【アマプラ】『地獄へつゞく部屋』ウィリアム・キャッスル、もちろん映画内ギミックも凝っとるよ

地獄へつゞく部屋(1959)
HOUSE ON HAUNTED HILL

監督:ウィリアム・キャッスル
出演:ヴィンセント・プライス、キャロル・オーマート、リチャード・ロングetc

評価:65点


おはようございます、チェ・ブンブンです。

先日、YouTubeでギミック映画の帝王ことウィリアム・キャッスルの解説動画を出した。さもウィリアム・キャッスル専門家のように語ったが、肝心な代表作『地獄へつゞく部屋』を観ていなかった。本作は終盤の骸骨が飛び出してくるシーンにおいて、客席へ向かって骸骨が飛び出すギミック「イマーゴ・システム」を導入したことで知られている。またロバート・ゼメキスがジョエル・シルバー、ギルバート・アドラーと立ち上げたホラー映画制作会社ダーク・キャッスル・エンターテインメントの第一作『TATARI タタリ』のリメイク元でもある。奇遇なことに最近、Amazon Prime Videoで配信が始まったので観た。

『地獄へつゞく部屋』あらすじ

一軒の古い屋敷で行なわれる恐怖のゲーム。それは、その屋敷に一晩泊まり込む、というものだった。幾人かの男女が集まったが、彼らは何者かに殺されていく……。

allcinemaより引用

ウィリアム・キャッスル、もちろん映画内ギミックも凝っとるよ

ウィリアム・キャッスルのギミック黄金時代の映画は作品の内容よりも、ギミックの方が印象的な傾向がある。個人的に『インセプション』のような脳内スパイ合戦を少ない舞台装置で見事スペクタクルへと昇華させた『危機一髪!西半球最後の日』や人間ラジコンを使って不良集団と心理戦を繰り広げる『SHANKS』といった晩年の作品の方が内容的に面白いと考えている。本作は前述の通り「イマーゴ・システム」の存在があまりにも大きいため、内容はさほど期待していなかった。確かに、鈍重な作品ではある。80分あるうちの大半は対話メインとなっている。ホラー映画であり、ある種の密室サスペンスなのだが、個性的なキャラクターをいつまでも群れとして一ヶ所に固めておくため、焦ったさがある。追い討ちをかけるように、全ての状況を台詞で丁寧に語らせてしまうので、超常現象に対する得体の知れない怖さが薄まってしまっている問題を抱えている。

しかし、空間造形の素晴らしさと映画内ギミックの面白さは注目すべきポイントであろう。フランク・ロイド・ライトが建てたような、独特な造形の屋敷に導かれる者たち。彼らの退路を塞ぐようにゆっくりと扉が締まっていく。風による自然的な閉じでも扉の構造による物理的な閉じでもない絶妙な挙動で扉が締まっていく様子に、どこか魔性の香りを感じる。建物の中には、いかにも不自然なギミックが数多く敷き詰められている。天井からは濃いめの液が滴る。床を開くと酸の池があり、ネズミの死骸を入れると溶けてしまう。ちっちゃな棺桶がずらりと並んでおり、開けると銃が出てくる。バラエティ番組のセットかなと思うほど珍妙な空間となっているのだ。そこで、もったいぶりながら様々なフラグを立てていき、骸骨が登場する場面では驚くべきマシンを使ったカラクリが明かされる。あまりの曲芸っぷりに恐怖通り越してギャグになってしまうおかしさは唯一無二の魅力であろう。

本作を観ると、ウィリアム・キャッスルは作品の内容の弱さをギミックで誤魔化すのではなく、映画内ギミックと併せた相乗効果を狙おうと努力していたことが感じ取れる。このエンターテイメント精神があるから、自分は推したい監督なのだ。

ウィリアム・キャッスル記事

【ネタバレ考察】『ティングラー/背すじに潜む恐怖』ウィリアム・キャッスルWho Are You?
『危機一髪!西半球最後の日』ウィリアム・キャッスルが『インセプション』のような映画を撮っていた件
【特集ウィリアム・キャッスル】『SHANKS』人間ラジコン
【ウィリアム・キャッスル特集】『ミスター・サルドニクス』結末は観客に委ねられた。

※Letterboxdより画像引用