カマグロガ(2020)
Camagroga
監督:アルフォンソ・アマドル
評価:60点
おはようございます、チェ・ブンブンです。
山形国際ドキュメンタリー映画祭で『カマグロガ』を観ました。スペイン・バレンシア地方の農業を捉えたドキュメンタリーですが、Twitterで評判が高かったので観てみました。
『カマグロガ』概要
スペイン、灌漑農業の盛んなバレンシア地方の都市近郊で、古代エジプト時代から食用にされてきたタイガーナッツを代々生産してきた農家。深いしわが刻まれた顔と分厚い手が目を引くアントニオと寡黙な娘のインマが、営々と農作業を続ける姿を1年間丁寧に追った記録。周辺には開発の波が押し寄せ後継者も減っているが、ビデオカメラで家業を撮影し小学校で発表するマルクと、その隣で農家の幸福感を語るインマの顔は、仕事への誇りに満ちている。時代の流れに抗いながら土を耕し続ける農家としての矜恃が、この土地の歴史とともに伝わってくる。
※山形国際ドキュメンタリー映画祭サイトより引用
朽ちゆく文化の中で
干し草が焼かれる。業火の中で、茶は緑へと変容を遂げていく。膨大なタイガーナッツを収穫する。子どもも仕事に参加し、広い空間にナッツを散りばめていく。開発の波がジワジワ押し寄せ、かつては仲間も多かったこの地域に終焉が訪れている。だが、一日中デスクにかじりつく労働から逃れるように農業を営み自由を手にした一家は、稼ぎこそそんなに多くないが自然との対話の中で人生を豊かにしようとする。
そんな様子を子どもはカメラに撮り、また学校の授業で仕事の詳細が語られることで歴史の深みが増していく。本作は狭い画郭の中、写真のようにタイガーナッツ栽培の様子が収められる。そのポートレートの美しさに息をのむ。
一方で、自由を手にしようとした男の話なのに、閉塞感を感じるこの画郭でよいものなのかと疑問に思う。さらには、本祭の序盤で観たとっ散らかったドキュメンタリー『丸八やたら漬 Komian』は本作のように淡々と終焉を見つめた方が良かったのではと感じる。
評判に反してそこまで刺さりませんでしたが、映画祭ならではの作品に満足しました。
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※山形国際ドキュメンタリー映画祭サイトより画像引用