『フェザー/Feathers』お父さん、鶏になっちゃった

フェザー(2021)
Feathers

監督:オマー・エル・ゾーヘアリー
出演:Samy Bassouny,Mohamed Abd El Hady,Fady Mina Fawzy,Demyana Nassar,Abo Sefen Nabil Wesa etc

評価:70点

おはようございます、チェ・ブンブンです。

昨年ブルキナファソで行われたワガドゥグ全アフリカ映画祭で上映された作品『フェザー』。どうやら父親が鶏になってしまう映画らしい。入手したので実際に観てみた。

※なら国際映画祭2022で上映が決まりました。

『フェザー』あらすじ

A family is forced into a period of self-discovery after its authoritarian patriarch is accidentally turned into a chicken by a magician during a children’s birthday party
訳:子供たちの誕生日パーティーで、権威主義的な家長が手品師によって誤ってニワトリに変えられてしまったことから、一家は自分探しの時期に追い込まれる。

IMDbより画像引用

お父さん、鶏になっちゃった

傲慢な父親は画の中心でふんぞりかえりながら、「イクメン」として子どもたちの面倒をみている。実際に面倒な家事育児は妻がやっているだけだ。そんなある日、子どもの誕生日にマジックショーが繰り広げられる。父親が意気揚々と箱に入る。そして鶏に変わる。しかし、鶏から父親に変換することができず、彼は消滅してしまった。恐らく、この鶏が父なんだろう。

本作は、抑制されたテンションで父が消えた世界を描いていく。それはシャンタル・アケルマン『ジャンヌ・ディエルマン ブリュッセル1080、コメルス河畔通り23番地』を彷彿とさせる。傲慢で有害な夫が消えたところで妻は家事育児から解放されることはない。動物を掻っ捌く汚れ仕事を淡々とこなし、役所仕事もこなすのだ。

印象的なのは、窓の外に映る景色だろう。親戚が集まり賑やかな宴。その背に映るのは、地獄のようなドヨンとした風景である。固定されたカメラで、ヒリヒリとした日常を捉えていく。一見、出オチな映画に見えるが、そこにはエジプト社会における女性の閉塞感が凝縮されていた。これは日本も他人事ではない話であろう。

アフリカ映画関連記事

【MUBI】『KETEKE』出産まであと僅か!鴛鴦夫婦は荒野を大爆走!
【アフリカ映画研究】「Samba Traoré」ブルキナファソ映画を観てみた
TIFF2016鑑賞映画15「護送車の中で」護送車の中から観るエジプト98分(最終回)
【カンヌ国際映画祭特集】「掟 Tilaï」審査員特別賞グランプリ受賞のブルキナファソ映画
『Yomeddine』ハンセン病患者と少年の旅、時折《手錠のまゝの脱獄》にやっすい着地点
【カンヌ国際映画祭特集】アフリカ映画「ひかり」はドラクエでありSWだった件
【Netflix】ナイジェリア映画「オクラを買いにいかせたら(GONE TOO FAR!)」が大大大傑作だった件
【アフリカ映画】『マカラ/Makala』コンゴにおける迂闊な値切りは命取りだ!
【アフリカ映画】『U-Carmen eKhayelitsha』金熊賞獲ったのに日本未公開?コサ語で語られる新しいカルメン
【アフリカ映画】『ラフィキ:ふたりの夢』ケニアで上映禁止になった同性愛映画!歴史的重要作だが、、、
【アフリカ映画研究】『黒人女…』アフリカ初の長編映画に挑戦
【アフリカ映画研究】「XALA」勃たなくなったら人生終了のセネガル産ブラックコメディ
【アフリカ映画研究】「母たちの村」意外とバレるかバレないかサスペンスの傑作だった件
【死ぬまでに観たい映画1001本】『メートル・フ』悪意ある泡吹くガーナ人像
【アフリカ映画】『IN THE NAME OF CHRIST』コートジボワールの不穏すぎる儀式