スター・ウォーズ スカイウォーカーの夜明け(2019)
Star Wars: The Rise of Skywalker
監督:J・J・エイブラムス
出演:デイジー・リドリー、アダム・ドライバー、ジョン・ボイエガ、マーク・ハミル、キャリー・フィッシャー、オスカー・アイザックetc
もくじ
評価:0点
おはようございます、チェ・ブンブンです。
ついに『スター・ウォーズ』新3部作最終章『スカイウォーカーの夜明け』が公開されました。新3部作は、アナキン3部作以上に毎回物議を醸し、賛否が激しく別れ帝国軍vs共和軍みたいな戦争状態になっていました。特にライアン・ジョンソンが手がけた『最後のジェダイ』は、ポーグ、ローズといった炎上キャラクターが配置され、ライトセーバーを使ったアクションをまるで三隅研次と鈴木清順を足して2で割ったような前衛的過ぎる代物に変え、尚且つストーリーをしっちゃかめっちゃかかき乱して立ち去ったモンスター映画となっており、賛否が極端に別れた。個人的に、従来、フォースはライトセーバーを取る時に使われるものだったのが、その一連の行動すら攻撃の手数に挿れてしまうところに惚れたところがあり、なんだかんだ言って番外編も含めて好きなところと嫌いなところがあるシリーズとなっています。
ただ、今回の『スカイウォーカーの夜明け』は、『ファントム・メナス』や『最後のジェダイ』以上の大惨事となっており、Twitterを観測するに多くの人がダークサイドに堕ちた模様。そして、そこに「いや、『スカイウォーカーの夜明け』は傑作だ!」という声が重なり戦争状態となっている。いつも以上に0点か10点かハッキリと分かれる本作を昨日、TOHOシネマズ海老名で観てきました。
…本当に、失望した。
個人的に、なんだかんだ番外編の『ハン・ソロ』ですら好きな場面があった新スター・ウォーズシリーズですが、こんなことされるのであれば、最初から『フォースの覚醒』なんかなければよかったと思う程に酷かった。と同時に、本作を絶賛する人の気持ちもよくわかる。J・J・エイブラムスがとっちらかり過ぎた『最後のジェダイ』を最低限拾い上げ、40年以上に渡る大河ドラマを終結させてみせる、そのフィクサーっぷりは凄いと思う。日本のフィクサーこと山崎貴の何千倍にものしかかる重圧の中でこれを作り上げたのは賞賛しなくてはいけないと思う。しかし、それを差し引いてもこの映画は許せなかった。
何が「ジェダイの武器に敬意を払え」だ?
それはこっちが言いたい。
というわけで、怒りと悲しみに満ちたネタバレ酷評を書いていきます。尚、スター・ウォーズ関連作と『アベンジャーズ/エンドゲーム』のネタバレも含まれていますので要注意。
『スター・ウォーズ スカイウォーカーの夜明け』あらすじ
「スター・ウォーズ」の新たな3部作としてスタートした「スター・ウォーズ フォースの覚醒」(2015)、「スター・ウォーズ 最後のジェダイ」(17)に続く3部作の3作目。「スター・ウォーズ」サーガのエピソード9にあたり、1977年のシリーズ1作目から計9作品を通して語られてきたスカイウォーカー家の物語が完結する。「フォースの覚醒」を手がけたJ・J・エイブラムスが再びメガホンをとり、主人公のレイを演じるデイジー・リドリーほか、ジョン・ボイエガ、アダム・ドライバー、オスカー・アイザックら3部作の主要キャラクターを演じてきたキャストが集結。初期3部作の「スター・ウォーズ 帝国の逆襲」(80)、「スター・ウォーズ ジェダイの帰還」(83)に登場した、ビリー・ディー・ウィリアムズ演じるランド・カルリジアンが再登場するほか、シリーズを通して重要な役割を担ってきた、16年12月に急逝したキャリー・フィッシャー演じるレイア・オーガナも、「フォースの覚醒」製作時に撮影されていたものの未使用だった映像を用いて登場する。
※映画.comより引用
フランチャイズの大罪
2010年代は、フランチャイズ式映画製作が手法として確立され、成功していった時代と言える。一般的な感覚として、続編が大ヒットするのは妙だと思う。なんたって、前作を観ている必要があるし、MCUになってくると予習に何作品も観る必要がある。しかし、実際には世界どこの興行収入ランキングをみても続編だらけとなっている。
試しに2018年の各国の興行収入ランキングをみてみましょう。(キネマ旬報3月下旬特別号参照)
日本の2018年興行収入ベスト
1.ボヘミアン・ラプソディ
2.劇場版 コード・ブルー
3.名探偵コナン ゼロの執行人
4.ジュラシック・ワールド / 炎の王国
5.スター・ウォーズ / 最後のジェダイ
6.映画ドラえもん のび太の宝島
7.グレイテスト・ショーマン
8.リメンバー・ミー
9.インクレディブル・ファミリー
10.ミッション:インポッシブル / フォール・アウト
アメリカの2018年興行収入ベスト
1.ブラックパンサー
2.アベンジャーズ / インフィニティ・ウォー
3.インクレディブル・ファミリー
4.ジュラシック・ワールド / 炎の王国
5.デッドプール2
6.グリンチ
7.ジュマンジ / ウェルカム・トゥ・ジャングル
8.ミッション:インポッシブル / フォール・アウト
9.アントマン&ワスプ
10.ハン・ソロ / スター・ウォーズ・ストーリー
中国の2018年興行収入ベスト
1.オペレーション:レッド・シー
2.僕はチャイナタウンの名探偵2
3.ニセ薬じゃない!
4.西虹市首富
5.アベンジャーズ / インフィニティ・ウォー
6.モンスター・ハント2
7.ヴェノム
8.アクアマン
9.ジュラシック・ワールド / 炎の王国
10.前任3
フランスの2018年興行収入ベスト
1.インクレディブル・ファミリー
2.Les Tuche3
3.La Ch’tite famille(『ようこそ、シュティの国へ』続編)
4.アベンジャーズ / インフィニティ・ウォー
5.シンク・オア・スイム イチかバチか俺たちの夢
6.ファンタスティック・ビーストと黒い魔法使いの誕生
7.ブラックパンサー
8.TAXi ダイヤモンド・ミッション
9.ジュラシック・ワールド / 炎の王国
10.ボヘミアン・ラプソディ
どうでしょうか、洋画上映に規制があることで有名な中国、愛国心が強いイメージが強いフランスですら、ハリウッドの続編、ユニバース系映画が侵食しています。数字でみると、驚くべきことに大衆に受け入れられていることがわかります。
そしてこの手のハリウッドフランチャイズは、ディズニーが先陣を切って成功させたこともあり、決まってジェンダーや国籍等のポリティカル・コレクトネスに配慮したものとなっている。往年の名作を女性版としてリブートさせたり、黒人を主要キャストに選んだりしています。ディズニーが使命としてもっている、映画の中で多様性を描くことで世界平和を実現しようとする意志を毎回感じさせます。一方で、また若手監督や準巨匠に名作のブランドを背負わせることで、炎上に対するリスク回避を図っています。失敗したら業界から追放すれば良いという資本主義の嫌なドライさを感じさせます。映画界にもフランチャイズ的リスク回避と、大量生産の波がきているのです。
その成功が積み重なり、今や映画のトップランナーを走る映画製作手法として確立されたフランチャイズ式映画製作ですが、2010年代最後の最後に大罪という名のライトセーバーを突き刺してしまいました。それは、新シリーズ全てを「作られなければよかった」と思わせる程の大惨事となっていた。
冒頭から、「イヤな予感がする」が画面全体に行き渡っている。
カイロ・レン(アダム・ドライバー)が、敵を皆殺しにしていく様子が描かれるのだが、クローズアップばかりされており、彼のセーバー捌きの巧みさが見えてこない。やたらとスローモーションで描かれるのだが、ザック・スナイダー映画に比べ無闇にやっている感じが強く全く映えないのだ。そして、大勢の敵が地面に横たわるところをドヤ顔すると、宇宙空間に並ぶ無数のスター・デストロイヤーが映し出されるのだが、これがまるでフォトショップでコピー&ペーストしまくった陳腐な画にしか見えないのです。
そして、映画の上映時間は2時間半あるにもかかわらず、「もう時間がないんで、駆け足でいきますよ」と、レイ(デイジー・リドリー)の修行シーン、フィン(ジョン・ボイエガ)たちの東奔西走が描かれる。
後出しジャンケン/放置プレイ展開の数々
J・J・エイブラムスは斬新すぎる且つ、物語をかき乱した上に面倒臭いところで終わる『最後のジェダイ』をどう処理するのか相当悩んだだろう。前作で不評だった、ポーグやローズ(ケリー・マリー・トラン)を排除しては、さらに炎上してしまうので取り敢えず影に配置し、ただのクズ役だったDJ(ベニチオ・デル・トロ)はなかったことにする。そして新シリーズでうっかり匂わせてしまった、フィンにもフォースがあるという描写もサラッと踏襲して放置していく。
全てが5年近く積み上げてきた議題を置くなり、後出しジャンケンで「実は…」と言うばかりです。しかも、その後出しジャンケンがどれも酷い。例えば、ハックス将軍が「実は俺、帝国軍のスパイだよ」と後出しジャンケンでフィンたちを助ける場面。何故彼はスパイなのかという問いに対して、「カイロ・レンが負けるところが観たかった」としょうもない理由が付いてきます。実は生きてましたと言いたげに、カッコいいヴィジュアルになって帰ってきたキャプテン・ファズマ(?)も、ただ横にMCUの撮影と勘違いしているだけの存在にしか見えない。C-3POは、シス語を語るために記憶抹消手術を施すが、その後R2-D2によって記憶が復活してしまうし、新キャラD-Oに重要なものを背負わせていると言われても、ただ『七人の侍』オマージュをやるための人員稼ぎにしか見えない。
ライトセーバーの扱いが酷い
そして、一番憤慨したのは、ライトセーバーの扱いだ。『最後のジェダイ』では、ライトセーバーを投げたり、フォースで拾ったりするアクションで敵を殺戮していく三隅研次流アクションが魅せ場となっていました。その演出が妙に好きだったのですが、その美学を継承した本作のアクションは最悪であった。あまりにもライトセーバーを軽々しく使っているのだ。しかも、修行場面で球体ボットにトドメを刺すのが、ライトセーバーではなく《棒》というところに唖然とする。限られた人しか持てないだけに、トドメはライトセーバーでしょう。しかも、本作においてライトセーバーは、主に暗闇をテラス懐中電灯として使われるのだ。終いには、ちょっと持ってて!とフィンに軽々しくライトセーバーを渡してしまう。おまけに、ライトセーバーを投げ捨てるシーンが2回もあるのだ。
それでもって、ルーク・スカイウォーカー(マーク・ハミル)の亡霊に
「ジェダイの武器に敬意を持ちたまえ」
と言わせる。
それはこっちの台詞です。
アダム・ドライバーは素敵
こうもフラストレーションしか蓄積されない『スカイウォーカーの夜明け』ですが、唯一の救いはアダム・ドライバーの容姿だ。キャラ設定ではありません。キャラ設定でみたら、ここまで帝国支持率0%。安倍政権級に、トップの下で傀儡的に政治を動かそうとするカリスマ性がなさすぎるカイロ・レンのショボさに驚愕し口がアングリーバードになってしまう。しかし、組織の頂点という枷に雁字搦めとなって、厨二病全開ながら抑圧された顔で職務を真っ当とするところから枷が弾け飛び、ユニクロファッション満面の笑みでレイと共闘するようになる姿に化けていくアダム・ドライバーの姿は惚れてしまう。
アダム・ドライバー特有の、ゆるさ、ジム・ジャームッシュ映画の方がお似合いなのに、うっかりビッグブランドを背負ってしまった者の苦悩が滲み出る様は彼のイメージを最大限まで引き上げたと言えます。彼だけ拝みにもう一回みたいなと思いました。
最後に
ディズニーは以前、『スター・ウォーズ』量産しすぎた。しばらく休業します的なことを発言していたが、多分5年後にはしれっと新シリーズ始動!とまた巨大プロジェクトを動かしていきそうだ。そして新鋭監督に丸投げして、失敗したらポイっと切り捨ててしまいそうだ。ジョーダン・ピールあたりがその標的になるのではと考えると気が思い。どうしても作りたいのであれば、25年後に会いましょう、ツイン・ピークス方式で寝かせてほしいし、なんならもう作らないでほしいと思いました。
『ハン・ソロ』ですらある程度許せるポイントがあったのに、これはマイナス5億点すら与えたくない今年の終焉に浮上したワースト映画であった。
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