【考察】『イグジステンズ』中華料理の残骸からぐちゃぐちゃな銃が爆誕するまで

イグジステンズ(1999)
eXistenZ

監督:デヴィッド・クローネンバーグ
出演:ジェニファー・ジェイソン・リー、ジュード・ロウ、イアン・ホルム、ウィレム・デフォーetc

評価:5億点

おはようございます、チェ・ブンブンです。

先日、長年観たいと思っていたデヴィッド・クローネンバーグの『イグジステンズ』を観ました。ぐちゃぐちゃなゲーム機ヴィジュアルとB級感溢れる内容とは裏腹に意外にも難解らしく、巷での評判は悪いのですが、これぞデヴィッド・クローネンバーグの真骨頂と言える大傑作でありました。

『イグジステンズ』あらすじ


未来、人々の娯楽は脊髄に生体ケーブルを直結してプレイする究極のヴァーチャルリアリティ・ゲームだった。ゲーム界のスターである美貌の天才ゲームデザイナー、ゲラーの新作ゲーム“イグジステンズ”の発表会で、ゲラーは小動物の骨でできた銃を持つ男に襲われる。たまたま居合わせた警備員見習いのパイクルは重傷のゲラーを託され、間一髪で混乱する会場から逃げ出した。脊髄の損傷を恐れゲームをプレイしたことがないパイクルだったが、ゲラーに説き伏せられ2人でゲームを始めることになる。
映画.comより引用

中華料理の残骸からぐちゃぐちゃな銃が爆誕するまで

デヴィッド・クローネンバーグ映画はガジェットの造り込みに本気を出し、しかもそれが物語にしっかりとイカされてくるところに好感が持てる。『ザ・フライ』の転送ポッドや『裸のランチ』のトランスフォームするタイプライター、『コズモポリス』のリムジン等々。そんなクローネンバーグワールド史上、最もガジェットに力が入っている作品がこの『イグジステンズ』だ。

ヴァーチャルリアリティゲームの講演会。ジェニファー・ジェイソン・リー演じる天才ゲームデザイナー アレグラ・ゲラーが魅せるのは、臍の緒のようなケーブル。ゲームキューブがドロドロに溶解したようなコントローラーだ。それを10人近い体験者が生々しい手つきで動かして、仮想世界へ誘われる。しかし、そこにぐちゃぐちゃな銃を持った男が乱入し、ゲラーは撃たれてしまうのだ。何とか一命をとりとめた彼女を抱え、警備員のテッド・パイクル(ジュード・ロウ)は逃げる。彼女の傷を手当てすると、歯が出てきた。何と、その銃の弾は《歯》だったのだ。

事態に巻き込まれた彼は、何故かゲラーのゲームマシンが壊れていないか確かめるため、怪しい男からプラグ手術を受け、ゲームの世界に潜入することとなる。

これはクローネンバーグ版『トータル・リコール』だ。ぐちゃぐちゃな銃が登場した段階で、既にこの世界ですら仮想だったのではという疑惑を抱えたまま、男はゲームデザイナーとゲームの世界、更に深い世界へと飛躍していく。そしてそれが現実か否かを確かめるための機能として本作は《痛み》を用意し、肉体に備え付けてあるプラグにプラグを差し込んだり、時には舌を突っ込んだりして触覚が覚醒する度にこれは現実なのではと自分を信じ込ませるのだ。

しかし、仮想現実は五感ですらコントロールされてしまう。2010年代の技術では、モニター越しの映像で触覚を変化させることができる。それをある種予言しているのだ。その幻影を強調させるアイテムとして、そう《ぐちゃぐちゃな銃》が大活躍するのです。

どんなに世界を飛び回っても、何故かぐちゃぐちゃな銃はテッド・パイクルの前に現れるのだ。そしてその反復が彼の無意識を蝕み、何とグロテスクなほど大盛りな中華料理を無意識に貪り食いながらその銃を作り出し、終いには自分の歯を弾丸にしてしまうのです。触覚だけが真実なのだろうか?仮想世界に取り込まれた者は痛みですら外部化され、ゲームに支配されてしまうのではないか?

クローネンバーグは『裸のランチ』におけるノマドワーカー像や『コズモポリス』におけるマスコミが報道する大惨事が他人事に思えてしまうフワフワとした感情といった未来の生活を予言していたのだが、ここでもまた鋭い考察がされていました。しかも本作における黒い板を通じて認証を行う場面は完全に、今のスマホ文化を的中させていて改めてクローネンバーグの天才性に惚れ込みました。

マップ・トゥ・ザ・スターズ』以降5年以上音沙汰ない彼ですが、もうそろそろ新作の発表を期待したいところである。

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