『ロック・ハンターはそれを我慢できるか?』カイエが絶賛!疾風怒濤の広告屋批判

ロック・ハンターはそれを我慢できるか?(1957)
WILL SUCCESS SPOIL ROCK HUNTER?

監督:フランク・タシュリン
出演:トニー・ランドール、ジェーン・マンスフィールド、ベッツィ・ドレイクetc

評価:100点

おはようございます、チェ・ブンブンです。

先日、カイエ・デュ・シネマの歴代ベストテンを見ていました。すると1957年のランキングがなかなかマニアックでした。

1.ニューヨークの王様
2.ロック・ハンターはそれを我慢できるか?
3.カビリアの夜
4.間違えられた男
5.アルチバルド・デラクルスの犯罪的人生
6.道化師の夜
7.ビガー・ザン・ライフ/黒の報酬
8.女はそれを我慢できない
9.条理ある疑いの彼方に
10.十二人の怒れる男

なんと10選の中に底抜けシリーズのフランク・タシュリン監督作品が2本もあるのだ。そのうちの1本『ロック・ハンターはそれを我慢できるか?』を観たのですが、これが痛快大傑作でありました。

『ロック・ハンターはそれを我慢できるか?』あらすじ


To save his career, a writer for television advertising wants a famous actress to endorse a lipstick. In return, he has to pretend to be her new lover.
訳:彼のキャリアを保存するには、テレビ広告のライターは、口紅を支持する有名な女優を望んでいます。その見返りに、彼は彼女の新しい恋人のふりをしなければならない。
IMDbより引用

カイエが絶賛!疾風怒濤の広告屋批判

20世紀フォックスのファンファーレに合わせてMCがドラムロールするところから始まります。

そして、MCは「これから魅力的で良いパフォーマンスが観られる映画が始まるよ〜」と盛り上げていきます。で役者を一通り紹介してさてタイトルだ!となった時に、彼はごそごそポケットから紙を出して『女はそれを我慢できない』と言ってしまうのです。そうです。これはフランク・タシュリン監督の前作です。でんぢゃらすじーさんばりのメタなギャグをかまして始まるこのオープニングは続けざまに、洗剤やら車やらのセールスを始めます。しかし、にこやかに宣伝するイケメン美女を余所に、車の扉は壊れ、女の人は洗濯機に吸い込まれてしまう。これだけで強烈な風刺が疾風怒濤のように押し寄せてくる予感を感じさせます。

主人公のロックウェルP.ハンター(トニー・ランドール)は広告代理店のライターだ。上司にへつらいながら、新しい宣伝を考えている。CMソングに『Old MacDonald Had a Farm』を使おうとする。フランク・タシュリン監督がどこまで意識していたかは分からないが、ひょっとするとレイ・クロックがファストフードブランドを立ち上げる際に《マクドナルド》という名前を欲していたことに対する皮肉とも言える場面だ(フランチャイズとしてのマクドナルド1号店がオープンしたのは1955年ということを考えると偶然の可能性がある)。

「Stay-put lipstick. Stay put put. Stay-put Stay-put Stay-put(口紅を待ってくれ。じっとじっとね。)」と同じフレーズをリズミカルに叩き込むことで視聴者の脳裏に広告が焼きつくようにハンターは歌うのだ。これは『一本満足バー』のCMが10年経っても廃れないのと似ている。「満々満足、一本満足!」というフレーズが成功する広告の本質をついているのだ。

さて、そんな彼には妻がいるのだが、彼女は夜な夜な家を飛び出してアイドルのリタ・マーロウ(ジェーン・マンスフィールド)に会いに行きます。次の朝、テレビに映る彼女の姿を見て激怒するハンターだったが、彼女が会いに行った相手がリタだとすると態度を豹変させる。ここに、《何を》したかよりも《誰と》したかを重要視してしまう人間の本能が見えます。50年以上前の作品なのに、Twitterで似た発言でも炎上したりしなかったり、バズったりバズらなかったりする本質を突いています。

さて、ヒョコんなことから広告戦略のためにリタと偽装恋愛することとなったハンターは、Lover Dollとして世界中の人気者となってしまう。街を歩けば、美女たちが黄色い声援をまき散らかしながらゾンビのように襲いかかってくる始末であります。彼は地下水道に逃げようとするのだが、何故か水道管からウジャウジャ美女が湧き出てくる。そんな滑稽混沌の中、妻は筋トレに夢中で構ってくれないし、リタは劈くような声でフェロモンを出すだけだし、何一つ進まないのに、何故か成功の花道に向けて物事は転がっていく。

キスをすればポケットからポップコーンが爆発したり、テレビファンの為にと画面サイズをめちゃくちゃ小さくし、画質も劣化させまくる漫画的描写が我が我がと迫りくる荒唐無稽ながらも徹底的に広告と社会の関係性を鋭く見つめた大傑作でありました。

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