Air Conditioner(2020)
監督:FRADIQUE
出演:JOSÉ KITECULO,FILOMENA MANUEL,DAVID CARACOL etc
評価:55点
おはようございます、チェ・ブンブンです。
MUBIに珍しいアンゴラ映画が来ました。アンゴラといえば、2017年に世界遺産登録されたンバンザ=コンゴ、コンゴ王国の首都の痕跡ぐらいしたイメージがない。アンゴラウサギとアンゴラ共和国とは関係ないので、中部アフリカの一国レベルの知識しかない。そんなアンゴラ事情に疎い私ですが、貴重な機会なので人生初アンゴラ映画に挑戦して観ました。
『Air Conditioner』あらすじ
One day, air conditioners in the Angolan capital Luanda start to mysteriously fall from the buildings. When security guard Matacedo is told to get his overheating boss an airco unit by end of day, he embarks on a mission that brings him into contact with the eccentric owner of an electronics store.
訳:アンゴラの首都ルアンダでは、ある日突然、ビルからエアコンが落ちてくるという事件が起きた。オーバーヒート気味の上司に今日中にエアコンを買ってくるように言われた警備員のマタレードは、電気店の風変わりな店主と接触しながら任務を遂行することになる。
アンゴラ、上から来るぞ(エアコンが)気をつけろ!
アンゴラの首都ルアンダでエアコンがビルから落下する怪事件が頻発している。警備員であるMatacedo(JOSÉ KITECULO)は、その謎を解き明かしに混沌とした住宅街という名のジャングルへと入っていく。非常に狭く禍々しいオーラが漂うここには多くの生活がある。SCREENDAILYの記事”The story behind Angola’s Rotterdam Bright Future title ‘Air Conditioner’”によると、FRADIQUE監督は水道や電気に問題のあるアンゴラの昔ながらの家に住む人の生活に関心があり、最初は短編映画として制作を進めていたのだが、長編映画になりゆる素材が集まった為、途中で方向転換したとのこと。
エアコンが定期的に落下する、突然壊れるといった描写は、家電が突然使えなくなるアンゴラの不安定な生活を象徴しているのは明白だ。そしてその唐突な不自由さを中心に人々の生活をユーモラスに紐解く。
電気屋さんは、ガラクタを集めて自分の世界のようなものを構築している。中にはテレパシーで会話する。後者に関しては、アンゴラ社会の識字率の低さを逆手にとった演出に見える。2014年の時点で若者の識字率は72.9%、老人の識字率は41.6%とのこと(knoemaのデータ参照)。男同士がテレパシーで会話する。その内容は字幕に出る。だが、文字が読めない人は役者の表情を見て状況を把握しないといけない。この演出により、文字が読める者と読めない者の差異が強調される。かつてセネガルのセンベーヌ・ウスマンが文学ではセネガル人に社会の問題を提起することができないと視覚メディアである映画製作に力を入れるようになった。本作では、こうして視覚効果によってアンゴラ社会の日常を強調して切り取ることに成功している例と言える。
元々、短編の予定で制作された作品だけに一発芸的要素が強く、映画として観た時に行き当たりばったりなイメージはありますが、アンゴラ社会の市井を独特なアプローチで彫刻のように捉えた意欲作といえよう。
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※MUBIより画像引用