【ケリー・ライヒャルト祭】『ライフ・ゴーズ・オン 彼女たちの選択』AnywheresからSomewheresへ

ライフ・ゴーズ・オン 彼女たちの選択(2016)
Certain Women

監督:ケリー・ライヒャルト
出演:クリステン・スチュワート、ミシェル・ウィリアムズ、ローラ・ダーン、ジャレッド・ハリスetc

評価:55点

おはようございます、チェ・ブンブンです。

ケリー・ライヒャルト作品群の中では日本で一番有名な『ライフ・ゴーズ・オン 彼女たちの選択』を観ました。カイエ・デュ・シネマ年間ベストにも選出された作品ですが果たして…

『ライフ・ゴーズ・オン 彼女たちの選択』あらすじ


「トワイライト」シリーズのクリステン・スチュワート、「マリリン 7日間の恋」のミシェル・ウィリアムズ、「ブルーベルベット」のローラ・ダーンが共演した群像ドラマ。「ウェンディ&ルーシー」のケリー・ライヒャルトが監督・脚本を手がけ、マイリー・メロイの短編小説を映画化した。アメリカ北西部モンタナの田舎町を舞台に、厄介なクライアントに振り回される弁護士ローラ、新居の建設のことで頭がいっぱいのジーナ、夜間学校で法律を教える弁護士エリザベス、牧場で馬と暮らすジェイミーら4人の女性たちが、それぞれ悩みを抱えながら懸命に生きる姿を描く。
映画.comより引用

AnywheresからSomewheresへ

ケリー・ライヒャルトの映画の作品を並べると閉塞感がグラデーションとなっていることが分かる。

水を求め、永住の地を求め荒野を歩き続ける『ミークス・カットオフ』は荒野の何処へでも住める者の閉塞感を描いたAnywheresの物語だ。それが『River of Grass』になるとアメリカという広大な土地を彷徨うが居場所がなくアンニュイさが漂うAnywheresになろうとしてSomewheresに近づいた物語となっている。『ウェンディ&ルーシー』ではアラスカへ行こうとする女性が、愛犬の失踪、万引きによる拘留で移動が停滞してしまう限りなくSomewheresに近いAnywheresを描いている。そして本作『ライフ・ゴーズ・オン 彼女たちの選択』は原題が《Certain women》であるように、或る女にしかなれない何者でもない土地に留まる女性の肖像を描いている。

1話目では、弁護士のローラ・ウェルズが補償金を受け取ってしまったが為に会社に責任追及することができない事実を納得してくれないクライアントに苦しめられる物語が展開される。終いにはそのクライアントが人質をとって立て籠もってしまい、ローラは囮としてクライアントのいる建物に送り込まれる。女性として男に好き勝手使われるローラであるが、その土地から出ていけないので上手いことやるしかない嘆きが静かに画面に描写されていく。

2話目では、夫婦が町に住むアルバートから砂石を売ってもらおうと交渉するのだが、アルバートの対応が妻と夫で違う様を描いた作品である。小さなコミュニティにおける、態度の変化による息苦しさが描かれている。

3話目では、夜間学校で働く少しドジな女性の退屈な日々が描かれ、4話目では牧場で馬と向き合う女性の肖像が縁取られていく。

どの話もたわいなく、非常に退屈だ。正直、ケリー・ライヒャルトという看板がなければあまり面白い作品ではない。しかし、彼女がフロンティア精神
溢れるアメリカにおける何処へでも行けるようで何処にも行けない、何者にもなれない者を捉え続けてようやく辿り着いた一つのゴールとしてみると、非常に重要な作品だと言えよう。

彼女はついにSomewheresと本作で向き合ったのです。

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