『るろうに剣心 最終章 The Final』ゼロ年代時代劇に愛を込めて空中分解

るろうに剣心 最終章 The Final(2021)

監督:大友啓史
出演:佐藤健、武井咲、新田真剣佑(真剣佑)、青木崇高、蒼井優、伊勢谷友介、土屋太鳳、三浦涼介、音尾琢真、鶴見辰吾etc

評価:30点

おはようございます、チェ・ブンブンです。

2012年に実写化され、大友啓史が出世するきっかけとなったシリーズ『るろうに剣心』の最終章が1年の延期を経て遂に劇場公開されました。前作の『るろうに剣心 伝説の最期編』が日本のアクション映画の底力を感じさせる大傑作であり、まるで三隅研次映画を観ているようなスタイリッシュな画と編集でハッタリを利かせる快感に満ち溢れた作品でした。さて、今回はいかがでしょうか?

『るろうに剣心 最終章 The Final』あらすじ

和月伸宏の人気コミックを佐藤健主演&大友啓史監督で実写映画化した大ヒットシリーズ「るろうに剣心」の完結編2部作の第1弾。原作では最後のエピソードとなる「人誅編」をベースに、剣心の十字傷の謎を知る上海マフィアの頭目・縁との戦いを描く。日本転覆を企てた志々雄真実との死闘を終えた剣心たちは、神谷道場で平穏な日々を送っていた。そんなある日、何者かが東京中心部を相次いで攻撃。やがて剣心は、ある理由から剣心に強烈な恨みを持つ上海の武器商人・縁との戦いに身を投じていく。キャストには緋村剣心役の佐藤健、神谷薫役の武井咲、相楽左之助役の青木崇高、高荷恵役の蒼井優、斎藤一役の江口洋介らおなじみの俳優陣が再結集。新たなメンバーとして、シリーズ史上最恐の敵となる縁役を新田真剣佑、かつての剣心の妻で、剣心が不殺の誓いを立てる理由となった女性・雪代巴役を有村架純がそれぞれ演じる。

映画.comより引用

ゼロ年代時代劇に愛を込めて空中分解

『るろうに剣心 京都大火編』、『るろうに剣心 伝説の最期編』の激しいアクションを想像して観にいくと痛い目に遭うであろう。本作は、全3部作で明らかになっていなかった剣心の過去を巡る物語である。剣心が何故、逆刃刀を携え、人斬りをやめたのかの真相について迫る内容となっており、アクションよりもドラマに重点を置いている。全3部作が三隅研次アクションだとすれば、本作は2000年代時代劇のテイストで作られている。2000年代~2010年代前半まで、人斬りに重みをつけ、宿命の為に剣を抜く時代劇が流行っていた。

『雨あがる』、『武士の一分』、『たそがれ清兵衛』などがこれに該当する。『るろうに剣心 最終章 The Final』はアクションの壮絶さとドラマの静けさのバランスを考えると『必死剣 鳥刺し』に近い作品なのかもしれない。

志々雄真実との死闘が終わり平和の世が訪れても、剣心は浮かない顔をしていた。神谷薫は彼に寄り添おうとするが、心は何処か遠くにあることにモヤモヤしている。彼は何を抱えているのだろうか?そんな中、剣心に復讐を企てる雪代縁が現れる。これにより、剣心は過去と向き合わねばならなくなる。

本作のテーマは、「過去の罪は償えるのか?」「恨みはいかにして浄化されるべきか?」である。剣心は善人ではあるが、過去に人斬りで大量殺戮を行なっている。人を殺したという事実は変わらない。降らせた血の雨の跡は拭い去ることができず、過去の亡霊のような存在として縁が現れるのだ。一方、縁は恨みを拭い去ることができない。暴力でしか痛みを拭い去ることができない状態になっている。それが目には目を、歯には歯をの戦争を巻き起こしてしまう。アクション面ばかり注目されがちだが、ドラマ面はコロナやパワハラ問題で憎悪と過去がしがらみとなって人々が傷つけ合っている今に通じるものがあるのです。

では本作は傑作なのか?

それは残念ながらNOである。

正直、不細工な作りの映画である。ドラマパートとアクションパートの緩急が鈍重で、中だるみが激しい。また、最終章な為、過去作のキャラクターが意外な形でひっきりなしに登場するのだが、その交通整理ができておらず出オチになってしまっている。また、肝心なアクションが非常に見辛いという難点がある。群でもみくちゃにさせる場面は、武器の特性がいかしきれず、折角マシンガンや独特な形状の武器を持っている敵がいてもその武器の魅力が伝わってこないのだ。

そして、キャラクターを事務処理的に整理していった結果、縁の行動がよくわからなかったりする。剣心に対する復讐方法が大掛かりすぎて、まどろっこしく感じてしまった。

そして本作では、次公開される『The Beginning』の予告的ショットが挿入されるのだが、果たしてあれ以上の面白さはあるのだろうか?全く次に対する食指が動かなかったのも問題と言えよう。

やっぱり大友啓史は当たり外れが大きいですな。

※映画.comより画像引用