『砂利道』父親の呪縛に対する足掻き

砂利道(2021)
原題:جاده خاکی
英題:Hit the Road

監督:パナー・パナヒ
出演:Pantea Panahiha、Hassan Madjooni etc

評価:60点

おはようございます、チェ・ブンブンです。

第22回東京フィルメックスで観逃していたパナー・パナヒ監督『砂利道』を観た。パナー・パナヒはイラン映画の巨匠ジャファル・パナヒの息子であり本作が長編デビュー作となる。実際に観ると、父の影響から逃れようと足掻いている形跡があった。

『砂利道』あらすじ

ロードトリップに出ている4人家族と1匹の犬。大はしゃぎする幼い弟を尻目に、他の3人は心に口には出せない何かを抱えている……。イランの巨匠ジャファル・パナヒの息子パナーの長編デビュー作。カンヌ映画祭監督週間でワールドプレミア上映された。

※第22回東京フィルメックスより引用

父親の呪縛に対する足掻き

パナー・パナヒデビュー作は、ブランドン・クローネンバーグを彷彿とさせる足掻きの連続であった。父ジャファル・パナヒが師匠アッバス・キアロスタミ『10話』の手法を使い、軟禁状態でありながら軽妙でかつ社会批判に満ちた映画を撮り続け、自らの伝統芸へと昇華させた。『砂利道』はそんな父親の影響を露骨に受けている。映画の大半を車内で展開する。車の中では人と人が密接に関わらざる得ない。必然と親密な会話が生まれる。これを描こうとしているのだが、車輪の再開発のように見えてしまう。特に、ジャファル・パナヒの作風をもっとマイルドにしようとするが『人生タクシー』の域にまで達していないところをみると余計そう感じてしまう。デビュー作で父親と同じ作風、同じ土台に乗るのは悪手だと思う。

とはいえ、創意工夫は評価すべきである。車の前で休憩する男。車内ではおじいさんが杖でビニール袋を取ろうとする。アクションだけで情緒的な物語が紡がれる。

また、終盤にかけて映画は自由になる。宇宙空間へと飛び出したり、少年のミュージカルがバキバキに決まった画の中で展開される。超絶ロングショット、平面な画の中で物語られる様子は良かった。これは次回作に期待である。恐らく、車の呪縛から解き放たれれば、パナー・パナヒ監督は面白い映画を生み出せると思われる。

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※第22回東京フィルメックスより画像引用