【東京国際映画祭】『テルアビブ・ベイルート』危険のそばで

テルアビブ・ベイルート(2022)
原題:Tel Aviv Beiru
英題:Tel Aviv Beyrouth

監督:ミハル・ボガニム
出演:ザルファ・シウラート、サラ・アドラー、シュロミ・エルカベッツetc

評価:30点

おはようございます、チェ・ブンブンです。

第35回東京国際映画祭コンペティション作品『テルアビブ・ベイルート』を観た。『ヌズーフ 魂、水、人々の移動』同様、凄惨な内容を軽妙に描くタイプの作品であった。これはある種の傾向なのか?現実があまりに凄惨な状況に陥っているからこそ、その中の希望や虚構を信じる態度で世界を変えようとする演出があるような気がした。さて、感想を書いていく。

『危険のそばで』あらすじ

1980年代のイスラエル、レバノン間の紛争を背景に、国境によって家族と分断されたふたりの女性の旅を描いたロードムービー。監督は『故郷よ』(11)で知られるイスラエル出身の女性監督ミハル・ボガニム。

※第35回東京国際映画祭より引用

危険のそばで

銃撃戦が行われる中、少女は兵士を追いかけて廃墟に辿り着く。銃声に臆することなく進んでいくと、顔面蒼白の兵士が現れる。兵士の横にはおじさんが座っており、煽り始める。兵士だけが恐怖している異様な状況が映し出される。やがて、攻撃が激しくなり、兵士は別の場所に逃げるが、そこにも少女が現れる。凄惨すぎる光景が日常すぎて「死」がどこか遠く感じる冒頭に惹き込まれる。しかし、ここが頂点でありそこからは『テルマ&ルイーズ』のようなタッチで描かれるロードムービーに乗れなかった。

国によって引き裂かれる中、衝動的行為でもって突破しようとする動きの映画だと思うのだが、歴史的背景の文脈を持ち合わせていない私にとってはピンとくるものがなかった。しかし、映画祭はこういう視点を提示してくれるから関心のチャンネルが開く。こうしたハマらない作品と出会うことも重要である。

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※第35回東京国際映画祭より画像引用