『我が至上の愛 〜アストレとセラドン〜』ニンフにモテるもうひとりのオデュッセウス

我が至上の愛 〜アストレとセラドン〜(2006)
Les Amours d’Astrée et de Céladon

監督:エリック・ロメール
出演:アンディ・ジレ、ステファニー・クレイヤンクール、セシル・カッセル、ジョスラン・キヴランetc

評価:70

おはようございます、チェ・ブンブンです。

日仏学院にて、エリック・ロメール最期の作品『我が至上の愛 アストレとセラドン』を借りた。本作は17世紀にオノレ・デュルフェによって書かれた大河ロマン「アストレ」の中の一篇《アストレとセラドンの恋》を映画化した作品である。

『我が至上の愛 〜アストレとセラドン〜』あらすじ

17世紀にパリの貴婦人たちの間で流行した小説「アストレ」を、ヌーベル・バーグの巨匠エリック・ロメールが映画化。5世紀のローマ時代、羊飼いのアストレと青年セラドンは純粋に愛を育んでいたが、お互いの両親の不仲に悩んでいた。村の祭りの日、2人は両親の目を逸らすため別の相手と踊っていたのだが、アストレはセラドンが本気で他の女性に惹かれてしまったと思い込み……。

映画.comより引用

ニンフにモテるもうひとりのオデュッセウス

5世紀ローマ時代に純愛を育んでいた羊飼いのアストレと青年セラドン。セラドンが浮気しているのではと思い込んだアストレは彼を避けるようになってしまう。アストレに会えないのであれば死んでしまおうと川に身投げをするも、ニンフ(妖精)に救われる。ニンフたちはすっかりセラドンのことを気にいり軟禁しはじめる。

明らかにホメロス「オデュッセイア」を5世紀ローマ時代に置き換えたような内容である。神の怒りを受けたオデュッセウスは流浪の旅の中でニンフに捕まり長い時間が経過するが、故郷そしてペネロペへの想いが彼を帰郷へと突き動かす。

本作は一見すると「オデュッセイア」的物語かつ高尚なコスチュームプレイで堅い物語に思えるが、アストレ一筋に思わせておいて他の女に現を抜かし勘違いさせまくる男の醜態を滑稽に描いた通俗な物語として面白く観ることができる。

身投げしようにも死ぬことができず、ニンフたちにモテまくる。そこから脱出するもすぐにはアストレに会おうとせずに森でウジウジとしている。そして、森でアストレを見つけようものなら眠る彼女に接吻しようとする。だが、彼女が目を覚ました途端、気まずくなって逃げる。ことごとく都合が良い男である。都合が良い人は、そう簡単に破滅することはない。都合の悪さからひたすら逃げていくのだ。

エリック・ロメールが得意とするバカンスのような開放的ロケーションの中ですれ違いの束縛が延々と繰り返される。最期までエリック・ロメールらしさを貫いた一本といえよう。