【Netflix】『AIに潜む偏見: 人工知能における公平とは』複製された偏見

AIに潜む偏見: 人工知能における公平とは(2020)
CODED BIAS

監督:シャリニィ・カンティア

評価:65点

おはようございます、チェ・ブンブンです。

昨年末、五次元アリクイ(@arikuigo)さんの日本未公開映画を紹介するイベントで『CODED BIAS』の存在を知りました。本作は我々がついつい盲信してしまうAIに潜む偏見を暴いたドキュメンタリー。海外の2020年ベスト映画でもチラホラ名が上がっているドキュメンタリーである。そんな本作はNetflixにて配信されていました。邦題こそ『AIに潜む偏見: 人工知能における公平とは』と新書かNHKの特番のようなものですが、あの『CODED BIAS』です。実際に観てみました。

『AIに潜む偏見: 人工知能における公平とは』概要

MITメディア・ラボのジョイ・ブオラムウィーニが暴き出した顔認識技術の問題点。現代社会の基盤であるアルゴリズムに潜む偏見を検証するドキュメンタリー。

※Netfflixより引用

複製された偏見

「機械的」と聞いて何を思い浮かべるであろうか?

恐らく、アリゴリズムに沿って規則正しく行われることを想像するだろう。そして、そのイメージはミスをしたり時に恣意的になる人間の行動より優れていると思ってしまうであろう。しかしながら、膨大な情報を機械的に処理していくAIが魅せる世界は意外と恣意的なものだったりする。

正直本ドキュメンタリーは、映画としての面白さはない。画や編集による魅力がないのだ。また、次々と明らかにされていく強烈な内容の取捨選択を行えておらず、Facebookと政治の関係性など「AIに潜む偏見」のテーマとはズレた挿話を挟んでいたりする。しかしながら、本作は我々一般市民が気づいた頃には手遅れになっているであろう真実を非エンジニアでも分かりやすく解説している点、2020年代重要なドキュメンタリー映画である。

MITメディア・ラボで学ぶジョイ・ブオラムウィーニはSFから着想を得て作品制作を行う課題に顔認証技術を採用する。しかし、黒人である彼女の顔は中々認識してくれない。調査をする中で、女性よりも男性、有色人種よりも白人の方がAIは認識しやすい事実に辿り着く。肌の色が違うぐらいなら物理法則に当てはめれば容易に認識してくれそうなものなのにどうしたことか?ここから彼女の探求の旅は始まる。その中で様々な研究者がAIに潜む偏見の存在に気づきはじめていることを知る。AIは膨大な情報を解析するだけだ。その情報が誤っていれば、誤った結果が出力される。これは意図しないところで起きたりするのだ。

例えば、マイクロソフトはTayというおしゃべりボットをリリースしたのだが、これがドンドンと差別を覚えていき、暴言を吐くようになってしまい公開中止となってしまった。また香港のデモの際に、警察は顔認証技術を活用して、デモ隊の行動を掌握した。同様に、中国ではアプリを使用するために顔認証を必要とし、そのデータを国が管理している。実はゆっくりと全体主義が進んでいるのではないだろうか?

企業はAIを活用し、広告を打ち出したりする。個人の行動が監視され掌握されていく。政府もまた、人をコントロールするためにデータを活用していく。マクロで政治的な動きが「機械的」という盾に隠れて、「恣意的」に情報を操作して人々をコントロールしているのではないだろうか?

人間の偏見が複製されているだけなのだ。

これは人々が異変に気づいた時にはもう手遅れになっているだろう。何故ならば、気づいた時にはサービスが生活と密着し離れなくなっているからだ。

Big Brother is watching you

とはまさしくこのことだなと痛感したドキュメンタリーでした。

※imdbより画像引用

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