【男の魂に火をつけろ!企画】漫画実写化邦画ベストテン

【男の魂に火をつけろ!企画】漫画実写化邦画ベストテン

ワッシュさん( @washburn1975 )さん恒例ベストテン企画の季節がやってきました。今回のテーマは「漫画実写化邦画ベストテン」。2000年代以降、VFXの発展で急増した漫画の実写化。2010年代後半からは少女漫画映画の実写化が流行し、青春キラキラ映画の文法が確立されていった。そして山戸結希が『溺れるナイフ』、『ホットギミック ガールミーツボーイ』で青春キラキラ映画の文法を破壊したことにより、『チワワちゃん』、『恋は雨上がりのように』や『ジオラマボーイ・パノラマガール』といった超絶技巧光る傑作が生み出されるようになってきました。また、2020年は『性の劇薬』、『窮鼠はチーズの夢を見る』といったBL漫画の映画化が公開され、実写漫画の映画化に盛り上がりを魅せています。さて、話はこのくらいにして私のベストテンを発表します。

1.本気のしるし 劇場版(深田晃司,2020)

星里もちるの同名漫画をテレビドラマ化し、それを4時間の劇場版に圧縮させた本作は、ドラマ的20~30分に一度の区切りをバネに、次々と現れる修羅場を魅力的に描き、観る者までもが辻一路のように地獄を欲するようになる。そして、本作が凄いのは微妙に改変されたストーリーだ。細川尚子を取り巻くルッキズム問題を強調するように、藤谷美奈子は最初から恋愛の対象外として変更し、会社では真面目すぎる彼女に対して同情するそぶりをみせて、家では秘密の情事を交わす。ただ決して「好き」と言わない辻のゲスさが浮き彫りになるようになっている。また、人のリズムをとことん狂わす葉山正を演じた宇野祥平の怪演が凄まじい。これぞ漫画実写化のお手本だ。

2.ちはやふる 結び(小泉徳宏,2018)

青春キラキラ映画史に名を刻む『ちはやふる』3部作は、この手のジャンルのクリシェとなる大袈裟なギャグを取り入れつつも、輝ける青春にまっすぐに生きる人たちの尊さをとことん追求している。その最終章の完成度の高さは感動ものである。最終章にもかかわらず、新キャラクターを登場させる。大学=大人の世界という大海原を前に、受験を選ぶ者と競技かるたを選ぶ者の二手に分かれ、それぞれの葛藤を重厚に描き、最後に決算の会場で再び出会う。その試合が放つ後光の眩さ。私は高校時代、部活に真面目ではない人間であったが、その真っ直ぐに打ち込む姿に感銘を受けた。

3.子連れ狼 三途の川の乳母車(三隅研次,1972)

今、『鬼滅の刃』が社会現象レベルで流行しているのだが、もし実写化するなら三隅研次を墓場から復活させるべきだ。チャンバラで何が斬れるのかを追求した結果、襖越しに殺害するはもちろん、砂丘の中からガバッと刺客が現れるといった常軌を逸したアクションが釣瓶打ちとなっている。漫画の自由さを極限まで映画に打ち込んだ傑作である。

4.ピンポン(曽利文彦,2002)

『ちはやふる』登場前の伝説的青春キラキラ映画。天才と努力で天才に近づこうとする者、そして強豪校の猛者たちがしのぎを削って、ピンポンに明け暮れる。実際の試合は球を追うだけで手一杯となってしまうのだが、スローモーションやワイヤーアクションを多用したアクションの強調が効果的に使われ、思わず高校時代に戻って部活をしたくなる気分にさせられる作品です。

5.るろうに剣心 伝説の最期編(大友啓史,2014)

『鬼滅の刃』を実写化するなら墓場から三隅研次を蘇らせるべきなのだが、それはできないので、大友啓史にお願いしたい。ジャンプ漫画『るろうに剣心』映画化第3弾は、荒唐無稽なフィクションとしてのチャンバラを本気でやってのけた作品だ。モノホンの死の恐怖伝わるアクションに、業火のVFXが加わり「伝説の最期」の名に相応しいアクションが詰まっていた。何よりも、藤原竜也演じる志々雄真実の圧倒的カリスマ性に惚れ込んだ。もはや終盤のバトルは集団リンチだよね。

6.続・サザエさん(青柳信雄,1957)

国民的アニメ『サザエさん』はアニメ化以前に13本映画化されている。その中でもサザエさんとマスオさんの馴れ初めを描いた『続・サザエさん』はオススメだ。今や、家族政治を前にへこへこしているマスオさんですが、小泉博演じるマスオさんはイケメン強キャラである。そしてサザエさん(江利チエミ)は戦後のアメリカ文化への羨望ということなんでしょうか、突然流暢な英語で歌い始める。古き良き和製ミュージカル映画の要素も楽しめる傑作となっています。

7.宮本から君へ(真利子哲也,2019)

社会人になると右から左から不条理がやってくるもの。その中には力で押さえつけようとするものがある。この作品は、力で押さえつけようものなら力で解決するというフィクションとしての面白さがある。実際にやったら犯罪でしかないのだが、のび太が何度殴られようともジャイアンに襲いかかり、精神面で勝利するあの感動がこの映画にはありました。ドラマ版もオススメです。

8.ジオラマボーイ・パノラマガール(瀬田なつき,2020)

『溺れるナイフ』以降青春キラキラ映画の文法に突然変異が起きたのだが、その中でも異様な作品がこれだ。思春期のありあまる力とそれを制御できない慣性の法則がふわふわくるくると登場人物たちを動かしていく。そして建築途中の高層ビルや、部屋の中にある枠組みを通じて未来を描けない子どもたちのアンニュイな孤独というものを表現する一見普通の青春キラキラ映画に見えて、恐ろしいほどに高度な文法を使ってくる演出に魅了された。後に瀬田なつきがジャック・リヴェットの『セリーヌとジュリーは舟でゆく』が好きと聞いて納得がいった。

9.とんかつDJアゲ太郎(二宮健,2020)

『チワワちゃん』で平成時代のヤケクソと虚無を見事に表現した二宮健に白羽の矢が当たって作られたとんかつとDJを同列に語る異常な映画化は、興行的には度重なる不運で大失敗に終わったものの、その演出力の高さは評価に値する。SNSでバズったからと、見せかけのDJでイキっているアゲ太郎が、フロアでの失敗を機にホンモノのDJを知る。そしてクライマックスではグラフィティ、ダンス、ラップ、に音楽とヒップホップに大切な要素を巧みに組み上げて、尚且つクラブ向きの曲ではないものでフロアを盛り上げてみせるその手腕にビビりました。二宮健監督は癖が強いが私は応援しています。

10.ボーイズ・オン・ザ・ラン(三浦大輔,2010)

持たざる者が持てる者に蹂躙された痛みというものを全編に渡って刻み込むこの切ない話はバイブルである。持てない者にとって、微かな幸福は重要であるのだが、それをいとも簡単に奪われる。持てる者からしたら大したことないが、持たざる者からしたら一大事だ。その血が滲むような物語に心奪われた。次、押見修造の漫画を映画化するなら深田晃司か三浦大輔で決まりだ。

最後に

日本は漫画大国だ。ガラパゴス諸島のようにあらゆるジャンルが生まれ、最近ではお笑い芸人のクロちゃんが異世界転生する、どこにニーズがあるんだ系漫画が爆誕している。それだけに実写化もバラエティ豊かだ。個人的には、昨今恋愛の多様性故か一ジャンルとして定着してきた逆身長差カップルもの(『ハル×キヨ』、『羽柴くんは152センチ』、『僕の心のヤバイやつ』etc)をもうそろそろ実写化してほしいところだ。

というわけで私の漫画実写化邦画ベストテンは以上です。

※映画.comより画像引用

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