『ノーマ・レイ』労働組合を作ろうぜ!

ノーマ・レイ(1979)
NORMA RAE

監督:マーティン・リット
出演:サリー・フィールド、ロン・リーブマン、ボー・ブリッジス、パット・ヒングル、バーバラ・バクスレー、ゲイル・ストリックランド、モーガン・ポール、ロバート・ブロイルズ、ジョン・カルヴィン、ブース・コルマンetc

評価:65点

おはようございます、チェ・ブンブンです。

国立映画アーカイブにて特集「アカデミー・フィルム・アーカイブ 映画コレクション」が開催されている。本特集のラインナップがかなり良いので行ってきた。1/8(日)は労働組合に関する作品2本が観られるとのこと。この記事では『ノーマ・レイ』について書いていく。

『ノーマ・レイ』あらすじ

アメリカ南部の町O・P・ヘンリー紡績工場に、女工として働いているノーマ・レイ(サリー・フィールド)は、2児の母である。1人は、ノーマが学校を出てすぐ結婚し、その後酒場の喧嘩で殺された最初の夫との間の児であり、もう1人はその後に生んだ父なし児である。無知な女ノーマは、先夫を失ってから、とかく素行がおさまらなかった。ノーマの父バーノン(パット・ヒングル)と母リオナ(バーバラ・バクスレイ)も、ノーマと同じ紡績工場で働いているが、この工場には組合もなく、工員たちはコキ使われ、搾取されるままになっているため、年老いた2人は疲れきっていた。ある日、この町にニューヨークからルーベン(ロン・リーブマン)という男がやって来た。彼はユダヤ系で、ニューヨークに本部をもつアメリカ紡績工員労働組合に所属しており、この町の工場に組合を組織するために派遣されて来たのであった。

映画.comより引用

労働組合を作ろうぜ!

「奇跡なんか起きない」と悲しげな歌から始まる本作は、劣悪な紡績工場を「音」で魅せていく。大きな機械音が絶え間なく響く現場では、耳栓をしないと仕事ができない環境となっている。休憩中のノーマ・レイ(サリー・フィールド)。彼女の顔はやつれている。両親もこの工場で働いている。レイは母に語りかけるも、全く反応しない。耳がおかしくなったのではと、会社の医務室に連れていくが、適当に扱われる。「使えなくなったら、他の会社へ転職すれば?」と言われるが、そもそも地方都市には仕事がない。会社が生殺与奪を握っているのだ。

そんなある日、男がやってくる。ルーベン(ロン・リーブマン)だ。彼は紡績工員労働組合に所属しており、この地域にも労働組合を作ろうとしているのだ。彼女は、彼と共に労働組合を作ろうとするが、会社による陰惨な工作活動や、仲間の意識の低さもあり困難を極めていく。

本作は、高校生や大学生に観せたくなるほど網羅的に労働組合の意味や、労働組合を作る運動の難しさを描いていく。日本では、割と企業ごとに労働組合が作られ、企業間の連携がないため名ばかり組合となりがちだが、アメリカは業界ごとに労働組合が作られる。しかし、労働環境の改善はそう簡単ではない。結局のところ、意識高い人がわずかな可処分時間を消費して立ち上がることでようやく組合ができるのだ。それに対して、企業の妨害、分断のための工作は容易となっている。『ノーマ・レイ』の場合、オフィスの管理者が監視している場所に張り紙が掲示されており、そこに重要なことが書かれている。他の従業員がスルーしてしまうような場所にてこっそり明言がされているのだ。また、労働組合を「黒人の溜まり場」と吹聴することで、白人と黒人の労働者を分断しようとする。あまりに脆い組合をどうやって軌道に乗せるのかか描かれている。

ただ、本作は労働組合を中心とする問題を点として捉え、その点を結んでいるだけのように見えるため、いつの間にか労働者が団結していたり、ノーマ・レイが主婦としての家事仕事にキレる場面が、その後の展開に繋がってこなかったりと、作劇としての雑さが目立っていた。この行間に関する部分は『アメリカ合衆国ハーラン郡』で補うことができる。

※MUBIより画像引用

created by Rinker
20th Century Fox Jp