『山女』ブレッソンをやろうとしているが…

山女(2022)

監督:福永壮志
出演:山田杏奈、森山未來、永瀬正敏etc

評価:20点


おはようございます、チェ・ブンブンです。

第35回東京国際映画祭コンペティション部門に『アイヌモシㇼ』の福永壮志新作『山女』が出品された。映画祭よりも先にNHKで短縮版が放送されたので、今回はそちらの感想を書いていく。

『山女』あらすじ

18世紀後半、東北。冷害による食糧難に苦しむ村で、人々から蔑まされながらも逞しく生きる少女・凛。彼女の心の救いは、盗人の女神様が住むと言われる早池峰山だった。

第35回東京国際映画祭より引用

ブレッソンをやろうとしているが…

『リベリアの白い血』、『アイヌモシㇼ』と本物らしさにこだわる福永壮志が描く時代劇。言葉回しやゆったりとした展開が独特な雰囲気を醸し出す。しかし、本作では明らかにロベール・ブレッソンをやろうとして火傷しているように感じた。

居場所のない女が森の奥の怪物と少し親密な関係になる妙な間合いは『少女ムシェット』だろう。そしてハッキリと、確信犯的にブレッソンを意識していると感じたのは、火炙りにされる場面であった。構図があからさまに『ジャンヌ・ダルク裁判』のアレなのである。ただ、それを観て私はゲンナリしてしまった。単に印象的な火炙りの構図を真似ているに過ぎず、再現するなら本質レベルにまで迫ってほしかったと感じたからだ。『ジャンヌ・ダルク裁判』では、処刑場に歩くジャンヌ・ダルクの足こそが重要だ。ただ歩いている彼女の場面。そこには転ばせようとする者、群衆の影がチラつく。死ぬ宿命だと分かっていても前進する彼女がいるからこそ、火炙りにカタルシスが起きるわけである。それを、安易な再現と奇跡と思しき演出で描いてしまっているところにモヤモヤするのだ。

全体的に退屈であり唯一、突然シッチェス映画祭出品作のようなアクションに化けるところ意外面白さはなかったかなと感じた。今回NHK短縮版で観たが、第35回東京国際映画祭で観ても評価は変わらないだろう。

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※映画.comより画像引用

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