【プールサイドマン公開記念】「七日」は「パターソン」の対極を行く日常映画だ!

七日(2015)
7Days(2015)

監督:渡辺紘文
出演:渡辺紘文,平山ミサオ

評価:60点

今週末9/30(土)より、東京国際映画祭で作品賞を受賞した「プールサイドマン」が2週間限定で新宿武蔵野館にて公開される。それに併せて渡辺紘文監督作「七日」が一週間限定で同劇場で上映されている。本作は、2015年の東京国際映画祭に出品され、映画配給会社とクリエーターを結びつけるオンデマンド映画祭サイトFestival Scopeでも配信されたものの、劇場公開に結びつかず、幻の作品となっていた代物。知人から、「超問題作だが、チェ・ブンブンならイケるかも?」とオススメされたので観てきました。

「七日」あらすじ

とある田舎で酪農家として生きる男の七日間を描く…

「パターソン」の対極を行く作品

今、新宿武蔵野館では面白いことが起きている。「パターソン

」という何気ない一週間を扱った作品と、「七日」というこれまた何気ない一週間を扱った作品が一つの劇場で上映されているのだ。そして、明確に「パターソン」は【陽】、「七日」は【陰】の映画となっているのだ。

「パターソン」は一見退屈そうに見えるバス運転手の人生が、反復とちょっとの変化による演出で観客に多幸感を与える人生賛歌となっていた。一方、「七日」は娯楽も何もない田舎で慎ましく暮らす男の虚無を極めた人生で観客に苦痛を与える人生鎮魂歌となっている。

本作を観た後に、「パターソン」を思い返すと、何もない、何も起きないがステキと称される「パターソン」、、、ドラマチックな展開起きまくりじゃん!本作と比べたら、「パターソン」はディズニー映画だ(あれっどっかで聞いたような表現…)と言いたくなる。

「七日」はつまらない作品なのか?

こう聞くと、「七日」ってつまらないの?と尻込みする読者は多いでしょう。確かに、本当に何も起きない。男が朝飯を食って、長い長い通勤路を歩き、牛の世話をし、クソのような空間で血汗流す。そして夕飯食って終わり×7DAYSなのだから。

しかし、シネフィルな読者は思い出して欲しい。「ニーチェの馬」が辛い映画且つ心に残る傑作だったことを。5年ぐらい前にキネマ旬報ベストテン外国映画部門1位に「ニーチェの馬」というトンデモ映画が輝いた。本作は2時間半たった30カットで描かれる狂ったような作品で。田舎に住むおっさんの退屈すぎる一週間を発狂するほど長回しで描いていることでカルト的に注目された。公開当時高校生だったブンブンも2度劇場で観た。訳分からないし、辛すぎてトラウマだったのだけれども、妙に忘れられず、心のどこかに本作の残像が揺れ動いている。

「七日」もトラウマ映画ではあるのだが、妙に愛着が湧く作品だ。というのも、本作はまず音楽の使い方が凄まじいのだ。お経、呪文のように、唱えられるおばちゃんの叫びが独特なグルーヴを生み出す。「ニーチェの馬」もそうだが、独特なグルーヴ音の中に観客を放り込むと、惹き込まれていく。男の人生に興味を抱いてくる。

そして、男の生活を覗いてみると、都会民からしたら死にたくなるほど退屈で退屈で溜まらない。現代日本、経済の中心は東京や大阪等一部都市に集中しすぎている。今や、新宿・品川・渋谷なんか行くと、「ここはインドかバングラデシュかい?」と思いたくなるほど、見渡す限りヒト、ヒト、ヒト、まさにヒトがゴミのようだ!と言いたくなるほど人が多い。

一方、地方へ行くと、シャッター街、廃墟だらけだ。イケダハヤト等、アグレッシブ意識高い系な人は地方都市へ移住して悠々自適な生活を送っているとはいうが、基本的にほとんどの人は都会に行きたがる。話は脱線したが、「七日」は日本の極端すぎる空間事情を皮肉った作品と言えよう。本作を観ると、9割の者は「こんなのは厭だ!」と思う。そう観客に想いを抱かせることが渡辺紘文の目標だったと言える。今や当たり前になっている地方と都会の関係。それを、この地獄絵図を観ることによって再び観客に考えさせる。知恵熱が出てくる作品ですぞ!

9/29(金)までの上映を逃すと、なかなか観ることのできない作品なので、また9/30(土)から公開の「プールサイドマン」を読み解く飢えで重要な作品とのことなので、シネフィル、いや少しでも「七日」に惹かれた方は新宿武蔵野館で是非挑戦してみてください!

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