【セルゲイ・ロズニツァ特集】『キエフ裁判』魂を失った者たちの証言集

キエフ裁判(2022)
The Kiev Trial

監督:セルゲイ・ロズニツァ

評価:60点

おはようございます、チェ・ブンブンです。

ここ数年は定期的にセルゲイ・ロズニツァが日本に紹介されている。『破壊の自然史』と共に『キエフ裁判』がシアター・イメージフォーラムにて公開されていたので仕事終わりに観てきた。

『キエフ裁判』概要

「ドンバス」「バビ・ヤール」などで世界的に注目を集めるウクライナのセルゲイ・ロズニツァ監督が、第2次世界大戦後にキエフ(キーウ)で行われたナチス関係者15名の国際軍事裁判を描いたドキュメンタリー。

1946年1月、キエフ。第2次世界大戦の独ソ戦において、ナチスドイツと地元警察がソ連領土内で起こしたユダヤ人虐殺事件の首謀者15名が、人道に対する罪で裁判にかけられた。

裁判では、母から幼子を奪って目の前で射殺するなど数々の残虐行為が暴かれる一方で、被告人弁論では自己弁明に終始する者、仲間に罪を擦りつける者、実行しなければ自分が殺されたと同情を得ようとする者など、戦犯たちの凡庸な素顔が浮かびあがっていく。

映画.comより引用

魂を失った者たちの証言集

本作は『バビ・ヤール』をブラッシュアップしたような作品となっており、裁判パートと処刑パートに特化した作りとなっている。それにより、群衆の怖さが際立つものとなっている。散々、人を虐殺してきたのに、魂を失ってしまった者たちが淡々と喋る。どこか他人事のような語りをするのだが、それを大勢が静かに見守る。システムの中で事務処理を行なっているかのような冷徹さが空間を支配していくのだ。これを映画の9割かけて並べていく。そして最後の1割で『バビ・ヤール』同様のショッキングな処刑シーンを提示する。あれだけ静かに見守っていた者が、歓声と共に大きな動きを見せる。その光景は『バビ・ヤール』以上にグロテスクなものとして映し出されるのだ。正直、クロード・ランズマンが『SHOAH』の番外編として『ソビブル、1943年10月14日午後4時』を作ったような感じなのかと思って観たら、再編集版のようなものを提示され肩透かしを食らったのだが、それでもこの映画は重要な意味を持っているといえるだろう。

ちなみに、劇中で女性が腕の数字を見せる場面があるのだが、次のショットでその数字に寄ったものが挿入されていたのには驚かされた。こんなフッテージ残存しているんだ。

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※映画.comより画像引用