『娘は戦場で生まれた』現代の《この世界の片隅に》を観る

娘は戦場で生まれた(2019)
For Sama

監督:ワアド・アルカティーブ、エドワード・ワッツ

評価:85点

おはようございます、チェ・ブンブンです。第92回アカデミー賞長編ドキュメンタリーで『THE CAVE』と並び、シリア・アレッポにおける《この世界の片隅に》を描いた『娘は戦場で生まれた』がノミネートされました。噂で、ヤバすぎる!と言う声を聞いていたのですが、よくある内戦レポートでしょ?と鷹を括っていた私は土下座したくなったので感想を書いていきます。

『娘は戦場で生まれた』あらすじ


内戦の続くシリアでスマホで映像を撮り始めた女学生がやがて母となり、娘のために生きた証を残そうとカメラを回し続ける姿を捉え、カンヌ国際映画祭など各国の映画祭で高い評価を得たドキュメンタリー。ジャーナリストに憧れる学生ワアドは、デモ運動への参加をきっかけにスマホで映像を撮り始める。やがて医師を目指す若者ハムザと出会い、夫婦となった2人の間に、新しい命が誕生する。多くの命が失われる中で生まれた娘に、平和への願いをこめて「空」を意味するサマと名づけたワアド。その願いとは裏腹に内戦は激化し、都市は破壊され、ハムザの病院は街で最後の医療機関となる。明日をも知れぬ身で母となったワアドは、家族や愛する人のために生きた証を映像として残そうと決意する。
映画.comより引用

現代の《この世界の片隅に》

手持ちカメラで、部屋から出るワアド・アルカティーブ。彼女はジャーナリストに憧れ、カメラ片手に目の前で起こることを片っ端から撮っていた。爆撃があり、5m先から煙があがっているのに、FPSゲームさながら煙に飛び込み、階段を駆け足で降りていく。すると、無数の血だらけな人々が横たわっている。数ヶ月滞在しただけじゃなかなか遭遇できない、直ぐそばにある危機を勇敢に彼女は収めていくのだ。

何故彼女は必死なのか、「撮るな!」という男の制止を振り払い彼女はアレッポの全てを撮り収めようとする。単なるジャーナリストになりたいだけでは辿り着けない信念だ。彼女はFILM INQUIRYのインタビューで、「シリア政権とロシアが皆殺ししてしまったので、何が起きているのか誰にもわからないの。」と語っている。そして、彼女を支えたもう一人の監督エドワード・ワッツは「人々が無力感を感じるのは簡単なことだ。変化に影響を与え、影響を与える力があると信じている個人、あきらめない人たちができることについてこの映画で描きました。」と語る。

彼女は医師ハムザとの間に子どもを授かっていた。彼女は、大人になった娘サマの為に、今のアレッポをアーカイブしようとし、それこそが社会を変える武器なのだと必死にこの映画を作ったことがよくわかります。。『この世界の片隅に』は、映像撮影が庶民の手に及ばない時代の話だったので、絵という虚構に振り切れたものでしかあの時代の生活をアーカイブできなかった。しかし、今やカメラは多種多様。なんならスマホやドローンですら高解像度な動画が撮れる。本作は、現代における戦争下の市民生活をアーカイブした歴史的重要な作品と言えよう。

そして、無数の死体を埋める場面等開いた口が塞がらない描写の連続に驚きを隠せませんでした。

日本公開は2/29(土)渋谷イメージフォーラムにて!

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