【 #死ぬまでに観たい映画1001本 】『スウィート ヒアアフター』人を引き裂くロジックの破綻

スウィート ヒアアフター(1997)
THE SWEET HEREAFTER

監督:アトム・エゴヤン
出演:イアン・ホルム、カーザン・バンクス、サラ・ポーリー、トム・マッカムス、ガブリエル・ローズetc

評価:50点

おはようございます、チェ・ブンブンです。

「死ぬまでに観たい映画1001本」フルマラソンも残り10本となった。最後の10本はセットリストを作り順番に観ていくことにした。1本目は『スウィート ヒアアフター』だ。アトム・エゴヤン監督は割とロジックが妙な映画監督だと思っていて『白い沈黙』を観た時、足跡もなく失踪する娘という展開が飲み込めなかった記憶がある。『スウィート ヒアアフター』もロジックとして妙に感じる部分が多い作品であった。

『スウィート ヒアアフター』あらすじ

カナダのアトム・エゴヤン監督が、1997年・第50回カンヌ国際映画祭でグランプリを受賞したヒューマンドラマ。ラッセル・バンクスの小説「この世を離れて」を原作に、童話「ハメルンの笛ふき」のエッセンスを取り入れ、スクールバス転落事故の遺族たちの“その後”を独特の美学で描き出す。雪に覆われた小さな田舎町でスクールバスが湖に転落し、20人以上の子どもたちが犠牲となった。町にやって来た弁護士スティーブンスは子どもを亡くした親たちの怒りを煽り立て、集団訴訟を起こすよう彼らを説得する。スティーブンスが彼らと話す中で、町の人々の複雑な関係と隠された秘密が明らかになる。やがて、生き残った少女ニコールの証言により、事態は思わぬ方向へと展開していく。「エイリアン」のイアン・ホルムが弁護士スティーブンス、後に「死ぬまでにしたい10のこと」などに出演するサラ・ポーリーが少女ニコールを演じた。

映画.comより引用

人を引き裂くロジックの破綻

スクールバスの事故により、多くの子どもたちの命が失われる。町に弁護士スティーブンスがやってくる。集団訴訟を引き起こそうとするのだが、彼の冷静沈着な語りが既におかしい。「事故」なんて存在しない。企業の怠りが原因だと語るのだが、運転手の女性に対して「彼女は事故を起こさない」前提を持ち出す。確かに、企業を訴えることが彼のミッションではあるのだが、あまりに露骨な誘導質問っぷりに驚かされる。そして、荒涼とした雪の町で、関係者の群像劇が紡がれ、事件の真相へと近づいていく。重要参考人の女が「運転手は時速115キロ出していた」と語り始める。果たして、バスの速度計をはっきり確認することができるのだろうか?その疑いに対して、「彼女は確かに115キロ出していた」一辺倒でゴリ押ししていくのだ。本作は、静かに緻密に事件を紐解いていくのかと思いきやパワープレイで押し切る内容となっており、それを象徴するのか、事故の場面も、バスが横転するのではなく、坂を爆速で転げ落ち、クルクルと回転しながら凍った池を滑っていき沈むといった、独特な挙動をしていた。やはりアトム・エゴヤンの美学と相性が悪いなと感じた私であった。残り9本。

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※映画.comより画像引用

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