【NETFLIX】『プロセッション -救済への行進-』トラウマを映画に翻訳する

プロセッション -救済への行進-(2021)
Procession

監督:ロバート・グリーン

評価:40点

おはようございます、チェ・ブンブンです。

第94回アカデミー賞ショートリストが発表されました。アカデミー賞映画には最近興味を失いかけているのですが、国際長編映画賞と長編ドキュメンタリー賞への関心はまだ高い。今回NETFLIX枠としてショートリスト入りを果たした『プロセッション -救済への行進-』を観ました。『スポットライト 世紀のスクープ』、『ザ・クラブ』、『グレース・オブ・ゴッド 告発の時』と2010年代後半からカトリック教会内部で発生していた性的虐待を告発する映画が作られてきているが今回はドキュメンタリー。70年代に神父から性的虐待を受けてトラウマとなってしまった者が映画制作を通じて向き合う作品である。

『プロセッション -救済への行進-』あらすじ

子供の頃にカトリック教会の聖職者から性的虐待を受けた6人の男性。自分たちのトラウマ体験に基づいた映画制作を通して、支え合いながら前に進む力を得てゆく。

※NETFLIXより引用

トラウマを映画に翻訳する

70年代に性的虐待を受けた者は未だに孤独に闘っている。一人プラカード掲げていたりする。しかし時が経ちすぎて、虐待の現場となった場所が取り壊され過去と向き合うことも難しくなってきた。本作では、長年トラウマに苦しめられてきた者が映画制作を通じてそのトラウマを客観的に見ることに着目している。冒頭、少年が教会の上を歩いていると親父から緑色の光線が注がれ、群衆が一斉に振り返り不気味さを強調する。映画的演出であるが、これこそが当事者があの時感じたゾッとする感覚だろう。映画の雰囲気は『アクト・オブ・キリング』と似ているが、決定的に違うのは当事者は苦しみながら映画を作っている点であろう。嬉々として虐殺を再現した者とは立場が違う。被害者がトラウマを映画という媒体に翻訳し、心の重荷を降ろす活動に着目しているのだ。

しかしながら映画を観ていると編集が不自然なことに気付いていく。確かに作られる映画自体は本質ではないのでそこまで映す必要はないのかもしれないが、それにしても断片的である。また、性的虐待の現場を子どもに演じさせているところにハラハラさせられる。婉曲的に、気持ち悪く少年に言いよる。これはいくら演技とはいえ、危険な気がする。そして、「カット!」という場面が暴力的強さで放たれる。

画面に映っていない場所で二次被害が起きているのではないかという不安が払拭できぬまま映画は終わってしまう。試みとしては興味深いものの、果たしてこれが当事者を救う活動として適切なのか?映画の中で性的虐待を受ける少年のケアはどうなのか?疑惑が付き纏う作品でありました。ひょっとすると今回のアカデミー賞NETFLIXドキュメンタリーは入らないのかもしれませんね。

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