地球の急ぎ方:秘境にある映画館、御成座に行ってみた(GW旅行記 前編)

GWの過ごし方

ゴールデンウィークも残すところあと1日となりました。皆さんはどのようなGWをお過ごしでしょうか?友達とバーベキューに行ったり、美術館に行ったり、はたまた家でゲームに明け暮れている方もいるでしょう。

ところでGWが元々映画業界用語だったことを知っているだろうか?

語源由来辞典によると、次のように解説されています。

ゴールデンウィークは、1951年(昭和26)、現在のゴールデンウィークにあたる期間に上映された映画『自由学校』が正月やお盆興行よりヒットしたのを期に、多くの人に見てもらおうと、当時、大映専務出会った松山英夫氏による造語で和製英語。

呼称の由来は、ラジオで最も聴取率の高い時間帯「ゴールデンタイム」に習ったもので、当初は「黄金週間」と言われていたが、インパクトに欠けることから「ゴールデンウィーク」となった。

映画オタクとして、GWらしい活動をしたい。でも、いつも通りTOHOシネマズで3本立てするのも、MUBIで激レア映画を観まくるのも面白くない。そう考えたブンブンは、ちょっと遠出し、秋田県大館市にある映画館《御成座》に行くことにしました。

御成座とは?

1952年に洋画専門の映画館としてオープンし、2005年まで営業していた映画館。一度は閉館したものの、ユニークな巡り合わせで再建した。電気通信業を営む(株)日本コンプリートの代表・切替桂さん一家が住居だと思って買った場所が、映画館、そう御成座だったのだ。住居として住む筈が、本格的な映画館として2014年7月18日から再始動している他の劇場にはない軌跡を歩んでいるのだ。

ブンブンがこの映画館を知ったのは2014年の秋。丁度フランス留学中にTwitterで御成座の稀有な再建話を知った。しかし、すぐに忘れて数年が経った。


そして、去年、Twitterの映画クラスタ界隈で「うさぎのいる映画館がある」と話題になった。そう、あの御成座だったのだ。御成座のTwitterアカウントを見ると、《てっぴー》という白うさぎが劇場を闊歩しているではありませんか。そして、東京都内のミニシアターなんかと比べ物にならないぐらいTwitterを有効活用しているではありませんか!しかも、2018年4月23日の「激レアさんを連れてきた。(テレビ朝日)」でこの劇場が紹介されているではありませんか!更には、最新のトレンドにいち早く対応できる機動力も持っている。

例えば、先日、インド映画『恋する輪廻 オーム・シャンティ・オーム』の版権が切れ、円盤化も劇場上映もできなくなるというニュースがTwitterで出回った際に、急遽、御成座でも上映が決まった。この俊敏さは凄まじかった。

これは、行きたい!非常に行きたいぞ!とブンブンは御成座を目指し東京から630kmの旅に出たのでした…

↑松尾芭蕉が江戸から御成座に向かった場合、5日と10時間かかるそうです。

※御成座公式サイト

いざ大館へ

御成座のある大館へ行くには、まず東北新幹線に乗って盛岡に行く必要があります。始発の《こまち》に乗って盛岡に向かいます。

↑朝食にまぐろいくら弁当を食す。

盛岡駅についたら、今度はバスで大館に向かいます。バスは1時間に1本ペースで出ています。大人2380円です。乗車券を窓口で買っている時、ふと懐かしくなりました。留学中、クロアチアのザグレブから始発の列車に乗ってスロベニアのポストイナ鍾乳洞へ行ったことがあり、その時も途中でバスに乗り換えた。

久しぶりにハードな旅をしている感があり、テンションが上がってきました。

“Ç”地球の急ぎ方~スロベニア上陸作戦編 前編:ザグレブからポストイナへ~

“Ç”地球の急ぎ方~スロベニア上陸作戦編 後編:いざポストイナ鍾乳洞~

↑今時の高速バスって、車内にコンセントがついているんですね。

↑車窓から、巨大なスイカが見えましたw

大館到着

5時間程かけてようやく大館に到着しました。

すると、何やらどこかで見た記憶がある像が私の視界に入ってきました。近づいて見ると…

HACHI(リチャード・ギアの口調で)…あのハチ公ではありませんか。渋谷にあるアレですよ。どうやら、ハチは大館出身の秋田犬だそうで、大館のシンボルとして町を賑わせているようだ。駅の隣には、秋田犬と触れ合える施設があったりします。少し駅から歩いた場所に、秋田犬会館なんて場所もあります。

御成座に到着


大館は、東京や神奈川とは全く違った風景が広がっていました。まるで、タルコフスキーやアンゲロプロスの世界に紛れ込んでしまったかのような不思議な景色です。自分好みの風景にワクワクしてきます。

5分程歩くと、映画館が見えてきました。この日は、ブンブンシネマランキング2017新作洋画部門1位作品でもある『希望のかなた

』が上映されていました。しかも嬉しいことに35mmフィルム上映だ。

ここで、劇場前の看板に注目して下さい。そうです。手描きの看板です。昭和時代、沢山いた手描き看板職人も、時代の流れで段々といなくなり、今や絶滅危惧種のようになってしまった手描き看板。


東京だとほとんど見られない代物が、眼前に広がっていました。実は、ブンブン手描き看板を見るのは初めて。しかも自分の大好きな映画の看板が手描きだったので興奮してきました。

↑映画館の向かいに駐車場があります。

それではいざ中へ…

入場料

大人:1300円
シニア:1000円
大学生以下:900円
高校生以下:800円
中学生以下:500円
回数券(5枚):5000円
見学:無料

また、イベント等で施設を貸し出すサービスも行なっているとのこと。
御成座の施設利用料等詳細はコチラ

そこは秘密基地だった

入ると、圧倒的な情報量に困惑します。雑然と設置されたソファー、何故か飾られてあるエアガン、VHSの壁、サイン、映写機、うさぎ小屋etc 東京の映画館は、ミニシアターも含め、ほとんどが綺麗に整理整頓され、チケットはインターネット発見方式になっている。そんな環境に慣れ親しんだブンブンにとって衝撃的だった。そして、同時に秘密基地に来たかのようなノスタルジー、友達の家に遊びに来たかのような安心感がそこにありました。

通路には様々な展示が置かれています。

歴代の手描き看板も見ることができます。なんと、スコリモフスキ監督の『早春

』の手描き看板があるではありませんか。青と黒の絶妙なコントラストを完璧に再現しています。

御成座から出土した、自転車も展示されています。フィルム缶を運ぶ用だそうです。

ロマン・ポランスキーやジャック・ドゥミのレトロなポスターも飾ってありました。

映像コレクター必見、VHSこれくしょん。よくよく観察すると、『気功術養成講座』なんて謎めいた代物を発見することができます。これだけ見ていても飽きません。

入口に展示されているのは、東京航空計器製 カーボン式(アーク式)映写機 ニュースターTYPE SP-1です。今や、デジタル上映。映写機も、自動制御されているので映写技師は不要となった。しかし、昔の映画はフィルムで上映されており、數十分ごとにフィルムを差し替える作業が必要だった。忘れられつつある、映画の歴史をこの映写機は思い出させてくれます。

コンセッションはこんな感じです。ビールはもちろん、何故かカップ麺や飴ちゃん、更には大館の土産まで販売していました。守備範囲の広さに圧倒されました。

うさぎのてっぴーもいました。この日は、ナマハゲ顔出し看板の裏で爆睡していました。本当に、放し飼いになっています。てっぴーの邪魔にならないように写真に収めました(フラッシュ撮影でなければ、自由に撮ることができます)。うさぎ好きにはたまりません♡

劇場内

さて、いざ劇場内へ!

200席のキャパシティだけに広々としています。雰囲気は、広島のシネマ尾道

。ライブ会場に近い音の反響が楽しめる造りになっています。

座ってみるとこんな感じ。傾斜は少ないものの、スクリーンは結構上なので、前の座席に人が座っていても大丈夫そうです。

ただ、シネマ尾道とハッキリと違うのは、何故か中央にプロジェクターと巨大なマッサージチェアが鎮座しているところ。一応、2Fに映写室があり、今回の35mmフィルム上映は映写室から映像が流れていました。

『希望のかなた』35mmフィルム上映感想

『希望のかなた』を今回フィルムで観て、感じたのは「カウリスマキ映画とフィルムのザラザラ感は相性抜群」だということ。現代劇にも関わらず、警察署にて調書を取るシーンで何故かタイプライターが使われる場面も、フィルムだと気にならない。いや、現代のメカと昔のメカの不協和音がフィルムによって更に際立ち、アキ・カウリスマキ映画としての《世界》が最大限に引き出されると言った方が正しい。フィルムのザラザラ感も、めちゃくちゃカッコ良く、テンションが上がります。ちなみに、映画上映前のCMもフィルムになっていました(当然っちゃ当然なのだが)。キャットフードのCM、良くわからないアート系CM、どちらも全く知らない。いつの時代のCMだよと思うような空気感が本編上映前から漂っていました。

それにしても、2度目に観ると、シリア難民役のシェルワン・ハジが山田孝之にしか見えない。なんで、最初に鑑賞した時気づかなかったのだろうと思うほどに山田孝之でしたw

最後に…

国内外問わず、旅行した時に、必ず映画館巡りをするブンブン。よく友だちから、「映画館が観光スポット??」と好奇な目で見られるが、やはり映画はいつどこで観るかが重要。そして、映画館で映画を観るという体験は素晴らしい経験価値を自分に生むと考えている。

だから、今回ALL THE WAY、御成座で映画を観る為だけに大館に来た甲斐はありました。もし、ブンブンがスティーブン・シュナイダーのように『死ぬまでに行きたい映画館101』を作るのなら、御成座は必ず入れるだろう。

なので、時間に余裕がある映画ファンは是非、秋田県大館市にある秘境映画館・御成座へ遊びに来てください!

↑『希望のかなた』は2018年5月13日(日)までの上映。5月18日(金)からは、『泳ぎすぎた夜』の上映となっています。

※御成座公式サイト

※地球の急ぎ方:大滝温泉に行ってみた(GW 旅行記 後編)

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