『ミアとホワイトライオン 奇跡の1300日』ホンモノのライオンとの対話がもたらす緊迫感

ミアとホワイトライオン 奇跡の1300日(2018)
Mia et le lion blanc

監督:ジル・ド・メストル
出演:ダニア・デ・ヴィラーズ、メラニー・ロラン、ラングレー・カークウッド、ライアン・マック・レナン、ライオネル・ニュートンetc

評価:70点

おはようございます、チェ・ブンブンです。

マスコミ試写会で2021/2/26(金)公開の『ミアとホワイトライオン 奇跡の1300⽇』を一足早く観させていただきました。メラニー・ロランが出演する本作は、本物のライオンを使用し、3年以上かけて製作されたヒューマンドラマである。フランス・ブーローニュ=ビヤンクール出身の映像作家であるジル・ド・メストルが野生動物と子どもの関係性に迫るドキュメンタリーシリーズ『Les petits princes』を手がけた際、南アフリカでライオンファームを経営する家族を取材したことから本作の着想を得た。表向きは動物園やサファリパークに売って動物保護の一端を担っているのだが、実は「缶詰狩り」用にライオンを飼育していたという事実に驚愕した監督は動物研究家で保護活動家のケビン・リチャードソンと共に本作を製作したのだ。

今や、動物はCGで描かれることが主流となってきている。ジャック・ロンドン同名小説6度目の映画化である『野性の呼び声(2020)』では、犬を3DCGで描いている。驚くほど滑らかにリアルに侵食する犬造形が不気味の谷を感じさせるものがあった。ただ、動物虐待の観点から近年は映画のエンドロールに警告をする必要があったり、動物の健康を怠ると炎上するリスクがあるため、『野性の呼び声』のような動物虐待描写がある作品はCGで描く必要がある。一方で、人間以上に教育が難しい動物を起用するリスクと天秤にかけた上で、『ライオン・キング(2019)』ではモーションキャプチャーを駆使したリアルなCGをVR上に創り出した風景の中で撮影に取り込む手法で、偶発的なもの全てをコントロールしようとした。
『ミアとホワイトライオン 奇跡の1300日』はリスク回避の時代の流れに逆行する映画である。かつて『ROAR/ロアー(1981)』ではタンザニアの小屋にライオンやトラをとことん詰め込んで、血だらけになりながら撮影した狂気の作品があった。それに迫る怖さがここにある。ただし、本作は21世紀の映画として万全の体制で進められたのでご安心を。子役は300人のオーディションの中から選出。ダニア・デ・ヴィラーズが起用されたのだが、万が一のことを考えもう一人キャスティングを行った。

ライオンの気が乗るまで待ってから撮影を行い、安全性に問題あると判断した場合にはグリーンバックを使用する案も持った状態で挑んだとのこと。

それではドキュメンタリー監督としてのプライドが詰まった『ミアとホワイトライオン 奇跡の1300日』観ていきましょう。

『ミアとホワイトライオン 奇跡の1300日』あらすじ

ライオンファームの経営のため、家族と共にロンドンから南アフリカへ引っ越してきた少女ミア。慣れ親しんだ街や友達と遠く離れたサバンナの真ん中で、自分の居場所が見つけられない彼女はことあるごとに周囲に反発する。ミアが11歳のクリスマスの日、両親のファームにホワイトライオンの子供チャーリーが生まれる。初めは心を閉ざしていたミアだったが、自分にばかりなついてくる小さなチャーリーの世話をし始め、共に成長していくうちに互いに特別な友情で結ばれていく。

3年後、ミアは14歳になり、チャーリーは美しい雄ライオンに育っていた。今までミアたちを見守ってきた両親は、大人のライオンは危険だとミアからチャーリーを引き離そうとするが、チャーリーと信頼の絆で結ばれたミアはそれを拒む。

そんなある日、ミアは信じがたい光景を目撃する。ライオンを囲いに閉じ込めて、ハンターが娯楽として狩猟をする「缶詰狩り(トロフィー・ハンティングの一部)」の業者が、父からチャーリーを買おうとしているのだ。チャーリーを救うためファームから連れ出したミアは、ホワイトライオンにまつわる伝説が残るティムババツィ野生動物保護区を目指し、様々な困難を乗り越 えながらサバンナを横断していく。
※プレスより引用

ホンモノのライオンとの対話がもたらす緊迫感

CGで動物が描かれることが主流になりつつある今、ホンモノの動物、特に猛獣と呼ばれる動物が目と鼻の先で人間と対話する映画からはとてつもない緊迫感が漂う。バラエティ番組のように動物と人間の珍事という笑い目的な映像でないためか、一見小・中学生向けの平易な映画であるが一瞬も目を離すことができない。観客は、グッと膠着した状態でライオンと人間の交流を観ることとなる。

ミアはホワイトライオンのチャーリーと仲良くなるのだが、赤ちゃんだったホワイトライオンはあっという間にミアよりも巨大な姿となる。じゃれ合うだけで押しつぶされそうになる。キャッと飛びかかるホワイトライオンに、観るものはヒヤリとするだろう。その感覚を持たせることで、周囲の大人の親密な関係になるミアとチャーリーに対する緊張感に説得力が宿る。

そして、そこに業者がやってきてチャーリーを買いたいと言う。彼は缶詰狩りのマトとしてチャーリーを購入しようとする。貧乏ライオンファームの父親は、業者による悪魔の囁きに手を貸してしまう。それに激怒したミアはチャーリーと逃亡することになるのだが、常時密接した状態で人間とライオンがノンバーバルコミュニケーションを取る。恐怖を魅せたら襲われそうな状態でありながらも、長年培ってきた友情と信頼の関係で、喜怒哀楽を映画の中にいれていくのです。

ドキュメンタリーのような手触りでありながらも、「演技」というものを意識して劇映画として作り込んでいく姿は、『ROAR/ロアー』に通じるものがある。しかし『ROAR/ロアー』が本能で作られた映画だとすれば、本作は理性で作られた作品であり、入念な準備や保険を掛けてもエンターテイメントとして魅力的な映画を作れることをジル・ド・メストル監督は証明してみせました。

尚、ジル・ド・メストル監督には他にも動物映画の企画が存在しており、現在カナダでサーカスに搾取される動物たちをテーマにした『Le loup et le lion』を製作している。こちらも期待できそうな作品である。

日本公開は2021/2/26(金)です。

↑「缶詰狩り」に興味ありましたら『サファリ』オススメします。

※画像は映画.comより引用

ブロトピ:映画ブログ更新しました!
ブロトピ:映画ブログの更新をブロトピしましょう!