【Netflix】『呪怨 呪いの家』時空歪めすぎて空中分解した呪い

呪怨 呪いの家(2020)

監督:三宅唱
出演:荒川良々、黒島結菜、里々佳、長村航希、井之脇海、柄本時生etc

評価:40点

おはようございます、チェ・ブンブンです。

7月のNetflix注目作品『呪怨 呪いの家』が配信された。『呪怨』といえば清水崇の人気作品。Vシネマだった作品が、あまりにも怖いと口コミが広がり映画化され、ハリウッドでもリメイクされ、今や『リング』と並ぶJホラーの名作となっている。そんな作品を、『Playback』、『きみの鳥はうたえる』の三宅唱が映画化。脚本家には『旧支配者のキャロル』の高橋洋が配置される異色タッグとなった。映画ライターの前評判では、シャレにならないぐらい怖いということで挑戦してみました。

『呪怨 呪いの家』あらすじ


因縁に導かれ、呪いの家を探し始めた心霊研究家。調査を進めるうち、そこに暮らした母子をめぐる忌まわしい過去が掘り起こされる。
Netflixより引用

時空歪めすぎて空中分解した呪い

三宅唱監督は映画学校の人が安易にオマージュし失敗しそうな素材を自分のものとする才能があると考えている。『やくたたず』、『Playback』ではジム・ジャームッシュのようなカッコいい白黒美の中で、クズを描いたり、時空の跳躍を描いたりするのだが、そこには監督の「自分の映画としてモノにしよう」という気概がある。『THE COCKPIT』のような小さなドキュメンタリーでも、音楽ができるまでを、まるで部屋を宇宙船のコックピットに仕立て上げて宇宙を生み出す様に感動を覚えた。彼の出世作である『きみの鳥はうたえる』では、ジャック・リヴェットの『デュエル』を彷彿とさせる、異空間としてのクラブシーン。そして数をカウントする高揚感を自分のものとしてしまう演出に脱帽した。もちろん、旧作の残像を感じなくても、映画として毎回魅力的である。

それだけに、今回伝統的なホラー映画への挑戦には期待していたのだが、それは無残に砕け散った。

本作はズバリジャック・リヴェットの『セリーヌとジュリーは舟でゆく』である。この作品は、『不思議の国のアリス』のような展開で魔性の女を追いかけていった女性が、家に蔓延る少女毒殺事件の残像と闘い、過去を変えようとする話だ。SF的装置は出てこず、カット割やちょっとした演出で時空を軽々と超えていく過程が魅力的である。三宅唱監督は、Jホラーのクリシェである《呪い》を恐らく好きであろうジャック・リヴェットの世界観に寄せつつ、監督史上最凶の残虐描写で観るものに驚きを与えようとしている。

と同時に、彼の勤勉さも伺える作品となっており、映画ではなくNetflixドラマであることを意識して、海外ドラマ的膨大な登場人物とサブエピソードの積み重ねで、考察深読みし甲斐がある作品となっている。残虐性と複雑なプロットは、案の定Twitterで好評を獲得し、口コミで『呪怨 呪いの家』の評判が広まりつつある。

ただ、戦略的映画作り、クリシェを逆手に取ったような物語に見えて、実はクリシェに縛られた空中分解が目立つ作品だったと考えている。1話目から複数の時系列が共存し合う。怖い話を集めている男のエピソードと空き家で犯される転校生のエピソード、そして少女誘拐が描かれる。低予算映画あるあるである、死角で恐怖を魅せる演出も盛り込み、少女に対する殴打を痛々しく音で語らせる。その時系列が入り混じった混沌が、回を進めると赤ちゃんの幻影や、白黒映像を駆使した時空跳躍で交差していき、地獄のクライマックスへと収斂していく。当然ながら、終盤の白黒映像を使った時間軸の交差は本作最大の魅力となっているのだが、序盤からごちゃごちゃ時系列をいじってしまっているため、この圧巻のショットが締まらなくなってしまっているのだ。折角6話もあるのだから、最初の3話で3つの時系列を並べていき、そこから挿話の結合を行った方がよかったのではと思ってしまう。

また、残虐描写に慣れていないせいか、見た目のインパクトでごり押ししている感じが強い。前半、あれだけ死角を用いた恐怖描写を多用していたのに、終盤になると、安易に殺害シーンを見せたりする。また、幽霊の見える/見えないの描写も足早に済ませてしまうので、神の目線=観客が感じる見えない恐怖(登場人物は見えてないのに、観客からは目の前で強烈なことが行われているところから感じる恐怖)が薄まってしまっている。

ラストの『ツイン・ピークス The Return』的唐突なクライマックスも、円環構造として閉じた方が締まったと思う。ひょっとして円環構造になっていることを見逃しているだけかもしれないが、本作は暴力の連鎖、負の連鎖を描いている。そして地獄を地獄で終わらせる演出で突き進んでいるため、円環構造で決着を付けた方が『呪怨 呪いの家』の世界観が強固になるはずだし、そもそも二回以上の観賞を推奨したがっている作品なので、そうすべきだとは思うのだが、中途半端に終わって締まっていた。

無論、私はJホラーについては専門外だ。文法もよく分からない。でもどうにも歯がゆいところが多く、尚且つ退屈だった。残念である。

ブロトピ:映画ブログの更新をブロトピしましょう!
ブロトピ:映画ブログ更新

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です