『LE CONCOURS』ゴダールが落第!フランス名門映画学校の入試に迫る傑作ドキュメンタリー

LE CONCOURS(2016)

監督:クレール・シモン

評価:95点

フランスのフレデリック・ワイズマンと呼んで注目しているドキュメンタリー作家クレール・シモン。日本では、カイエ・デュ・シネマ週間で『夢が作られる森

』が上映されたきり、しかも英語字幕のみでの上映だったので、ほとんど知られていない監督なのですが、ブンブンは密かに注目している。そして、長らく鑑賞したかった作品”LE CONCOURS”のDVDを入手したので観ました。

『LE CONCOURS』概要

フランスの名門映画学校≪La Fémis≫。アラン・レネやフランソワ・オゾン、アンジェイ・ズラウスキーにアルノー・デプレシャンと個性派巨匠を次々と排出しているこの名門学校にカメラは潜入。その矛先は、合格者を選出する試験官に向けられた。記述、面接で判断される入試。対立する試験官たち。我々の知られざる裏側が明らかになる…

ゴダールが落第!フランス名門映画学校の入試に迫る傑作ドキュメンタリー

本作は、ゴダールが落第したことでも有名なフランスの名門映画学校≪La Fémis≫の入学試験についてのドキュメンタリーだ。冒頭でクレール・シモンはフランスのフレデリック・ワイズマンと語っていることから、ナレーションや説明的シーンはなく、淡々と入学試験の裏側を撮っている。

これがめちゃくちゃ面白かった。一次試験の会場に無数の受験生が集まる。係が誘導するのだが、チラホラ必要書類に不備がある人が散見される。フランスなので、自己主張が激しく揉めに揉めるがなんとか試験は開始される。

なんとこの時の課題は黒沢清の『贖罪』。結婚式のシーンから「儀式、ツール、目に見えないもの」について持論を展開していくのだ。試験時間は3時間。日本とは違い、フランスは論じることを重要視しており、バカロレアでは数学の試験ですら論述形式となっている。会場には係員がいて、メモ書き用の紙を必要に応じて渡している。そして、ジュースを飲んだり、飴を舐めながら試験用紙を埋めていく。この場面だけで、日本の試験と180度異なる世界に魅了されます。

そして、試験が終わると試験官が集まり採点をする。当然ながら記述式なので試験官の好みが如実に現れ、激しいディスカッションが展開されるのだ。それも無理ない。試験官は映画監督だったり、脚本家だったり、編集者だったりする。目線が違うのだ。そのズレた視線を、≪La Fémis≫の目指す方向に合わせていくのです。

二次試験は面接。受験生にはオリジナルの物語を持ってきてもらい、それに対して質疑応答をする。カメラが迫ったのは堅物圧迫面接マシーンが試験官の会場。退屈そうに受験生の物語を聞く、そしてせわしなく「彼は何歳なの?」「背景は?」「そこをもう少し掘り下げて教えて」と詰問するのだ。そして、受験生のいないところで、「あれはダメだ」「あいつはシネフィルだな。ロベール・ブレッソンの手について語り始めたぞ」「ニコラス・ウィンディング・レフンは好きだが、レフン好きを採用するのはどうかなー」と愚痴を溢す。受験生にとって試験官は閻魔大王みたいな存在だが、試験官も人間だ。人間が滲みでる。

また、試験官は採点する中で、とても想像力豊かで才能の片鱗を魅せる黒人女性の受験生と出会う。あまりに魅力的なので、「好きな映画は?最近観た映画は?」と訊くのだが、なんと全く映画を観ておらず答えられない事態が発生するのだ。

本作はありそうでなかった映画学校の受験、それも試験官の目線に焦点をあてた。その視点の完全勝利といえよう。多数の試験官の議論でもって選ばれるシステムが果たして未来の巨匠、傑作を生み出せるのか?という映画だけでなく、面接試験全体の批評にも繋がっており見応え抜群な作品でした。

アンスティチュ・フランセかなんかで上映されることを祈ります。

余談

本作の筆記試験の内容は≪La Fémis≫のサイトにて掲載されています。今年は、一般部門と国際部門で作品が分かれているようで、一般部門はカイエ・デュ・シネマベストテンで選出された『Paul Sanchez est revenu!』

のPatricia Mazuy監督作品『Travolta et moi』。国際部門(留学生?)ではマーティン・スコセッシの『カジノ』を鑑賞し、「食欲、ネットワーク、繰り返し」について分析するのが課題となっていました。非常に面白いのでよかったら覗いてみてください。

≪La Fémis≫入試過去問

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