【レオス・カラックス特集】『ポンヌフの恋人』拾われた男は女を隠す

ポンヌフの恋人(1991)
Les amants du Pont-Neuf

監督:レオス・カラックス
出演:ジュリエット・ビノシュ、ドニ・ラヴァン、クラウス=ミヒャエル・グリューバー、マリオン・スタレンス、クリスチャン・ラーション、Paulette Berthonnier、Roger Berthonnier、エディット・スコブ、ダニエル・ビュアン、ジョルジュ・アペルギスetc

評価:75点


おはようございます、チェ・ブンブンです。

アネット』を観賞し、『ポンヌフの恋人』を観返したくなった。ドニ・ラヴァン主演の『ボーイ・ミーツ・ガール』、『汚れた血』も男が女を聖女として扱い、自己をぶつける存在として描いていた。『ポンヌフの恋人』もそうなのではないかと思ってみたらドンピシャでした。ということで書いていく。

『ポンヌフの恋人』あらすじ

フランスの鬼才レオス・カラックス監督が、「ボーイ・ミーツ・ガール」「汚れた血」に続く“アレックス3部作”完結編として1991年に手がけた名作ラブストーリー。パリのポンヌフ橋で暮らす天涯孤独な大道芸人アレックスは、失明の危機と失恋による心の傷に絶望する女子画学生ミシェルと出会う。2人は恋に落ちるが、ミシェルには両親から捜索願いが出されていた。日本初公開は92年。2011年にニュープリント版/HDリマスター版でリバイバル。

映画.comより引用

拾われた男は女を隠す

夜のパリ、静かな通り。男がトボトボ歩く。今にも崩れ落ちてしまいそうな歩みで。やがて彼は力尽き道路に突っ伏す。そこへ車が通過し、足を轢き去っていく。女は彼を見る。そして、拾って救う。ヒヨコは、最初に見た存在を親と見做すように、彼は彼女に惹きこまれていく。彼の住処である、工事中の橋の真ん中は、よく分からない男が選挙している。でも、少し失われた聖域の中で男は生きようとする。そこに、あの女が現れたことでエロスが刺激されていくのだ。彼女には秘密があり、盲目になりゆく運命にあった。彼は彼女の左目の覆いを外し、秘密を知る。破壊的な彼女と、夜の街で、銃をぶっ放し、花火で彩られた世界の中で自分たちの聖域を育んでいく。しかし、社会が彼女を探し始め、その声が大きくなると、彼は彼女を隠蔽しようとする。

予測不能な動きをするドニ・ラヴァンが火を吹き、魚を正面から盗み、地下道を駆け抜けていく。このアクションを的確に、画に収め続けるレオス・カラックスの非凡さに圧倒される一方で、話をよくよく振り返ると、孤独な男がその孤独を癒すために女を所有しようとする話となっており、そこには暴力が伴っている。ラストも、『ボーイ・ミーツ・ガール』や『汚れた血』を踏まえると、死のアクションとなっており、『アタラント号』をあからさまに引用したハッピーエンドはひょっとして、現実ではない世界の話であるのではと考えることができる。

これを踏まえると、『アネット』は批判的に自分の作品を捉えているんだと確信に変わった。

尚、本作は横移動に拘ってきたレオス・カラックスが前進のアクションの可能性を見出した転換期である。ジェットスキーの躍動感溢れるアクションが、後の『ホーリー・モーターズ』における聖堂の行進や『アネット』の冒頭へと受け継がれていることが分かる。

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※映画.comより画像引用