『二階の他人』山田洋次デビュー作はサラリーマンが主人公

二階の他人(1961)

監督:山田洋次
出演:小坂一也、葵京子、高橋とよ、野々浩介、穂積隆信etc

評価:60点

おはようございます、チェ・ブンブンです。

Amazon Prime Videoで山田洋次デビュー作『二階の他人』が配信されていたので観た。Amazon Prime Videoの邦画充実度は本当に高くて助かる。

『二階の他人』あらすじ

若いサラリーマン葉室夫婦は方々から借金して二階家をたてた。二階を貸して返済しようという計画だが、今いる小泉夫婦は賄付の下宿代を二カ月ためているので、気弱な葉室夫婦の間では時々波風が立った。やっとの思いで催促すると目下失業中という返事に、正巳は止むなく勤めている会社の守衛に小泉を推薦した。暫くたち、葉室家には、豊橋に住んでいる兄鉄平と喧嘩して出てきた、母のとみが泊まった。小泉夫妻と親しくなったとみは、二階に遊びに行くので正巳には面白くなかった。折角世話した守衛の勤めを怠けているときいた時、彼の忍耐心の限度が来た。立退を迫ると小泉達の態度がガラッと変った。彼らは下宿荒しの常習犯だったのだ。

映画.comより引用

山田洋次デビュー作はサラリーマンが主人公

山田洋次監督は下町人情にフォーカスを当てるイメージが強いのだが、デビュー作はなんとサラリーマンが主人公であった。とはいっても彼にとってサラリーマンは退屈な仕事の象徴なので、オフィス描写をサクッと描いたらあとはひたすら家に個性的な人物が侵入してきて、そこを軸に喜劇へと発展させていくような内容であった。山田洋次監督にとって下町とは村社会のように他人の人生に干渉してくる場所であり、他人に対する好奇の眼差しと距離感を1階から2階を見上げる、またはその反対で表現している。おばあちゃんが鍋の肉食べるも、生焼けだから鍋へリバースし、周りが不快な顔をするといった庶民的なギャグを挟みつつもこのような空間による距離感描写を的確に決めてくるあたり、当時から巨匠の風格があったんだなと思った。

それにしても、確かに仕事に対する解像度は低いが『こんにちは、母さん』は山田洋次監督にとって最もサラリーマンに歩み寄った作品になっていたんだなと思う。集大成として原点回帰し発展させた物語としてどちらも興味深く感じた。

山田洋次関連作品

『こんにちは、母さん』サラリーマンは下町に降り立った
【ネタバレ考察】『男はつらいよ お帰り 寅さん』わけを聞こうじゃねえか
【ネタバレ】『キネマの神様』私はつらいよ

※Amazon Prime Video画像引用