる巨大な空間では古書フェアが開催され、業者はこことぞばかりに大きな本、貴重な本を持ち寄り、現地の古書マニアとコミュニケーションを図る。街中の古書店員にカメラを向けると、どの人も嬉々として自分と本との関係性を語る。1800年代の貴重な本を神棚から出すようにして披露するのだ。俗なもの、時代の消費物として扱われてしまいそうな雑誌だって、アーカイブとして集めることで宝石のように輝く。

そんな彼らは懐古主義者なのだろうか?古書ビジネスを危機に陥れるインターネットは敵なのだろうか?

関係者は、インターネットに歩み寄ることで古書ビジネス界を盛り上げようとしている。かつての古書ビジネスは、お目当があっても探すのは難しかった。ハワード・ホークスの『三つ数えろ』でもお目当の本を古書店で尋ねるも、存在せず退散する場面があるが、かつては1軒1軒調査していく必要があった。それが醍醐味でもあったのだが、ITの発達によって、古書の状態をカタログ化することに成功し、お目当の代物を入手しやすくなったのだ。ただ、それによって今度現れるのは転売ヤーという不要な中間業者の存在だ。古書マニア及び古書ビジネス業者は多少のワクワクを犠牲に、お目当に直接アクセスできる便利さを選んでいったが、目に見える価値観は、表面的な価値観の急減に繋がり業界を疲弊させている。

D.W. Young監督は、またユニークな視点にも斬り込んでいる。1950~60年代の埃被った本は芸術品としてマニアの間で注目されており、『華麗なるギャツビー』の初版において、通常のものは5,000$(約54万円)なのに対し、破れてボロボロなものはその3倍にあたる15,000$(約162万円)もするとのこと。

『The Booksellers』は古書マニアの知られざる熱量にフォーカスを当てつつ、「古書マニアにとって本は読むものなのか?ただのオブジェなのか?」という矛盾したものを鋭く観察していく作品でありました。これは映像コレクターにもいえることで、積DVDしがちな私にとって興奮しつつもヒリヒリしたものを感じました。でも、愛好家はやめられないとまらないなんですけどね。

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