『聖地には蜘蛛が巣を張る』彼女が歩けば暴力に当たる

聖地には蜘蛛が巣を張る(2022)
Holy Spider

監督:アリ・アッバシ
出演:メフディ・バジェスタニ、ザーラ・アミール・エブラヒミ、アラシュ・アシュティアニ、フォルザン・ジャムシドネジャド、スィナ・パルヴァネetc

評価:70点

おはようございます、チェ・ブンブンです。

4/14(金)よりアリ・アッバシ監督新作『聖地には蜘蛛が巣を張る』が公開される。『ボーダー 二つの世界』でカンヌ国際映画祭ある視点部門グランプリを受賞したアリ・アッバシ監督がコンペティション部門に昇格し、主演を演じたザーラ・アミール・エブラヒミが女優賞を制した作品だ。アリ・アッバシはどうもジャンル映画の中に鋭い社会批判を仕込む傾向がある。『ボーダー 二つの世界』では、意識的/無意識的差別に踏み込んでいた。今回は実録犯罪捜査ものを通じてイラン社会に蔓延するミソジニーを暴いた。

『聖地には蜘蛛が巣を張る』あらすじ

「ボーダー 二つの世界」の鬼才アリ・アッバシ監督が、イランに実在した殺人鬼サイード・ハナイによる娼婦連続殺人事件に着想を得て撮りあげたクライムサスペンス。

2000年代初頭。イランの聖地マシュハドで、娼婦を標的にした連続殺人事件が発生した。「スパイダー・キラー」と呼ばれる殺人者は「街を浄化する」という声明のもと犯行を繰り返し、住民たちは震撼するが、一部の人々はそんな犯人を英雄視する。真相を追う女性ジャーナリストのラヒミは、事件を覆い隠そうとする不穏な圧力にさらされながらも、危険を顧みず取材にのめり込んでいく。そして遂に犯人の正体にたどりついた彼女は、家族と暮らす平凡な男の心に潜んだ狂気を目の当たりにする。

映画.comより引用

彼女が歩けば暴力に当たる

ジャーナリストのラヒミ(ザーラ・アミール・エブラヒミ)は孤独に犯罪捜査を行なっている。街ではスパイダー・キラーが娼婦を殺害しているが、それを賞賛する声もあがっている。彼女が行く先々で嫌がらせを受ける。例えば、ホテルに宿泊しようとしたところ、彼女がひとりだと知り「不手際で宿泊できなくなった」と言い始める。ジャーナリストだと叫ぶと、渋々宿泊を許可する。彼女はイラン社会に蔓延るミソジニーに抗うように大胆な調査をするが、その中で陰湿な嫌がらせを目撃することとなる。警察官は、彼女に迫り肉体関係を迫ろうとする。耳元で、「警察呼ぶか?」と脅し始める。

裁判では、「俺は狂っている」と証言する男が、女性蔑視な態度を取るが、裁判の場はなぜか男の肩を持つような空気を醸し出し始める。拷問シーンも、容疑者と警察官が結託して自作自演を始める。社会に蜘蛛の巣のように張り巡らされたミソジニーの陰惨さを叩きつける作品となっていた。

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※映画.comより画像引用

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