【 #死ぬまでに観たい映画1001本】『マルコヴィッチの穴』他者になること

マルコヴィッチの穴(1999)
Being John Malkovich

監督:スパイク・ジョーンズ
出演:ジョン・キューザック、キャメロン・ディアス、キャサリン・キーナー、ジョン・マルコヴィッチetc

評価:85点

おはようございます、チェ・ブンブンです。

『脳内ニューヨーク』が面白かった勢いでチャーリー・カウフマン脚本の『マルコヴィッチの穴』も再観した。これも中学生の頃に観て変な映画だと感じた作品だ。VTuber時代の今観ると面白い補助線になる作品のように思えた。

『マルコヴィッチの穴』あらすじ

定職のない人形使いのクレイグは、新聞の求人欄を見てマンハッタンにあるオフィスビルの7と1/2階にある小さな会社に就職する。文書整理の仕事を得た彼は、ある日落としたファイルを拾おうとキャビネットを動かし、偶然壁に小さなドアを発見する。ドアを開けて穴の中に入った彼は、それが俳優ジョン・マルコヴィッチの脳へと続く穴であることに気付く。

※映画.comより引用

他者になること

VTuberは自分の肉体と異なる他者を纏うことによって自己を拡張できる。男が女になったり、その逆も可能となる。そして他者との対話の中で文脈ができあがり、自己と設定、そしてリスナーとの創り上げてきたものが混ざって分離不可能な存在となる。『マルコヴィッチの穴』はVTuberなんて存在しない時代の作品でありながらもその特性を見事に突いている作品に思える。人形使いがメタファーとして作用し、俳優ジョン・マルコヴィッチを操っていく。彼になれる穴をビジネスとして運用する中で彼のアイデンティティを奪っていく過程は、二次創作問題にも通じるものがあるだろう。例えば、ずんだもんがそうだ。基本的な設定を踏襲しながら、多くの人が二次創作的にずんだもんを使用する。その中でカレーうどんによって虐待されるなどといった属性が付与され本来のアイデンティティが希薄なものとなっていく。そうした、他者の肉体を借りることによって他者のアイデンティティを剥奪する、もしくは上書きするような世界は今となっては決してファンタジーではない。チャーリー・カウフマンもまたクローネンバーグのように未来のライフスタイルを予言したような映画を作っていたといえよう。

※映画.comより画像引用

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