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【ネタバレ考察】『ハン・ソロ』スター・ウォーズ版ドン・キホーテだ!

【ネタバレ考察】『ハン・ソロ』スター・ウォーズ版ドン・キホーテだ!

ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー(2018)
Solo: A Star Wars Story(2018)


監督:ロン・ハワード
出演:オールデン・エアエンライク、
ヨーナス・スオタモ、
ウディ・ハレルソン、
エミリア・クラーク、ポール・ベタニーetc

評価:55点

世界中であまりヒットせず大惨事となっている『ハン・ソロ』。まるでマクドナルド兄弟からブランドを奪い、世界中の飲食店を潰し、世界から飽きられ破滅に進んでいるマクドナルドの栄枯盛衰を見ているかのように、ディズニーのスターウォーズフランチャイズ戦略は破滅の道へと進んでいる。ブランドを安売りした結果大火傷を負った問題作を観てきました。意外にも日本ウケは良いそうですよ。

※ネタバレ記事です。

『ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー』あらすじ

ハン・ソロの若かれし頃を描いたスピンオフ。ある事情で、帝国軍のパイロットを目指していたハン・ソロ。しかし、捨て駒として使われる彼は、戦場で出会ったならず者についていき、とある強奪作戦に参画するが…

減点方式で観てはダメだ!

さて、結論から言おう。『最後のジェダイ』よりは面白い。しかしながら、減点方式で観るとマイナスに突き進むタイプの映画だった。後述するが、ハン・ソロ以外のキャラクターがああも魅力的でなかったら下半期1日めにしてワーストテンにランクインしていたであろう。

まず、本作はいつものロン・ハワード以上に綺麗な魅せショットが皆無なのだ。ロン・ハワード映画といえば『インフェルノ』や『白鯨との闘い』と、数日経ったら忘れてしまうような作品、劇中のカッコ良いショットが思い出せないような作品を作る監督である。もちろん、『ラッシュ/プライドと友情』、『ビューティフル・マインド』、『アポロ13』と傑作も多いのだが、そのどれもが《ドラマ》で魅せるタイプの作品。スター・ウォーズシリーズは、毎回ヴィジュアルで魅せる場面を多く取り入れる為相性が悪いのは明白。
しかも、元々は『くもりときどきミートボール』や『21ジャンプストリート』、『LEGO ムービー』とヴィジュアルもドラマも傑作な作品を生み出すフィル・ロード&クリス・ミラーが監督するはずだったのが途中降板し、代役として抜擢されている。不安しかなかったのだが、いつものロン・ハワード映画と比べても酷かった。

暗い、見辛いアクション

まずヴィジュアル面だが、予告編にあった西部劇的間の使い方以外、とにかく暗い、汚い、見辛いの極みだ。最初のアクション。あまりに暗いので、てっきり、後に光使ったスペクタクルへの序章だと思っていた。いつだって、極端に暗いシーンは、アクションのクライマックスで光が差しカッコ良く決めるもん。例に漏れず確かに見せ場で光は使われるのだが、光描写が弱すぎで全く魅せショットになっていない。

オールデンがルーク・スカイウォーカーにしか見えない

また、ハン・ソロを演じたオールデン・エアエンライクがルーク・スカイウォーカーにしか見えない問題も発生。オールデンの演技こそ、悪くないし、アウトローになりきれていない青臭さをしっかり表現できている。しかし、あのヴィジュアルはルーク・スカイウォーカーでしょう。オーディションでは、チューバッカのモノマネが上手かったのが決め手だったそうだが、それ以前に顔でしょう。特殊メイクしてでも、ルーク感を打ち消して欲しかった。

なんで、ダース・モールが??

何故か、本作の終盤で、ダース・モールが出現する。ダース・モールといえば『スター・ウォーズ エピソード1/ファントム・メナス』に登場したボスキャラで、アナキンに斬られ穴に落とされ死んだ筈。しかし、本作では全くの無傷でピンピンしているのだ。ハン・ソロってルーク・スカイウォーカーより年上だとしても、流石にアナキンの時代では少年だった筈。時制がブレていないか?(心優しいスター・ウォーズ博士、どうなっているのか教えてー)また、何故あそこでダース・モールを出したのかがよくわからない。ダメダメ日本映画のように、何段階にも渡ってクライマックスを描くんだったら、潔くキーラと別れて終わらせて欲しかった。

過度な二転三転

これは良くも悪くもでもあるのだが、終盤のドンデン返しがかなりクドいものとなっている。裏切り、裏切られの騙し合いを何度もやる。確かにキャラクターの魅力を引き立てる描写ではあるのだが、少しやりすぎな感じがしました。

列車強盗シーンから意外と面白くなる!

こうもダメダメ、フランチャイズの限界を感じる作品だったのだが、実は列車強盗シーンから『最後のジェダイ』以上に楽しんだは事実だ。マカロニウエスタンを意識した、激しい銃撃戦。全員悪人、されどそれぞれが哲学を持っている。その哲学の上で、敵を倒していく姿に痺れる。また、完全に自分の哲学を確立していないハン・ソロがならず者たちと行動するうちに、大人へ成長していくところは燃えるところがある。無駄に「正義」とは?と道徳、倫理観を押し付けることがないから清々しかったのだ。この熱さを演出したのは、ハン・ソロ以外のキャラクターの魅力にある。

クレニックに続く魅力的な上司

今回のボスキャラは、ポール・ベタニー扮するドライデンだ。彼は、『ローグ・ワン』のクレニック長官に続く魅力的な中間管理職だ。彼は、納期に追われている。しかし、ハン・ソロたちの強奪が失敗に終わり窮地に陥る。ぶっ殺したい気持ちになる。しかし、彼から持ちかけられた新しい作戦。ここで殺したら、結局利益を上げられず自分の身が危ない。成果を出せるのなら許そうと、ハン・ソロたちにもう一度チャンスを与えるのだ。気性は荒いが、上司として焦りを見せず余裕綽々と構え、ハングリー精神溢れる奴を活かそうとする。しかも、彼の武器はリーチが短い短剣だ。肉弾戦で自らの獲物を狩ろうとする姿に惚れてしまう。なんて、良い上司、カリスマ上司なんだと思った。やはり、社会人になるとこういうヴィランに弱いんだよなー。

ヒロインの魔性の女感

エミリア・クラーク扮するヒロイン・キーラが、フィルム・ノワールに出てきそうな魔性の香りを漂わせている。ドライデンの女となってしまったキーラ。ハン・ソロへの愛を示すが、それはキスまでの関係。もう別々の道を歩んでいる以上、元通りに関係を戻すことができないとキーラは知っている。ハン・ソロはそんなことを察せず、ひたすらキーラとの関係を取り戻すために頑張っているのを横目にやり過ごすファム・ファタール感が魅惑溢れるものとなっている。こんな女性目の前にいたらブンブンも惚れてしまうだろう。ランドのマントをカッコ良く着こなし、ハン・ソロにグーパンを食らわす彼女。俺もやられたい!と思いました。

自己中ドロイドL3-37がイカすぜ!

予告編を観ると、全く魅力を感じないドロイドL3-37。しかし、本編を観るとめちゃくちゃ惹き込まれます。キーラといきなりガールズトークを繰り広げる。「あんた、あの男(ハン・ソロ)に惚れられているんだろ。水臭いな。女同士話そうよ。あたいもあの男(ランド)に惚れられて困っているんだよ。」とまるで、スナックのママのような語り口で話すのだ。こんなロボットキャラクター見たことがない!気が強く、自己中心的で、戦場では勝手に生き甲斐を見つけてチームワークを見出しまくる。でもスマートだ。これは面白い。

ランドのファッションに注目

黄色いファッションに身を包む賭博師ランド。彼は常にニヤニヤ笑っているペテン師だ。ただ、彼の着るファッションは真似したくなること間違いなし。飄々と戦場を駆け回る。そして、好きな女はドロイドだろうと全力で愛を捧げる。彼のL3-37愛、悲劇的な最期を前に崩れるランドの人間臭さにブンブンの涙腺が刺激されました。

超合理的!トバイアス・ベケット

ウディ・ハレルソン扮する、ハン・ソロの兄貴分トバイアス・ベケットは、「誰も信じるな」をモットーに生きている男だ。その時、その時で自分が得する立ち回りをすることだけを考えて生きている。故に、平気でハン・ソロを裏切る。ただ、彼の一切ブレない所作を見ると、非常に合理的で説得力がある。特に終盤の、燃料争奪戦のシークエンスは、唸るものがあった。そして彼の生き様がハン・ソロのアイデンティティを作っていく様子も描かれる。クライマックスには、心が大人になったハン・ソロがベケットを倒し、ランドのトリックを見破り賭けで勝利する。ルーク・スカイウォーカーがヨーダとの修行の末、大人になり、ダース・ベイダーを倒すような成長をハン・ソロはここでやってのけたことが分かる。その描写の説得力にベケットが貢献しているのだ。

最後に…

正直、『スター・ウォーズ』というブランドにふさわしくない作品である。ディズニーがブランドを安売りした結果、凡庸な映画になってしまった。興行収入が伸び悩んでいるのもよく分かる作品だ。しかしながら、単純にSF冒険活劇として観たら、面白い。Twitterでもチラホラ見かけるが、まさしく「自分をハン・ソロだと思う一般人の冒険譚」、つまり『ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー』は《スター・ウォーズ版ドン・キホーテ》と言えよう。

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