『仁義の墓場』銃、風船、ナイフ

仁義の墓場(1975)

監督:深作欣二
出演:渡哲也、梅宮辰夫、郷えい治(郷鍈治)、山城新伍、高月忠、ハナ肇、室田日出男、曽根晴美、前川哲夫、土山登士幸etc

評価:80点


おはようございます、チェ・ブンブンです。

2022年映画ベスト配信で寺本郁夫さんが『仁義の墓場』を選出されていたU-NEXTにて配信されているということで観てみた。

『仁義の墓場』あらすじ

昭和二十一年。新宿には、テキ屋系の四つの組織が縄張りを分けあっていた。石川力夫の所属する河田組は、経営の才にたけた河田修造を組長に、組員三百名を数え、野津組に次ぐ勢力を誇っていた。兄弟分の今井幸三郎、杉浦、田村らを伴った石川は、中野の愚連隊“山東会”の賭場を襲い金を奪った。山東会の追手から逃がれ、忍び込んだ家で、石川は留守番をしていた娘、地恵子を衝動的に犯した。この事件をきっかけに、山東会と石川たちの抗争が起こり、石川らが山東会を壊滅させ、同時期に今井組が誕生した。

映画.comより引用

銃、風船、ナイフ

深作欣二のヤクザ映画はカメラワークが独特なことで有名だが、本作のカメラワークは他の映画ではなかなか観られないものが群れをなして眼前に飛び込んでくるので面白い。セピア調からカラーになる時の、文献資料から石川力夫(渡哲也)目線の現実に切り替わる瞬間の没入観。狭い部屋から雪崩れ込むように、乱闘が繰り広げられる際の回転するカメラワークの躍動感に圧倒される。ただただ荒々しくカメラを動かすだけではない。静寂にも美学がある。例えば、組同士が丘の上と下に集まり一触即発の事態になる。そこへ米軍が現れ、「帰れ、逮捕するぞ」と叫ぶと、渋々帰っていく。爆発寸前な状態からの収拾。爆発させるだけがヤクザ映画ではないことを物語る。もちろん、唐突にナイフで斬りつけたり、車を爆発したりするので景気が良い映画だったりする。

群れアクションで言えば、終盤田中邦衛演じるヤク中と石川力夫が籠城する場面。警察と組の者が段々共闘し始め、一斉に石を投げつける中、明らかに弾数が足りない拳銃を撃ち続ける。この躍動感は圧巻である。また、墓場の場面で風船が不自然に浮かんでいる。これが急襲の際に思わぬ挙動をするのだ。

このように最後まで視覚的面白さに満ち溢れたショットで覆われた本作は確かに年間ベストに入れるのも納得の作品であった。

※Amazonより画像引用

created by Rinker
東映ビデオ