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【ネタバレ解説】『インクレディブル・ファミリー』ブラッド・バードはマーベルの先を行く

【ネタバレ解説】『インクレディブル・ファミリー』ブラッド・バードはマーベルの先を行く

インクレディブル・ファミリー(2018)
Incredibles 2(2018)


監督:ブラッド・バード
出演(英語版):ホリー・ハンター、
クレイグ・T・ネルソン、サミュエル・L・ジャクソン、
ブラッド・バードetc
日本語吹き替え:黒木瞳、三浦友和、
綾瀬はるか、スーパー・ササダンゴ・マシン、
サンシャイン池崎etc

評価:85点

今や、政治や社会問題を組み込むのがアメコミ映画の定石となっているが、そのムーブメントの前にヒーロー哲学を組み込んだ、というよりか『キャプテン・アメリカ:シビル・ウォー』そのものをやってのけた傑作『Mr.インクレディブル』待望の続編。

ただし、前回とは違い、今や子ども向け映画、ヒーロー映画に政治や社会問題を組み込むのは当然となっているだけにハードルは高い。

ブラッド・バードどうする?

と思い、観たのだが、見事期待を超えてきた。今日は、傑作『インクレディブル・ファミリー』についてネタバレありで語っていく。

『インクレディブル・ファミリー』あらすじ

シンドロームとの戦いから3ヶ月後の世界。結局、スーパーヒーロー保護プログラムという名のヒーロー抑圧の世界を変えることができず、依然としてヒーロー活動は法律で禁じられていた。ヒーロー一家インクレディブル・ファミリーは、シンドロームとの死闘後、モーテル暮らしの貧困暮らしを強いられていたが、隙をみてはスーパーヒーローとして悪を成敗し、その度に警察から事情徴収を受ける生活を送っていた。そんな中、通信会社デブテックのスーパーヒーロー好き経営者ウィンストン・ディヴァーが妹イヴリン・ディヴァーと共に、ヒーロー復活ロビー活動を始める。その活動に、妻イラスティガールが抜擢される。夫Mr. インクレディブルは彼女に嫉妬を抱きつつも、主夫として育児に専念するのだが…

イーサン・ハントを使いこなしパワーアップ!

本作は、ブラッド・バードというブランドを背負いつつも、余裕で場外ホームランを放った快作だ。なんたって、前作の欠点である鈍重な脚本はあっさり一新している。

まず最初に激しいアクションを、それもパワーアップしたアクションで心を鷲掴みにする。『ミッション:インポッシブル/ゴースト・プロトコル』で学んだ、チームプレイとしてのアクションを魅せてくれるのだ。
ファミリーが赤ん坊ジャック・ジャックをリレー方式で子守しながら、また一般市民を適切な場所に誘導しながら、互いに技を重ね合わせ、悪の暴走を止めようとする。しかし、悪は強大。イラスティガールがゴムゴムの力で暴走するドリルを塞き止めようとしようが、第一、第二防衛ポイントは次々と破壊される。筋肉自慢なMr. インクレディブルは、ドリルの可動部分に次々と、鉄棒や岩石を投げ込むが止められない。ヴァイオレットのバリアもことごとく突破されてしまう。もう、GTAにおける列車のように塞き止め不可能なドリル列車。もうダメだ!というその危機をサッと、サザエさんに於ける《いささかさん》ポジションであるフロゾンが手を差し伸べる。無駄なく手数多く、観やすい絵面。ここに監督の成長を感じた。
そして、メインディッシュ。これが、最近のアメコミ映画を凌駕する重層的な物語となっている。ヒーローが禁じられ、家族は『フロリダ・プロジェクト』さながら、モーテルで貧困を重ねている。そこに舞い込んだ、ヒーロー復活の話。ここから、あまりにもハードな2つの物語が展開される。

アップデート版『セールスマンの死』だ

一つは、イクメン物語だ。妻イラスティガールが指名で出稼ぎに行く代わりに、Mr. インクレディブルが主夫活動をする。これ自体は、凡庸だが、なんとブラッド・バードはそこにアーサー・ミラーの戯曲『セールスマンの死』のウイリー・ローマンの視点を持ち出すことにより、新鮮さを見出した。『セールスマンの死』のウイリー・ローマンは凄腕セールスマンが時代に取り残され、子どもや妻に当たり散らす老害のメカニズムの原石だ。本作のMr. インクレディブルは、出世していく妻に嫉妬し、子育ての辛さから、過去の栄光の微かな蜜を求める老害ジジイになっていく。そして、もがきの末に、現実を手に入れようとしていく。『セールスマンの死』では、老害になった男の姿しか見えないが、こちらではしっかりと過程を見せてくれる。これにより、誰しも陥る老害像という普遍的象徴が築かれていく。

ロビー活動×ヒーローの関係を紡ぎ出す

そして二つ目は、ヒーローをロビー活動のツールとして使う者の物語だ。ヒーローという目立つ存在をいかに政治利用し、世論を変えていくかという戦略をじっくりと見せてくれる。通信会社デブテックの経営者ウィンストン・ディヴァーは根っからのヒーローファンで、ヒーロー禁止法を改正したいと思っている。しかし、自分は経営は上手くともヴィジュアル的カリスマ性を持ち合わせていない。そこで、イラスティガールをシンボルとして使おうとする。彼女は統計学的にも、街に対する被害額を最小限に抑えられる。また、女性をメインに使うことで、ウーマンパワーが強い現代に刺さるアイコンへと昇華させて行くのだ。そして、豪邸、豊かな生活をチラつかせ、《貧困と裕福》という天秤を脳裏に焼き付け、インクレディブル・ファミリーを傀儡化していく。そして、陰日向にいるヒーロー達を集めてパーティーを開催、メディアにも次々と出して行くことで、社会のヒーローに対する好感を植え付けて行く。

ここまで丁寧にロビー活動の裏側を、キッズ向け夏休みビッグバジェット映画で魅せていくとは驚きだ。そして、ブラッド・バードは、更に深いトリックを仕込んでいく。非常に怖い…

ディヴァーですら操り人形

実は、本作の黒幕はディヴァーの妹であるイヴリン・ディヴァーだ。彼女は、天才的な技術者で、警察の盗聴はもちろんデブテックのコア技術を発明している女だ。彼女は、元々持たざる者だったが、努力の末に最強技術者となった。しかし、ヴィジュアル映えしない、カリスマ性を持っていない彼女は、兄、そしてスーパーヒーローに嫉妬し、ヒーロー法案を強固なものにしようとしていた。

そこで兄を利用した。ヒーローを再び社会に浸透させようと政治家に詰め寄る彼。彼を利用し、人々のヒーローに対する好感を最大に上げた状態で、テロを起こし、ヒーローの地を暗黒に突き落とそうとしたのだ。ロビイストである兄を逆に利用するこの政治的戦略に背筋が凍った。涙ぐましいヴィランは『スパイダーマン ホームカミング』のヴァルチャーのようにマーベル映画でも見かけるようになったが、ここまで複雑・狡猾で人間味のあるヴィランはまだマーベル映画にはいないだろう。そう、『インクレディブル・ファミリー』ではまたしてもブラッド・バード監督、未来のヒーロー映画を我々に突きつけた。

最後に…

この二つの軸をしっかり2時間でまとめきり、ヒーローアクションとしてもマーベルに劣らない(特に空間を操るヴォイドの技の使い方が素晴らしい。ドクター・ストレンジのアクションなんかよりもはるか上だ!)クオリティで、大満足でした。『ミッション:インポッシブル フォールアウト』の脚本で満足できなかったシネフィルも、これには満足できるだろう。今年の夏最強のアクション大作であること間違いなしだ!

おまけ:『ディメンシャ13』をデートに観るって…

本作のラストで、ヴァイオレットが彼氏と一緒に映画を観にいくのだが、その映画がフランシス・フォード・コッポラがロジャー・コーマン先生プロデュースの基で作った『ディメンシャ13』なのだ。ブンブン未見なのでなんとも言えないが、噂によると古城もののホラーで、今観ると脚本に穴がありすぎて全く怖くないんだとかwなんでデートでわざわざこれを観たのだろう??

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