“Ç”ベルリン国際映画祭金熊賞受賞パナヒ最新作「人生タクシー」東京フィルメックスにて

タクシー(TAXI)

TAXI JAFAR PANAHI

監督:ジャファル・パナヒ
出演:ジャファル・パナヒetc

評価:95点

東京フィルメックス二日目行って参りました。
今回扱うのは、本年度ベルリン国際映画祭で
見事金熊賞を仕留めたイラン映画「タクシー」だ。

映画好きに支えられゲリラ撮影!パナヒのすご技

本作、「タクシー」の監督ジャファル・パナヒは
かつてアッバス・キアロスタミの元で活動し、
「白い風船」「鏡」等世界のクリエーターを唸らせる
作品を作っていた。
しかしながら、「チャドルと生きる」「オフサイド・ガールズ」
どちらも主力映画祭で受賞を果たすものの、
イラン政府から目をつけられ20年間映画制作禁止令が
発令され、2010年に逮捕。
軟禁状態にあった。
それでも、映画を作りたい彼はアパートの一室で
友人と力を合わせて極秘で作り、
USBで輸送して世界の映画人を
唸らせる「これは映画ではない」を作った。

それから4年、またしてもトンデモナイ作品を作り出した。
今回、パナヒはタクシー運転手になりすまし、
テヘランの街をうろついて人々をピックアップ
そして話を聞くというストーリーだ。

こう聞くとドキュメンタリーだと思うかも
知れない。シリアスな話を延々と聞かされて
重そうと思うかも知れない。
確かにシリアスな部分もあるし、ドキュメンタリーっぽい
作りだ。しかし、これが抱腹絶倒で笑えるコメディなのだ。
そしてコメディであると同時にサスペンスあり、
ホラーありのインド映画か!と思う程あまたの
物語が82分の中にねじ込まれている。

カメラワークや、ほんのちょっとした仕掛け
(血だらけのけが人を運んだのに、
次のシーンで車内がめっちゃ綺麗になっている)
でこれはドキュメンタリーではないことが分かる。
しかし、どこまでがリアルでどこまでがやらせかが
分からない程人間が生きている。そして物語が
出来すぎている。

そう、この作品はもう既にそんなことはどうでも
いいのだ。パナヒが劇中で何度も語る
「映画や本は既に作られたモノだ。
題材は他の所にある。」

まさに本作ではタクシーの車内に注目を当て、
なかなか観ることの出来ないテヘランの
タクシー事情からイランを語らせている。

先生、泥棒、病人、子ども

やらせかどうかは分からないが、
はっきり分かるのは、出演者は
皆一般人だと言うことだ。

イランのタクシーはバスのようで、
普通に途中乗車・相乗り普通である。
そして初対面にも関わらず、
先生である女性と自称フリーランスの
男が死刑制度についてディスカッションしている。
そして、途中から映画のDVDの密売業者の人が
乗り合わせる。

アメリカはよく人種のサラダボウルと
比喩されるが、まさにこのタクシー内は
業者のサラダボウルである。

そして、パナヒは時に距離を置き、
時に相手に質問する。
この駆け引きが非常に落語的だ。
パナヒの子どもまで登場し、
子どもの純粋だが皮肉じみた
発言にたじたじになる滑稽さは
まさに昔、浅草の寄席で落語を
観た時のような心地よさを与える。

それでもって終盤、「捕まるんじゃね?」
と思う政治的発言がバンバン飛び交い、
衝撃的なラストを迎える。

なるほど金熊賞を獲ったのも納得である。
ここまで、ユニークな手法で
映画に対する愛情をぶつけられたら
拍手なしではいられない。
イランが認めていないため、
微妙なところだが次回アカデミー賞
外国語映画賞には是非とも
ノミネートして欲しいものだ。
そして、ヴェネチア、ベルリンで金賞を
受賞したパナヒ監督次回作はカンヌで
是非ともパルムドールを獲って欲しい。

そして日本公開も決まってほしいな~
2017年4月15日より
新宿武蔵野館にて公開決定!!


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