おおかみこどもの雨と雪(2012)
監督:細田守
出演:宮崎あおい、大沢たかお、黒木華、西井幸人、大野百花、加部亜門、林原めぐみ、中村正三、大木民夫、片岡富枝etc
評価:40点
おはようございます、チェ・ブンブンです。
VTuber竜輝竜さん(@r_gotyo)の「映画食わず嫌い王決定戦」で5本映画を選ぶ際に、細田守作品縛りにした関係で久しぶりに『おおかみこどもの雨と雪』を観た。
本作はカイエ・デュ・シネマでギヨーム・ブラックが2010年代のベスト映画に挙げており、『みんなのヴァカンス』では、本作のTシャツを着た黒人が子どもをあやすシーンがあるほど彼に気に入られている作品だ。本作は公開当時、とても苦手な作品であった。当時はその正体が上手く言語化できなかったのだが、今回の「映画食わず嫌い王決定戦」に向けて再鑑賞したところ、自分の中で納得がいった。
ギヨーム・ブラックの2010年代ベスト映画
・祖国 イラク零年(アッバス・ファデル、2015)
・6才のボクが、大人になるまで。(リチャード・リンクレイター、2014)
・おおかみこどもの雨と雪(細田守、2012)
・テイク・シェルター(ジェフ・ニコルズ、2011)
・アラビアンナイト(ミゲル・ゴメス、2015)
・L’Escale(カーヴェ・バフティアリ、2013)
・ライフ・ゴーズ・オン 彼女たちの選択(ケリー・ライカート、2016)
・湖の見知らぬ男(アラン・ギロディ、2013)
・ありがとう、トニ・エルドマン(マーレン・アーデ、2016)
・ブライズメイズ 史上最悪のウェディングプラン(ポール・フェイグ、2011)
・プティ・カンカン(ブリュノ・デュモン、2014)
・La Coupe à dix francs(Philippe Condroyer、1974)
『おおかみこどもの雨と雪』あらすじ
「時をかける少女」「サマーウォーズ」の細田守監督が、「母と子」をテーマに描くオリジナルの劇場長編アニメーション。人間と狼の2つの顔をもつ「おおかみこども」の姉弟を、女手ひとつで育て上げていく人間の女性・花の13年間の物語を描く。「おおかみおとこ」と恋に落ちた19歳の女子大生・花は、やがて2人の子どもを授かる。雪と雨と名づけられたその子どもたちは、人間と狼の顔をあわせもった「おおかみこども」で、その秘密を守るため家族4人は都会の片隅でつつましく暮らしていた。しかし、おおかみおとこが突然この世を去り、取り残されてしまった花は、雪と雨をつれて都会を離れ、豊かな自然に囲まれた田舎町に移り住む。「時をかける少女」「サマーウォーズ」に続いて脚本を奥寺佐渡子、キャラクターデザインを貞本義行が手がけた。第36回日本アカデミー賞では、最優秀アニメーション映画賞を受賞した。
干渉から逃れるために、過干渉地帯に逃げ込むのは悪手では?
細田守映画は毎回奇怪な場面や異様な展開を迎えるため賛否が分かれる。また、田舎町に妙な期待をしている傾向があり、全力で美化していく演出は観る人を選ぶ。それでも、個人的にパワフルな理論や演出に満ちており、毎回驚かせてくれるので好きだ。しかしながら、本作はその驚きがないため、粗に目がいく作品となっている。致命的なのは、あれだけ「おおかみこども」である雨と雪の存在を隠そうとしているのに、干渉レベルの高い田舎に行き、なんとか隠し通せてしまう物語展開である。実際に、田舎町特有の干渉はある。子どもたちは学校に通うし、近所の人は定期的に家に上がり込む。都会よりもバレるリスクが高いのに、なんとかなってしまうのだ。修羅場映画としての不幸中の幸い感が希薄で、なんとなく危機が回避されてしまう甘さが気になってしまう。それならば、早々に雨と雪の正体が発覚するも、村全体でふたりを育てていこうとする中、転校生にバレたことで大ごとに発展していく流れの方が自然なのではないだろうか?映画は、超展開に発展することなく予想の範疇内に収まっており、なんだかなと思った。
もちろん、ワンオペ育児の壮絶さを語る社会派映画としての観応えはある。例えば、子どもたちがテーブルにぶつかって、調味料が落ちそうになったり、タンスに激突して、母を押し潰そうと倒れそうになる生々しいヒヤリハット。泣き叫ぶ子どもに男が殴り込んでくる場面の陰惨さはリアルなものを感じた。だが、細田守映画の中では刺さるものはなかった。
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