【東京国際映画祭】『再会の奈良』ノンバーバルコミュニケーションは越境する

再会の奈良(2020)
又見奈良

監督:ポンフェイ
出演:國村隼、ウー・ヤンシュ、イン・ズー、秋山真太郎、永瀬正敏etc

評価:60点

おはようございます、チェ・ブンブンです。

第33回東京国際映画祭で國村隼が出演している中国日本合作映画『再会の奈良』を観ました。映画祭ではあまり中国映画を観ないのですが、画像の雰囲気に惹かれて挑戦したらこれが面白かったです。と言うわけで感想書いていきます。

『再会の奈良』あらすじ


日本に帰国し、数年もの間連絡が途絶えたままの残留邦人の養女・麗華を探すため、年老いた養母が中国から奈良県を訪れる。孫代わりのシャオザーと、偶然知り合った元警察官の一雄が加わり、3人の麗華探しが始まる。
※東京国際映画祭サイトより引用

ノンバーバルコミュニケーションは越境する

EXILEグループを取り纏めるLDHは吉本興業並みに近年映画業界に参入している。『HiGH&LOW』シリーズといった通俗なものだけではなく、近年は河瀨直美や青山真治といった映画ファンからしたら若干落ち目の日本映画監督を上手く操って国際進出を狙おうとしている。さてそれが功を奏したのか河瀨直美とジャ・ジャンクーがプロデュースする國村隼映画に関わることとなったLDHはまた一歩前進した。

國村隼が中華料理屋で若い女性店員に絡む。

「あんた、どこ出身?」

彼女は、「日本人です」と語るが、電話を取れば中国語で話し始める。彼女は差別を受けないように日本人名で日本人として生きているのだ。そこに残留邦人の養女・麗華を探しにおばあちゃんがやってくる。そして國村隼が偶然、二人と再会したことから三人で人探しの旅が始まる。

本作はバーバルコミュニケーションの中にある潜在的な差別意識と、それを乗り越えるノンバーバルコミュニケーションのせめぎ合いが面白い作品だ。例えば、おばあちゃんが家に居候していると、そこへ孫の元彼が現れる。おばあちゃんは咄嗟にロシア語で会話し始める。そして別れの際に「パカー」と言う。これはロシア語で「じゃあね」と言う意味なのだが、彼は「馬鹿」と受け取ってしまう。冒頭の國村隼とのやり取りもそうだが、言語を通じたコミュニケーションの中にある差別がチラつくのだ。それは悪意がなくても発生してしまうことを示唆する。

それに対して、例えばおばあちゃんが羊肉を買おうと肉屋に行く場面がある。おばあちゃんは「メェ〜」と演技をする。店員は何かに気づいたのか「ブゥ」と豚の真似をしたり「モゥ」と牛の真似をしたりして彼女のニーズに答えようとするのだ。

同様に、國村隼もおばあちゃんと写真を見せ合いっこする際に間を使ってコミュニケーションを取る。言葉を介さないことで、越境してみせるのだ。

一見、アキ・カウリスマキの二番煎じなゆるーいドラマに見えて演出面で鋭い。そんな映画にLDHが関わっているのをみると、今後LDHはもっと成長するぞ。2010年代吉本興業が全く映画業界で名声をあげられなかった一方でLDHの未来は明るいと感じました。

※映画.comより画像引用

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