【東京国際映画祭2019×Netflix】『マリッジ・ストーリー』ウディ・アレンのヒリヒリした《そよ風》を継ぐ者

マリッジ・ストーリー(2019)
Marriage Story

監督:ノア・バームバック
出演:スカーレット・ヨハンソン、アダム・ドライバー、ローラ・ダーンetc

評価:85点

おはようございます、チェ・ブンブンです。

ノア・バームバックが『マイヤーウィッツ家の人々 (改訂版)』に引き続き、Netflixとタッグを組んで新作を作り上げた。『マリッジ・ストーリー』は『アイリッシュマン』と共に、アカデミー賞に斬り込もうとする切り札としてNetflixが放った作品ですが、役者賞ノミネートは確実とも言える改作でした。日本では11/29よりアップリンク他にて劇場公開し、12/6より配信されるのですが一足早く鑑賞しました。

『マリッジ・ストーリー』あらすじ


離婚プロセスに戸惑い、子の親としてこれからに苦悩する夫婦の姿を、アカデミー賞候補監督ノア・バームバックが、リアルで辛辣ながら思いやりあふれる視点で描く。
※東京国際映画祭サイトより引用

ウディ・アレンの忘れたもの

今や#MeToo運動による魔女狩りによって、くたびれた映画しか作れなくなってしまったウディ・アレン。彼が『アニー・ホール』から『ハンナとその姉妹』までの第一次全盛期(第二次全盛期は『ミッドナイト・イン・パリ』から『ブルージャスミン』の時代)に忘れてきてしまった、ヒリヒリするものの軽妙な笑いで風刺してみせるあの技術をノア・バームバックは完全再現してみせた。そこに漂う、ノスタルジックな香りは「あの頃の結婚生活は幸せだったな」という切なさを強調させるのに効果的となっている。

離婚に伴う、煩雑な手続きは、夫婦の関係をさらに悪化させる。お互いにあの頃の楽しい思い出を壊したくないと思いつつも、小さなナイフが互いの皮膚をスーーーッと切りつけていく。こんなにもヒリヒリし、辛い話であるのに、どういうわけかこれが抱腹絶倒のコメディとなっている。抱腹絶倒と聞くと、豪傑なアメリカンコメディを連想するが、『マリッジ・ストーリー』は繊細だ。

例えば、スカーレット・ヨハンソン演じるニコルは、離婚届を夫チャーリー(アダム・ドライバー)に渡す場面。できるだけ自然な形、それも自分が有利になるように夫へ渡そうと、親戚と連携プレイを取ろうとする。しかし、ワインでベロンベロンに酔った親戚たちは、彼にホの字。抱きついたり、自分の演技を褒めてと言わんばかりに訛りのある演技をみせつけたりし、最悪な状態で離婚届が彼に渡されてしまうのだ。ドタバタ喜劇でありながらも、各キャラクターの熱量を繊細に描き分けているクレバーな演出が光っています。

そして、離婚を巡って少しでも自分が有利に立とうと、水面下で仁義なき闘いが繰り広げられていく。それに少年の冷静沈着な眼差しが向けられ、どんどんと辛酸の濃度が高まっていく。こうも苦しいのに、なんで笑っていられるのだろう。と観ていくうちに、だんだんと切なさが強まりキューーット胸が締め付けられていきました。

意外と最近、こういった作品を見かけない。『アニー・ホール』とか『クレイマー、クレイマー』とか、冷静沈着ユーモラスに家族の崩壊による哀しさを包み込む作品はどこかに忘れ去られてしまったようだ。それを、会話劇の名手ノア・バームバックは見事に拾い上げてくれました。

これはアカデミー賞脚本賞、主演女優賞、主演男優賞ノミネートは硬いのではないでしょうか?

ノア・バームバック作品が苦手な私もハマることができたので、是非Netflixで、いや劇場でこの濃密な悲喜劇を味わってください。

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