『風の中の牝雞』聳え立つ階段が怖い

風の中の牝鷄(1948)

監督:小津安二郎
出演:佐野周二、田中絹代、村田知栄子、笠智衆、坂本武、高松栄子、水上令子etc

評価:70点

おはようございます、チェ・ブンブンです。

CINEMAS+さんで小津安二郎『東京物語』がホラー映画であることを書いた。実は小津安二郎監督作品って怖い作品が多いのではと思って、『風の中の牝雞』を観てみた。読みはアタリ。本作もかなり怖い作品であった。

『風の中の牝雞』あらすじ

雨宮時子は、夫・修一(佐野周二)が外地へ赴いているため、健気にミシンを踏んで生計を立てていた。苦しい毎日ではあるが、息子・浩の成長ぶりを夫に見てもらう日を心の支えにした生活であった。ある時、浩が病に倒れ入院、まとまった金が必要になり途方に暮れた時子は、いかがわしい安宿で見知らぬ男に身体を売ってしまう・・・。そして、やっと戻った夫は、留守中の妻の真実を知ることになる。

Filmarksより引用

聳え立つ階段が怖い

以前、Twitterで階段映画を推すハッシュタグが流行った。今なら間違いなく、本作を推すだろう。それだけこの映画における階段は怖い。いつもの小津安二郎映画のように、言葉にしたくないような痛みを表情の翳り、ボソッとした語りで演出。それをゆったりとした時間運びで描く。ただ、映画は頻繁に、不自然に、中央に、壁のように君臨する階段を映し出す。どの画よりも仄暗い階段は、よくないことが起きる予感を醸し出す。そして、カランカランカランと物が落ちる描写があり、終いには女が転落する。それは死に近いほど恐ろしく、生々しい落ち方である。強烈な痛みが描かれているにもかかわらず、映画はその痛みと共にいつものゆったりとした時間の中歩み映画は終わるのだ。一度観たら忘れられないほどのインパクトがあった。

余談だが、後日、神奈川近代文学館で開催されている小津安二郎展に行った。小津安二郎について体系的に学べた。『父ありき』の教員を辞める展開は、彼が20歳で教員辞職した経験が活かされていそうだとか『エロ神の怨霊』がコメディ映画らしいとか、インスピレーション掻き立てられた。小津安二郎は、追ってみようと思った日であった。

※IMDbより画像引用