『ミッドウェイ(2019)』戦争映画で隠されたヒューマンエラーとは?

ミッドウェイ(2019)
Midway

監督:ローランド・エメリッヒ
出演:ルーク・エヴァンス、ウディ・ハレルソン、パトリック・ウィルソン、ニック・ジョナスetc

評価:90点

マイケル・ベイと並び、爆破王、破壊王としてブロックバスター映画を作り続け、その度にシネフィルや映画批評家から嘲笑される監督ローランド・エメリッヒ。マイケル・ベイと比べると、CGに比重を多く割り当てているせいか常に彼の作品には逆風が吹き荒れている。そんな彼の新作『ミッドウェイ』がようやく日本でも陽の目を浴びた。この日を待ちに待っていた私は、公開初日に劇場へ足を運びました。映画館は平日昼間にもかかわらず、満席近くまで埋まる盛況っぷり。日本の映画ファンがエメリッヒに飢えていることを噛み締めながらこの祭りに飛び込んでみました。

『ミッドウェイ』あらすじ


「インデペンデンス・デイ」「ホワイトハウス・ダウン」のローランド・エメリッヒ監督が、第2次世界大戦(太平洋戦争)のターニングポイントとなったミッドウェイ海戦を描いた戦争ドラマ。1941年12月7日、日本軍は戦争の早期終結を狙う連合艦隊司令官・山本五十六の命により、真珠湾のアメリカ艦隊に攻撃を仕掛ける。大打撃を受けたアメリカ海軍は、兵士の士気高揚に長けたチェスター・ニミッツを新たな太平洋艦隊司令長官に任命。日米の攻防が激化する中、本土攻撃の脅威に焦る日本軍は、大戦力を投入した次なる戦いを計画する。真珠湾の反省から情報戦に注力するアメリカ軍は、その目的地をハワイ諸島北西のミッドウェイ島と分析し、全戦力を集中した逆襲に勝負をかける。そしてついに、空中・海上・海中のすべてが戦場となる3日間の壮絶な戦いが幕を開ける。キャストにはエド・スクレイン、ウッディ・ハレルソン、デニス・クエイド、豊川悦司、浅野忠信、國村隼ら実力派が海を越えて集結。
映画.comより引用

戦争映画で隠されたヒューマンエラーとは?

ローランド・エメリッヒ映画の弱点は、サービス精神旺盛すぎてアクションが見辛いところにある。『インデペンデンス・デイ:リサージェンス』や『2012』のCGに力入れすぎて、位置関係が把握しづらいアクションは、アクション映画として致命的な欠点となってしまう。彼は、マイケル・ベイと比べると「何をしたいか」を重視しており、「どのように撮るか」を軽視してしまう問題がある。しかしながら、この『ミッドウェイ』は非常に観やすい代物となっていました。

相変わらず、爆破欲旺盛につき5分ぐらい説明描写を入れたら、すぐさま真珠湾攻撃を始める。空から日本軍が攻め入り、爆破が海を覆い尽くすのだが、当時はSNSなんてないので情報伝達に時間がかかる。遠くを飛んでいる米軍戦闘機は「随分と派手な演習だな」と呑気なことをいっており、ある軍人は家で家族との束の間を味わっている。そんな静の描写と退避するように、現場の修羅場が描かれる。ロープで戦艦と戦艦とを繋ぎ、手を負傷した若い兵士が渡ろうとする。その狭間を戦闘機が襲撃する。それを、仲間が撃墜しようとする。袋の鼠な状況下でのスリル。通常であればクライマックスに持っていくであろう場面を冒頭から持ってくるサービス精神に心踊らされる。

さて、そんなエメリッヒの祭に今回異変があった。ハリウッドの戦争映画でほとんど観られない描写がやけに覆いのだ。

それはヒューマンエラーである。

何故か10分に一度、誰かが致命的なミスを犯すのです。母艦から戦闘機が離陸しようとすれば、スピードが足りずそのまま海に不時着し、無慈悲にも母艦に潰されてしまう。着陸もしょっちゅう失敗する。ドッグファイト中にはうっかり機銃に触れて大火傷するし、丁度ドキュメンタリー映画『ミッドウェイ海戦』の撮影に来ていたジョン・フォードは敵襲を撮ろうとして負傷する。かっこ悪いヒューマンエラーを頻繁に描くのです。かつてここまでミスの多い戦争映画はあっただろうか?

これはもう70年以上経って、《歴史》として風化した戦争に命を与える演出と捉えることができる。戦争という厳しい状況下であっても人はミスをするものだ。時に戦局に影響出るミスもあるだろう。それでも、前へ進まないといけない。ミスをリカバリーして戦争と対峙しないといけないのだ。どうも、ローランド・エメリッヒは米軍/日本軍の司令官の熱く冷静な判断に自分を重ねているように見える。映画製作だってすんなり上手くいくことはない。常にミスや問題を右から左へと交通整理する必要があるのだ。その親近感からか、本作は他のハリウッド戦争映画とは違い日米中立的立場で描かれている。米軍は日本軍の強さを恐れながら、知恵を絞って戦いに挑む。一方、日本軍は米軍の勇姿を褒めたり、時には自分の過ちに対して責任を取ったりする。トップとしてあるべき姿とは何かを、激しいアクションの片鱗に忍ばせていくのです。そうです、本作のテーマはマネジメント論だったのです。

それ抜きにしても魚雷や爆弾を紙一重で回避していく姿や、膨大な弾幕を猪突猛進掻い潜っていく映画的カタルシスはハリウッド大作不足な今に染みる特効薬であろう。これは映画館で観て大正解でした。

※IMDbより画像引用

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