『ホーンテッドマンション』ウィリアム・キャッスル的楽しさに満ちた怪作

ホーンテッドマンション(2023)
Haunted Mansion

監督:ジャスティン・シミエン
出演:ロザリオ・ドーソン、オーウェン・ウィルソン、ティファニー・ハディッシュ、ラキース・スタンフィールド、ダニー・デヴィート、ジャレッド・レト、ジェイミー・リー・カーティスetc

評価:90点

おはようございます、チェ・ブンブンです。

ディズニーランドの人気アトラクションの映画化『ホーンテッドマンション』が日本公開された。実は10年以上前にも映画化されており、本作はリメイクとなっている。ここ数年、ウィリアム・キャッスルについて調査しており、ずんだもん解説動画を作っていただけに、この手のギミックお化け屋敷映画に注目している。予告編からは『地獄へつゞく部屋』や『13ゴースト』の面影ないし『TATARI タタリ』『ゴーストシップ』などのダーク・キャッスル・エンターテインメント作品の気配を感じた。実際に観るとこれが想像以上に面白かった。


確かに近年のハリウッド大作にありがちな映画というよりかはRTAをしている作品で、露骨に「零」みたいな場面があるため、ゲームの方が面白そうに思えたのだが、それでも素晴らしい娯楽作品であった。

『ホーンテッドマンション』あらすじ

ディズニーランドの人気アトラクション「ホーンテッドマンション」を実写映画化。999人のゴーストが住むという呪われた洋館に暮らすことになった親子と、怪奇現象の解明のためやってきたエキスパートたちが、ゴーストたちと繰り広げる攻防をコミカルに描く。

医師でシングルマザーのギャビーは、ニューオーリンズの奥地に建つ不気味な洋館「ホーンテッドマンション」を破格の条件で手に入れ、9歳の息子のトラヴィスとともに引っ越してくる。しかし、一見すると豪華なこの新たなマイホームで、2人は想像を絶する怪奇現象に何度も遭遇する。そんな親子を救うため、超常現象専門家のベンを筆頭に、神父のケント、霊媒師のハリエット、歴史学者のブルースという個性的でクセの強いエキスパートたちが集結し、館の謎を解き明かそうとするが……。

ギャビー役をロザリオ・ドーソンが務め、心霊現象のエキスパートたちをラキース・スタンフィールド、オーウェン・ウィルソン、ティファニー・ハディッシュ、ダニー・デビートがそれぞれ演じる。監督は、カリフォルニアのディズニーランドでキャストとして働いていた経歴をもつという、「バッド・ヘアー」のジャスティン・シミエン。

映画.comより引用

ウィリアム・キャッスル的楽しさに満ちた怪作

内なる自己に蝕まれながらも胡散臭いツアーガイド兼超常現象専門家の男は、依頼を受けて屋敷にやってくる。そこにはシングルマザーと息子がいて、霊に怯えていた。彼もまた霊に取り憑かれてしまったので、個性的な有識者と結託して幽霊との対話を試みる。本作はコミカルな作風でありながら、凝った画面構図を次々と仕掛けてくる作品であり、観客の予想を先回りして外していくところに面白さがある。例えば、鏡に触れる場面。通常であれば鏡を通じて別の領域へとアクセスすることだろう。丁寧に、鏡の向こう側に行けるかもしれないといったフラグを立てておきながら、いざ突っ込むと物理的にダメージを受けることとなる。ただ、そこで終わらないのがこの映画の素晴らしいところだ。「鏡に激突する」をトリガーとして、今いる空間自体が広がるのだ。同様に、秘密の扉のスイッチかと思ってランプを引くと、バキバキといった形で破損する場面があり、一貫して外しのギミックを仕込んでいる。

小道具に注目すると、カメラの使い方が良い。主人公は幽霊の存在を信じない。そのため、超常現象は特殊なカメラで捉えようとする。カメラは、ある瞬間を客観的に記録する道具であるからだ。幽霊のような存在を見る。怖いから背を向ける。彼にとって幽霊は見えないが観客にとって彼の背後の視点を有しているので見える。ただ、我々が見えている幽霊を「カメラ」に収めることで、客観的証拠が生み出される。幾つもの視点をひとつの画に収めていく場面なのだが、これが綺麗に作り込まれていて素晴らしい。最初は、幽霊の存在を信じなかった彼がカメラを通じて信じるようになり、積極的に対話できるようにガラスを曇らせて環境を構築しようとする。こうした小道具の遷移は観応えがあった。

意外とこういう怖くないけどちょっぴり怖くて痛快なホラー映画ってあまりないなと感じる。それだけに楽しかった。

※映画.comより引用

created by Rinker
ウォルト・ディズニー・ジャパン株式会社