アウトサイド・サタン(2011)
原題:HORS SATAN
英題:OUSTIDE SATAN

監督:ブリュノ・デュモン
出演:ダヴィド・ドゥワエル、アレクサンドラ・ルマートルetc

0.1 評価:100点

1 『アウトサイド・サタン』あらすじ
2 神の救いは悪魔の蜜
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4 チェ・ブンブンのオールタイムベスト(2021版)

評価:100点

おはようございます、チェ・ブンブンです。

私が敬愛する監督ブリュノ・デュモン。ありがたいことに、ブリュノ・デュモンについて書く機会をいただいたので、今月はブリュノ・デュモン未見映画を観ることにした。2011年カイエ・デュ・シネマ年間ベストにて4位に輝いた『アウトサイド・サタン』に挑戦しました。これが私のオールタイムベスト級に大傑作でした。

『アウトサイド・サタン』あらすじ

In a village on the French Opal Coast, a drifter engages in a perplexing relationship with a young woman who has suffered abuse.
訳:フランスのオパール海岸にある村で、漂流者は虐待を受けた若い女性と不可解な関係を築くことになる。

※IMDbより引用

神の救いは悪魔の蜜

後光差込む中、男は膝から崩れ落ち神秘的何かを目撃する。そんな彼が歩くと、泣きじゃくる女を目撃する。そんな彼女に男は手を差し伸べる。しかし、その手はまるで『失われた時を求めて』のシャルリュス男爵さながら手のひら全体ではなく、指を差し出しているように見える。このことから、この男から不吉な予感を想起させる。

本作に出てくる登場人物の背景についてはほとんど語られない。男は何者なのか?女は何者なのか?それは全くもって分からない。ひたすら厳格に暴力の事象を並べていく。女が、何かに怯えている気配を感じると、男は銃を装備し、彫刻、あるいは絵画のような綺麗なフォームで、小屋に向けて発砲。殺害をする。彼女の目の前にある不安や障害を取り除くように、男は一人ずつ処理していく。かと思えば、女が彼を欲しているタイミングで行方不明となってしまう。

神は人を救う一方で、その救いは暴力になることもある。また、神は気まぐれであり、その救いはたまたまなのかもしれない。男の予測不能な救いの連鎖を通じて、人間が信じる神がいかに気まぐれかを綴る。

本作は『プティ・カンカン』2部作や『ジャネット』に通じる厳格ながらユニークな画の源流となっている。その際たるが、カイジの鉄骨綱渡りのような場面に現れる。

業火に燃る大地を前に女は怯える。そんな女の恐怖を払拭するように、男は水に囲まれた細い足場を渡るよう指示する。彼女は男を信じて歩き始めるのだが、後にも先にも引けないところで立ちすくんでしまう。そこへ「炎はもうなくなったぞ」と語る。だが、彼女は別の恐怖の中に転落している状態にあるのだ。

この場面の視覚的面白さと、男が持つ悪魔性の表象の鋭さに魅了された。

正直、二人の行動原理はよく分からない。何故、男は泡吹き出す女に接吻し、黙らせるのか?途中、人の家に侵入して子どもを黙らせる場面は何なのか?訳が分からない。だが、その分からなさも含めて最高の映画だったと言える。