【考察】『4:44 地球最期の日』ウィレム・デフォーの終末の過ごし方

4:44 地球最期の日(2011)
4:44 Last Day on Earth

監督:アベル・フェラーラ
出演:ウィレム・デフォー、シャニン・リー、ナターシャ・リオンetc

評価:90点

おはようございます、チェ・ブンブンです。

今、新型コロナウイルスによる自粛の流れで、映画ファンは新作を週末に楽しむことができなくなっている。映画ブロガや映画情報サイトでは、新作情報が書けなくなった関係で旧作の考察・紹介記事が増えてきています。

ブンブンも旧作記事を書こうと思い、観たい旧作を探していたのですが、『コンテイジョン』や『復活の日』はベタ過ぎるし、どちらも面白かったが私が書きたいことはありませんでした。そんな中、ふとここ5年ぐらい観ようとしてすっかり忘れていた映画の存在を思い出しました。カルト監督アベル・フェラーラの『4:44 地球最期の日』です。本作は、地球滅亡が直前に迫った世界にいる男女の映画です。そう聞くと、『デイ・アフター・トゥモロー』とか『ディープ・インパクト』といったスペクタクルを想像すると思うのですが、本作はダラダラとした日常を描いているだけなのです。『メランコリア』以上に、日常が淡々と描かれていくため、映画サイトでの評判は批評家、一般観客共に悪いのですが、カイエ・デュ・シネマが「黙示録映画の中で最も美しい作品だ」やたらと本作を支持しており、2012年の年間ベストでは4位に選出されている。また、テン年代ベスト号でも編集部の何名かは本作を支持していたりする。そんな『4:44 地球最期の日』をようやく観てみました。これが今観るに相応しい大傑作だったので考察していきます。

『4:44 地球最期の日』あらすじ


「バッド・ルーテナント 刑事とドラッグとキリスト」「ボディ・スナッチャーズ」の鬼才アベル・フェレーラ監督が、地球温暖化によって終末を迎えた世界を描き、2011年・ベネチア国際映画祭のコンペティション部門にも出品されたドラマ。ニューヨークの高級アパートの部屋に暮らす男と女がいた。明日の4時44分には地球の終わりが訪れ、誰もその運命から逃れられることはできない。男は最後に娘や前妻と連絡を取るが、女はそんな男の姿に嫉妬する。地球の終末になす術もない人々は、いつも通りの日常を過ごすが……。
映画.comより引用

ウィレム・デフォーの終末の過ごし方

マヤ暦によると2012年に終末を迎えるらしい…結局、大ハズレに終わったノストラダムスの大予言に懲りてないのか、映画界では『2012』や『ノウイング』といったスピリチュアルな世紀末映画が何本か作られました。その脇で、抵抗するかのようにアベル・フェラーラはこのスピリチュアル世紀末映画を放った。テレビでは、4:44に世界が終わると語り、延々と祈る人を映すか、粛々と最後のニュースを噛み締めながら読み上げている。その中でウィレム・デフォー演じる男は、ジャクソン・ポロックを意識したアクションペインティングで、内なる世界をキャンバスにぶつけている。そして女と交わる。地球最期のひと時だというのに、「やっべ、寝坊した」とお間抜けをかます程、緊迫感がありません。彼は、部屋の中で暇を潰すのですが、これが今の世界の文化人そのものとなっている。Skypeを使って、遠くのアーティストとワイワイしたり、音楽を聞いて踊ってみたり、あまりに退屈すぎるので、そろりそろりと友人宅に行ってお話をしたり、文章や絵を描いてみたりする。テレビで言っていることがあまりに壮大すぎて、「ひょっとして大掛かりなウソなんじゃないか?」と思うも、突如眼前に見える悲惨な死や、街中に漂う悲壮感が、その疑惑を裏切り、精神に少しずつ傷をつけていく。

アベル・フェラーラは、信仰を失った都会にある信仰というものを描き続けてきた監督だ。『天使の復讐』では1日に2度も強姦された女性が、復讐の天使としてヴィジランティズムに目覚めていく話となっているのだが、野蛮な都会人に対して、ある信念に従い真っ直ぐ敵を仕留めていく様に宗教的オーラが纏わりついている。そのオーラはピエル・パオロ・パゾリーニの死を描いた『Pasolini』で深掘りされ、『ソドムの市』や『アポロンの地獄』の様な野蛮で無宗教な世界を描いてきた彼が実は都市に蔓延る野蛮さを純粋な眼差しで捉えていたのではないか?という目線を掴み取ってみせた。『バッド・ルーテナント/刑事とドラッグとキリスト』では女とドラッグに溺れた都会の汚職警官が最後に行き着く場所が教会という作品で、科学が発展し、都市社会が形成され、合理化されていくプロセスの中で宗教を失ってしまった社会が再び宗教に触れる瞬間を風刺しているものと捉えることができる。

同様に『4:44 地球最期の日』も無宗教な文明と、その中で信仰を掴む者との関係を見つめている。地球滅亡が間近に迫り、生きようとすることがどうでもよくなってしまった男が、本能あるがままにダラダラ人生を謳歌するのだが、飛び降り自殺やテレビから垂れ流される祈りの映像が走馬灯の様に男の脳を掻き乱す。また家に来たヴェトナム人がSkypeで遠くにいる家族へ別れを告げている様子をみて、少し足掻いてみようとする。愛する女を抱擁し、ドラゴンの絵の上で愛を確かめ合い、祈る。その儚い魂の触れ合いに信仰の力強さを感じた。

確かに、2012年に本作を観ても、ウィレム・デフォーがグータラ干物生活をしている様を延々と映し出されるので退屈かもしれない。しかし、週末は自宅にいるよう言われ、国によっては外出禁止令が出てしまっている今観ると、本作での生々しい生き様に共感し、そしてLivin’ on a Prayerであると静かに力強く祈るウィレム・デフォーに心揺さぶられた。

というわけで、この週末にウィレム・デフォーから楽しい終末の過ごし方を教わりに『4:44 地球最期の日』を観てみてはいかがでしょうか?

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