【恵比寿映像祭】『ありふれた話』介護の空間から宇宙へ

ありふれた話(2009)
原題:Jao nok krajok
英題:Mundane History

監督:アノーチャ・スウィチャーゴーンポン
出演:Arkaney Cherkam,Paramej Noiam,Anchana Ponpitakthepkij,Phakpoom Surapongsanuruk etc

評価:65点

おはようございます、チェ・ブンブンです。

第14回恵比寿映像祭にタイの鬼才アノーチャ・スウィチャーゴーンポン過去作が2本上映される。ずっと探していた『ありふれた話』が観られるということで東京都写真美術館に行ってきました。

『ありふれた話』あらすじ

メー・アーダードン・インカワニットとジュリアン・ロスをゲスト・プログラマーに迎えた「アニミスティック・アパラタス」の文脈のなかで、世界各国で高い評価を集め注目されるタイの女性監督、アノーチャ・スウィチャーゴーンポンによる福岡市総合図書館所蔵の2作品を上映。青年エークは事故によって下半身付随となり、彼の介護で現れた、看護師のパンと知り合う。時系列の異なる一連の場面を通じて、2人の男性のありふれた日常はやがて宇宙的神秘へ向かう。監督初長編作品。

※第14回恵比寿映像祭より引用

介護の空間から宇宙へ

タイアート映画はアピチャッポン・ウィーラセタクンやプッティポン・アルンペンをはじめとし時空を扱う作家が多い気がする。アノーチャ・スウィチャーゴーンポンもその一人で以前観た『暗くなるまでには』が学生運動の時代と今を結びつける作品であった。長編デビュー作『ありふれた話』も時空が関連する話であった。自然のざわめきの中、介護する者と介護される者の淡々とした生活を時系列を解体しながら描く。プラネタリウムで宇宙の誕生について見る場面があるのだが、先にプラネタリウムの映像を挿入し、その後で二人がプラネタリウムに行く道中が描かれたりする。がらんとした部屋を映し、デモの記憶がナレーションで語られ、捉え所のないまま、画面は幾重にも層を連ねていき、ミニマムな生活から壮大な宇宙の物語に発展し、赤子の誕生に繋がっていく。

正直、タイの政治的背景に疎いのでよくわからないところが多く、少しウトウトしてしまったのだが、恵比寿映像祭らしく体験の映画であった。個人的に、少し寝てしまい起きたらエンドロールが流れていて焦ったのだが、それは映画の演出で途中にエンドロールが挿入されていただけだと知って安心したのが思い出になりました。

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※MUBIより画像引用