【ブンブンシネマランキング2018】新作部門第1位は『バーフバリ 王の凱旋』ジェイ!マヒシュマティ!

10.川沿いのホテル(HOTEL BY THE RIVER)

監督:ホン・サンス
出演:キ・ジュボン、キム・ミニ、ソン・ソンミetc
鑑賞環境:東京FILMEX

ホン・サンスはとっても変な監督だ。というのも彼の作る作品は一貫してクズ男と女の会話劇だ。最近は、愛するキム・ミニを撮る映画となっており、まるでちびまる子ちゃんにおけるたまちゃんのお父さんのような眼差しで彼はキム・ミニを撮っている。なんだけれども、毎回別次元の宇宙を魅せてくれるので驚かずにはいられない。だって、エリック・ロメールやジャック・ロジエの作品みたいに会話しているだけなんだよ。なのに、ボーマン船長のように宇宙の彼方を観てしまうのだ。すっかりホン・サンスのファンとなったブンブンですが、毎回ベストテンに入れるほどの作品とは出会わなかった。それが今回出会ってしまったのだ。東京フィルメックスで。今回のフィルメックスでは他に彼の『草の葉

』が上映され、こちらの方が評判高かったのですが、ブンブンは断然こちら。なんたって、言葉の杖を振る詩人が美人を前に言葉の杖をへし折られる話、ブンブン分かり過ぎて鼻血が出そうになったのだ。

もちろん真面目な話をすると、本作においてショットの切り返しがとてつもなく上手い。カフェの仕切りと外を壁にして父、兄弟、美女2人を配置する。そして3つのポイントを行き来することで、各登場人物少数対少数の秘密を観客は神の目として知ることとなる。そして岡目八目、互いの思惑を知りながら、恋のシーソーゲーム、いや陣取り合戦を繰り広げていく様の緊迫感に舌鼓を打ちます。ホテルの中をゆらゆらと動く天使は時に悪魔として男を翻弄する。なんて悪いやつなんだ。そしてなんて可愛いいんだ。ブンブンの世界に、この天使が舞い降りなかったことにホッ胸をなでおろした。

『川沿いのホテル』に関するブログ記事

【東京フィルメックス ネタバレ考察】『川沿いのホテル』ホン・サンス、空間術の妙

9.バーニング 劇場版(Burning)

監督:イ・チャンドン
出演:ユ・アイン、スティーヴン・ユァン、チョン・ジョンソetc
鑑賞環境:釜山国際映画祭

高校時代、イ・チャンドンの『ポエトリー』と『シークレット・サンシャイン』に惹かれたブンブンにとって久しぶりの新作に胸が踊った。しかも、村上春樹の『納屋を焼く』の映画化だ。面白くないわけがない。実際に観てみると、イ・チャンドンは全く衰えを魅せないトンデモ傑作を放った。実はこの作品補足すると、鑑賞直後はそこまで評価は高くないでしょう。ただ、時間が経つほど、細かい穴が埋まっていき、ドンドン本作の凄さが見えてきます。前半90分は、原作に忠実に描く。精々、納屋がビニールハウスに変わったぐらいだ。差は。そう、本作の本編は90分後、村上春樹が描かなかったところにある。イ・チャンドンが格差社会で地の底からギャツビーに羨望を抱き、妬む男として主人公を肉付けする。そして、これぞおいらの『着信アリ』だと言いたげな、あまりに怖いスマホを使った演出に痺れ、猫に涙する。田舎者の男は何故、車で時間をかけて都会に来るのか?そういったところから行間を埋めていくと、これは決して韓国だけの問題ではなく日本にもある現代の嫉妬の物語だと気づくことでしょう。日本公開は2月。是非挑戦してみてください。

『バーニング 劇場版』に関するブログ記事

【釜山国際映画祭・ネタバレなし】『バーニング劇場版』村上春樹『納屋を焼く』のその先…

【釜山国際映画祭・ネタバレ】『バーニング劇場版(BURNING)』イ・チャンドンは村上春樹の原作を『華麗なるギャツビー』と解釈した

【ネタバレ】『納屋を焼く』イ・チャンドン版を観る前に村上春樹の原作を読んでみた

【ネタバレ考察】『アンダー・ザ・シルバー・レイク』と『バーニング劇場版(BURNING)』は同じ映画だった!

8.ロング・デイズ・ジャーニー、イントゥ・ナイト(Long Day’s Journey into Night)

監督:ビー・ガン
出演:Tang Wei,Sylvia Chang etc
鑑賞環境:東京 FILMEX

映画の真ん中で3Dメガネを掛ける?なんちゅう映画だ?と東京フィルメックスで話題になった新鋭ビー・ガンの新作。彷徨う男は、故郷で女の面影を追う。そして彼女との思い出、人生のターニングポイントがフラッシュバックする。男がひたすらに愛する女の面影を追い続ける前半。そして、思わぬ形で観客は3Dメガネを掛けるよう促され、恐る恐るメガネを掛け待ち受ける夢の世界。本作は、3Dメガネを観客にどのようにして掛けさせるのかという問いに対し、あまりにカッコイイ回答を用意した時点で5億点の作品であることは保証された。そして3Dは観客に現実よりもリアルな世界を魅せてくれる。監督はアン・リーの3D映画『ビリー・リンの永遠の一日』からインスパイア受けて本作を作ったとのことだが、なるほど、3Dには現実よりも現実に見える虚像を創りだせるんだなと納得される。1時間ノンストップワンカットで魅せる浮遊感ある夢の世界。今敏の『パプリカ』のようにピョンピョン画面を飛び回り、消えたり現れたりする女の虚像に、ブンブンすらかつて愛した女性の面影を重ね合わせ失神しそうになりながら見えぬ夢の出口を探した。

『ロング・デイズ・ジャーニー、イントゥ・ナイト』に関するブログ記事

【東京フィルメックス ネタバレなし】『ロング・デイズ、イントゥ・ナイト』途中から3Dに?新感覚ノワール

7.君の名前で僕を呼んで(CALL ME BY YOUR NAME)

監督:ルカ・グァダニーノ
出演:アーミー・ハマー、ティモシー・シャラメ、マイケル・スタールバーグetc
鑑賞環境:TOHOシネマズ 海老名

エリオ…嗚呼エリオ…本作のオープニングを観て、大傑作だと思うまでに時間はかからなかった。小鳥のように囀り、アイスピックのように観るものの心に刺す音楽、耽美的な世界で、囁き合う少年とおっさん。ブンブンの中でのおっさんずラブはこれでした。決してこれはゲイ映画、BL映画ではない。性別の垣根を超えて、本能的愛に抗い、自分を殺してきた男が自分を許すまでの話である。通常この手の映画では、いや異性愛を描いた作品でもそうだが、必ず愛を止める邪魔者的存在が現れる。本作には一切登場しない。少年の愛を家族は知っているし、受容する。少年は背徳感込みで彼を愛していたが、全て見透かされていた。そんな物語、通常だったら面白みに欠けるであろう。では何故傑作なのか?それは自分の愛に抱く気持ちとの闘いを描いているからだ。『寝ても覚めても』が本能か、理性かという恋愛哲学について自問自答していたの同様、本作も徹底的に自問自答する。そして、少年、おっさん、おじいさんという3つの男の人生を通じて恋の円環構造が出来上がる。その華麗なる語り口にブンブンはメロメロになってしまいました。

『君の名前で僕を呼んで』に関するブログ記事

【ネタバレ解説】『君の名前で僕を呼んで』忍れど 死のブレード乱れ 苦き淡

6.The House That Jack Built

監督:ラース・フォン・トリアー
出演:ライリー・キーオ、マット・ディロン、ソフィエ・グロベル、ブルーノ・ガンツ、ユマ・サーマンetc
鑑賞環境:釜山国際映画祭

カンヌは何を血迷ったのだろうか。『メランコリア』でナチス擁護発言をして出禁になったラース・フォン・トリアーの新作をうっかり招いてしまった。出禁を解除してしまった。ラース・フォン・トリアーが出禁ごときで考えを改めるなんてするはずはない(表面上は謝っても)。何たって、出禁後に作った作品が全編セクハラ5時間以上にも渡るエロ叙事詩『ニンフォマニアック』で、これはベルリンに出品している。それも事前に「エロ叙事詩作るよん☆」と犯行声明を出し。今回の作品も例のごとく、「次は殺人鬼について描くぜ!」とカール・テオドール・ドライヤーの『吸血鬼』のモノマネしながら嬉々と声明を出していた。ロクなことが起きるはずがないのに、カンヌは本作を受け入れ、案の定途中退出者100人近く出すホロコーストとなった。

そんな彼の新作『The House That Jack Built』は、昨今世界中で広がる映画の中のポリコレ論争に対して「うるせー」という作品に見えるのだが、トリアーがナイフを刺したのは、ディズニーやマーベル映画のようなお行儀の良いポリコレ配慮映画に「ケッ」と唾を吐きかけるような連中だった。本作では表現の限界に挑戦している。いくら残忍残虐なシーンに慣れている観客でも、悲鳴をあげることでしょう。釜山国際映画祭で、血に飢えた屈強な観客に囲まれた状態でブンブンは観たのだが、ちらほら途中退場する方がいました。本作は、我々の想像を絶する世界を魅せてくれます。てっきり、『ニンフォマニアック』でネタを出し切ったように思い込んでも。それはあくまで思い込みだ。そんなことはない。何を食べたらその発想になるのだ?ひょっとして、ラース・フォン・トリアーは本当に人を殺しているのではと思う程の地獄絵図に爆笑し、そして震え上がる。後半1時間は、観客のHPがマイナス5億になるまで魂を貪り、あまりにシュールでシニカルなエンディングとエンドロールに痺れる。モラルの限界点を超えることで、モラルについてようやく語れる。トリアー独自の世界観に打ちのめされました。ディズニーやマーベルの安定したクオリティで社会問題に切り込む(黒人や女性差別問題には取り組んでいてもアジア人差別については、全然着手できていない気がするが)作品ももちろん面白いし、好きではありますが、ブンブンはダークサイドを選びました。いくら相手がラース・フォン・トリアー好きでも自分の口からはオススメできないが、地を這って、釜山のホールに行った甲斐がありました。

『The House That Jack Built』に関するブログ記事

【釜山国際映画祭・ネタバレなし】『The House that Jack Built』《最悪》のエレクトリカルパレード

【釜山国際映画祭・ネタバレ】『The House that Jack Built』トリアー流、ドナルド・トランプ、ポリコレ批判

→BACK:20位~16位

→BACK:15位~11位

→NEXT:5位~1位

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です