『スパイダー/少年は蜘蛛にキスをする』運動の停滞は人生の停滞

スパイダー/少年は蜘蛛にキスをする(2002)
SPIDER

監督:デヴィッド・クローネンバーグ
出演:レイフ・ファインズ、ミランダ・リチャードソン、ガブリエル・バーンetc

評価:70点

おはようございます、チェ・ブンブンです。

デヴィッド・クローネンバーグの作品はたいてい観ているのだが、この作品だけ抜けていたので今回観てみることにした。クローネンバーグらしいテーマの作品であった。

『スパイダー/少年は蜘蛛にキスをする』あらすじ

20数年に渡り精神病院に入院していた男が退院、少年時代を過ごした町に帰郷する。その日から、彼の脳裏に少年時代の記憶が少しずつ甦ってくる。「そうだ、僕の愛する母は、父とその愛人に殺されたのだ……」。「グロテスク」などで知られる英国のカルト作家パトリック・マグラアの同名小説(ハヤカワepi文庫)を、「裸のランチ」「クラッシュ」とカルト小説の映画化に挑戦してきたクローネンバーグ監督が映画化。
映画.comより引用

運動の停滞は人生の停滞

列車が駅に到着する。大勢の人が降り立ち、自分の目的地を目指している中でひとりぽつんと立ち尽くし、メモを見ている男がいる。列車と映画の相性はよく、物語を運ぶ舞台装置として機能している。列車の到着は物語の終わりであるが人生は続く。それを強調したオープニングを踏まえると、本作は運動の停滞でもって人生の停滞を表現していることが分かる。

彼は精神病院で暮らすこととなる。シャツを何枚も着込みながらなにかにおびえている。それを中身が空っぽな人は着飾るといった表現で解説する。だが、本当に彼は空っぽな人間なのだろうか?他者から見た時に空っぽなだけではないだろうか?

映画は彼の象形文字のようなメモ、そして彼が回想し幼少期の自分と重ね合わせる姿を通じて肉付けしていく。幼少期の彼と現在の彼を同時共存させ、蜘蛛の糸のようなものを張り巡らせる運動をシンクロさせていく。それにより、彼の実際の運動と思考を手繰り寄せていくのである。

デヴィッド・クローネンバーグにしては分かりやすすぎるので物足りなさはあれども、興味深い一本であった。

 

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